侍と忍者の記憶を持ったまま転生した俺は、居合と忍法を組み合わせた全く新しいスキル『居合忍法』で無双し異世界で成り上がる!

空地大乃

文字の大きさ
上 下
64 / 125
第二章 サムジャともふもふ編

第63話 サムジャと宿と客

しおりを挟む
 昨日の夜は色々あったな。通り魔のジャックをパピィと協力して倒し、かと思えば大神官にセイラを連れ戻されたりした。

「ワンワン!」
「おう、パピィおはよう。昨日は大活躍だったな」
「アンッ! クゥ~ンクゥ~ン」

 パピィが駆け寄ってきたので頭を撫でてやったら、甘えたような声を出して俺に飛びついてきて顔を舐めてきた。

 昨日は勇ましかったのに、やっぱりまだまだ甘えん坊さんなようだ。

 さてと、今日はどうしようか。そうだな。

「先ずは朝飯を食べるか」
「ワンッ!」

 パピィを連れて食堂に向かった。すると宿の主人が俺達を見て慌てた様子で声を掛けてくる。

「シノ! 大変だ。あの通り魔が見つかって冒険者の手で倒されたらしいぜ!」

 何事かと思ったら、そのことか。しかし、昨日の今日でもう話が広まっているのか。随分と早いな。

 ふむ、俺の頭にオルサの得意になってる顔が思い浮かんだ。もしかしたらなにか手を打ったのかも知れない。

 何せジャックについては領主(というより代理なようだが)から依頼を引き上げると言われていたようだ。

 だから、妙な因縁をつけられないよう町に噂を広げて既成事実として事件が解決したことを認識させようと思ったのかもな。

 こういう情報操作はよくあることだ。勿論いい意味でも悪い意味でも。今回はいい意味にあたると思うけどな。

「それにしても、早いもんだなパピィ」
「ワン」

 俺がパピィに声を掛けると、同意するような鳴き声を上げた。

「いや、てか、思ったより反応が薄いな」
「うん?」

 俺たちの様子に、主人が頭を擦りながら意外そうな顔を見せていた。

「いや、パピィにとっても仇の相手だし、もっと驚くかと思ってたんだが」
「あぁ。そういうことか」

 今の情報だと俺達が関わっていることまではわからないだろう。

 ふむ、どうしようかと思ったが、主人はパピィのことも気にしていたしな。

「その通り魔を倒したのはパピィなんだ」
「え! そうなのか!」
「あぁ。俺も協力したが最後に見事討ち取ったのはパピィだよ」
「ワンッ!」

 パピィが元気に吠えて得意満面になった。それを主人が、ふぇ~と目を丸くさせる。

「驚いたな。まだ子犬だってのに」

 パピィをじっと見ながら主人が感心したように言った。

「パピィは天職も得たからな。見た目は子犬だが大人顔負けの強さだ」
「いや、本当恐れ入ったよ。でも、そうか。仇が討てたんだな。良かったなぁパピィ」

 話を聞き終え、ぐすっと主人が鼻をすすった。やっぱりこの主人は人がいい。

「ただ、俺達が解決したことは正式に情報が出るまでは内密ってことでいいかな?」
「あぁ、そういうことなら勿論。こうみえて俺は口が硬いんだぜ」

 自分の胸をドンッと叩いて誓ってくれた。まぁ知られてもそこまで大事にはならないと思うんだけどな。

「よし、今日のパピィの朝飯は特製のにしてやるぜ! 待ってろよ!」
「ワンワン!」

 主人が張り切るのを見てパピィも嬉しそうだ。そして俺はテーブルに座りパピィは足元で大人しく座って朝食を待った。

 すると食堂にもう一人の客。勿論、別に俺たちが貸し切りしているわけではないのだから他に客がいてもおかしくないのだが、その客は少し妙な風貌だった。顔に仮面をつけていたからだ。

 それは角が生えた仮面だった。しかも何か鬼気迫る形相を模した仮面だった。
 
 仮面の後ろでは黒くて長い髪を纏めている。背中にはマント、動きやすそうな軽鎧を着ていて腰には細身の剣。

 見た感じ、同業者っぽいな。違ったとしても戦いに身を置くものなのは確かだろう。

 そして暫くして朝食が運ばれてきた。パピィに用意されたのは確かにいつもより豪勢な朝食だった。肉も一杯乗っている。パピィは美味しそうにガツガツ食べた。

 その姿を、仮面の客が見ていた。仮面のおかげでどんな顔かはわからないが、パピィに興味があるのだろうか?
 
 俺もテーブルの上に置かれた食事に手を付けることにした。

 あの客のにも料理は運ばれていた。

「おまちどうさま。スープは熱いから気をつけてな」

 内容は俺と変わらない。パンにスープにオムレツだ。スープは確かにアツアツだ。俺はいつも食べてるから主人も敢えては言ってこないけどな。

 そして客はパンを手に取り口元に持っていた。なんとなく見てしまった俺がいる。

 コツンっとパンが仮面に当たった。
 更に数回コツンコツンっとパンが仮面に当たった。

「……仮面を外さないと食べられなくないか?」

 俺がそう指摘すると、どことなく、ハッ、としたような動きを見せて客が仮面の顔をこっちに向けてきた。

「そ、それぐらいわかっている! 馬鹿にするな!」

 女の声だった。細身に思えたが、どうやら仮面の下は女性のようだ。

 そして彼女は仮面を少しだけ持ち上げてパンをもぐもぐと食べていた。仮面を完全に外すつもりはないようだ。

「それ、変わった仮面だな」

 つい気になって声を掛けてしまう。彼女の動きがピタリと止まった。

「これは般若の面だ」

 彼女がそう答える。般若の面というのか。初めて知ったが声は随分と可愛らしいからギャップが凄いな。

 そして彼女がスープを口元に持っていった。般若の面とやらをつけながらだ。

「熱いぃいぃいい!」
「ちょ、あんた大丈夫かい! だから熱いといったのに! てか何で仮面を外さないんだいあんた!」

 うん。仮面をつけたままスープを傾けたらそりゃそうなるよな。何だか変わった客だなぁ――
しおりを挟む
『砂魔法の建国者~砂属性なんて使えないと砂漠に追放されたから砂の城でのんびりスローライフ満喫してた筈なのにいつの間にか巨大国家に成長してた!~』という新作をはじめました。こちらも興味が湧きましたら宜しくお願い致しますm(__)m
感想 34

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...