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第二章 サムジャともふもふ編
第63話 サムジャと宿と客
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昨日の夜は色々あったな。通り魔のジャックをパピィと協力して倒し、かと思えば大神官にセイラを連れ戻されたりした。
「ワンワン!」
「おう、パピィおはよう。昨日は大活躍だったな」
「アンッ! クゥ~ンクゥ~ン」
パピィが駆け寄ってきたので頭を撫でてやったら、甘えたような声を出して俺に飛びついてきて顔を舐めてきた。
昨日は勇ましかったのに、やっぱりまだまだ甘えん坊さんなようだ。
さてと、今日はどうしようか。そうだな。
「先ずは朝飯を食べるか」
「ワンッ!」
パピィを連れて食堂に向かった。すると宿の主人が俺達を見て慌てた様子で声を掛けてくる。
「シノ! 大変だ。あの通り魔が見つかって冒険者の手で倒されたらしいぜ!」
何事かと思ったら、そのことか。しかし、昨日の今日でもう話が広まっているのか。随分と早いな。
ふむ、俺の頭にオルサの得意になってる顔が思い浮かんだ。もしかしたらなにか手を打ったのかも知れない。
何せジャックについては領主(というより代理なようだが)から依頼を引き上げると言われていたようだ。
だから、妙な因縁をつけられないよう町に噂を広げて既成事実として事件が解決したことを認識させようと思ったのかもな。
こういう情報操作はよくあることだ。勿論いい意味でも悪い意味でも。今回はいい意味にあたると思うけどな。
「それにしても、早いもんだなパピィ」
「ワン」
俺がパピィに声を掛けると、同意するような鳴き声を上げた。
「いや、てか、思ったより反応が薄いな」
「うん?」
俺たちの様子に、主人が頭を擦りながら意外そうな顔を見せていた。
「いや、パピィにとっても仇の相手だし、もっと驚くかと思ってたんだが」
「あぁ。そういうことか」
今の情報だと俺達が関わっていることまではわからないだろう。
ふむ、どうしようかと思ったが、主人はパピィのことも気にしていたしな。
「その通り魔を倒したのはパピィなんだ」
「え! そうなのか!」
「あぁ。俺も協力したが最後に見事討ち取ったのはパピィだよ」
「ワンッ!」
パピィが元気に吠えて得意満面になった。それを主人が、ふぇ~と目を丸くさせる。
「驚いたな。まだ子犬だってのに」
パピィをじっと見ながら主人が感心したように言った。
「パピィは天職も得たからな。見た目は子犬だが大人顔負けの強さだ」
「いや、本当恐れ入ったよ。でも、そうか。仇が討てたんだな。良かったなぁパピィ」
話を聞き終え、ぐすっと主人が鼻をすすった。やっぱりこの主人は人がいい。
「ただ、俺達が解決したことは正式に情報が出るまでは内密ってことでいいかな?」
「あぁ、そういうことなら勿論。こうみえて俺は口が硬いんだぜ」
自分の胸をドンッと叩いて誓ってくれた。まぁ知られてもそこまで大事にはならないと思うんだけどな。
「よし、今日のパピィの朝飯は特製のにしてやるぜ! 待ってろよ!」
「ワンワン!」
主人が張り切るのを見てパピィも嬉しそうだ。そして俺はテーブルに座りパピィは足元で大人しく座って朝食を待った。
すると食堂にもう一人の客。勿論、別に俺たちが貸し切りしているわけではないのだから他に客がいてもおかしくないのだが、その客は少し妙な風貌だった。顔に仮面をつけていたからだ。
それは角が生えた仮面だった。しかも何か鬼気迫る形相を模した仮面だった。
仮面の後ろでは黒くて長い髪を纏めている。背中にはマント、動きやすそうな軽鎧を着ていて腰には細身の剣。
見た感じ、同業者っぽいな。違ったとしても戦いに身を置くものなのは確かだろう。
そして暫くして朝食が運ばれてきた。パピィに用意されたのは確かにいつもより豪勢な朝食だった。肉も一杯乗っている。パピィは美味しそうにガツガツ食べた。
その姿を、仮面の客が見ていた。仮面のおかげでどんな顔かはわからないが、パピィに興味があるのだろうか?
俺もテーブルの上に置かれた食事に手を付けることにした。
あの客のにも料理は運ばれていた。
「おまちどうさま。スープは熱いから気をつけてな」
内容は俺と変わらない。パンにスープにオムレツだ。スープは確かにアツアツだ。俺はいつも食べてるから主人も敢えては言ってこないけどな。
そして客はパンを手に取り口元に持っていた。なんとなく見てしまった俺がいる。
コツンっとパンが仮面に当たった。
更に数回コツンコツンっとパンが仮面に当たった。
「……仮面を外さないと食べられなくないか?」
俺がそう指摘すると、どことなく、ハッ、としたような動きを見せて客が仮面の顔をこっちに向けてきた。
「そ、それぐらいわかっている! 馬鹿にするな!」
女の声だった。細身に思えたが、どうやら仮面の下は女性のようだ。
そして彼女は仮面を少しだけ持ち上げてパンをもぐもぐと食べていた。仮面を完全に外すつもりはないようだ。
「それ、変わった仮面だな」
つい気になって声を掛けてしまう。彼女の動きがピタリと止まった。
「これは般若の面だ」
彼女がそう答える。般若の面というのか。初めて知ったが声は随分と可愛らしいからギャップが凄いな。
そして彼女がスープを口元に持っていった。般若の面とやらをつけながらだ。
「熱いぃいぃいい!」
「ちょ、あんた大丈夫かい! だから熱いといったのに! てか何で仮面を外さないんだいあんた!」
うん。仮面をつけたままスープを傾けたらそりゃそうなるよな。何だか変わった客だなぁ――
「ワンワン!」
「おう、パピィおはよう。昨日は大活躍だったな」
「アンッ! クゥ~ンクゥ~ン」
パピィが駆け寄ってきたので頭を撫でてやったら、甘えたような声を出して俺に飛びついてきて顔を舐めてきた。
昨日は勇ましかったのに、やっぱりまだまだ甘えん坊さんなようだ。
さてと、今日はどうしようか。そうだな。
「先ずは朝飯を食べるか」
「ワンッ!」
パピィを連れて食堂に向かった。すると宿の主人が俺達を見て慌てた様子で声を掛けてくる。
「シノ! 大変だ。あの通り魔が見つかって冒険者の手で倒されたらしいぜ!」
何事かと思ったら、そのことか。しかし、昨日の今日でもう話が広まっているのか。随分と早いな。
ふむ、俺の頭にオルサの得意になってる顔が思い浮かんだ。もしかしたらなにか手を打ったのかも知れない。
何せジャックについては領主(というより代理なようだが)から依頼を引き上げると言われていたようだ。
だから、妙な因縁をつけられないよう町に噂を広げて既成事実として事件が解決したことを認識させようと思ったのかもな。
こういう情報操作はよくあることだ。勿論いい意味でも悪い意味でも。今回はいい意味にあたると思うけどな。
「それにしても、早いもんだなパピィ」
「ワン」
俺がパピィに声を掛けると、同意するような鳴き声を上げた。
「いや、てか、思ったより反応が薄いな」
「うん?」
俺たちの様子に、主人が頭を擦りながら意外そうな顔を見せていた。
「いや、パピィにとっても仇の相手だし、もっと驚くかと思ってたんだが」
「あぁ。そういうことか」
今の情報だと俺達が関わっていることまではわからないだろう。
ふむ、どうしようかと思ったが、主人はパピィのことも気にしていたしな。
「その通り魔を倒したのはパピィなんだ」
「え! そうなのか!」
「あぁ。俺も協力したが最後に見事討ち取ったのはパピィだよ」
「ワンッ!」
パピィが元気に吠えて得意満面になった。それを主人が、ふぇ~と目を丸くさせる。
「驚いたな。まだ子犬だってのに」
パピィをじっと見ながら主人が感心したように言った。
「パピィは天職も得たからな。見た目は子犬だが大人顔負けの強さだ」
「いや、本当恐れ入ったよ。でも、そうか。仇が討てたんだな。良かったなぁパピィ」
話を聞き終え、ぐすっと主人が鼻をすすった。やっぱりこの主人は人がいい。
「ただ、俺達が解決したことは正式に情報が出るまでは内密ってことでいいかな?」
「あぁ、そういうことなら勿論。こうみえて俺は口が硬いんだぜ」
自分の胸をドンッと叩いて誓ってくれた。まぁ知られてもそこまで大事にはならないと思うんだけどな。
「よし、今日のパピィの朝飯は特製のにしてやるぜ! 待ってろよ!」
「ワンワン!」
主人が張り切るのを見てパピィも嬉しそうだ。そして俺はテーブルに座りパピィは足元で大人しく座って朝食を待った。
すると食堂にもう一人の客。勿論、別に俺たちが貸し切りしているわけではないのだから他に客がいてもおかしくないのだが、その客は少し妙な風貌だった。顔に仮面をつけていたからだ。
それは角が生えた仮面だった。しかも何か鬼気迫る形相を模した仮面だった。
仮面の後ろでは黒くて長い髪を纏めている。背中にはマント、動きやすそうな軽鎧を着ていて腰には細身の剣。
見た感じ、同業者っぽいな。違ったとしても戦いに身を置くものなのは確かだろう。
そして暫くして朝食が運ばれてきた。パピィに用意されたのは確かにいつもより豪勢な朝食だった。肉も一杯乗っている。パピィは美味しそうにガツガツ食べた。
その姿を、仮面の客が見ていた。仮面のおかげでどんな顔かはわからないが、パピィに興味があるのだろうか?
俺もテーブルの上に置かれた食事に手を付けることにした。
あの客のにも料理は運ばれていた。
「おまちどうさま。スープは熱いから気をつけてな」
内容は俺と変わらない。パンにスープにオムレツだ。スープは確かにアツアツだ。俺はいつも食べてるから主人も敢えては言ってこないけどな。
そして客はパンを手に取り口元に持っていた。なんとなく見てしまった俺がいる。
コツンっとパンが仮面に当たった。
更に数回コツンコツンっとパンが仮面に当たった。
「……仮面を外さないと食べられなくないか?」
俺がそう指摘すると、どことなく、ハッ、としたような動きを見せて客が仮面の顔をこっちに向けてきた。
「そ、それぐらいわかっている! 馬鹿にするな!」
女の声だった。細身に思えたが、どうやら仮面の下は女性のようだ。
そして彼女は仮面を少しだけ持ち上げてパンをもぐもぐと食べていた。仮面を完全に外すつもりはないようだ。
「それ、変わった仮面だな」
つい気になって声を掛けてしまう。彼女の動きがピタリと止まった。
「これは般若の面だ」
彼女がそう答える。般若の面というのか。初めて知ったが声は随分と可愛らしいからギャップが凄いな。
そして彼女がスープを口元に持っていった。般若の面とやらをつけながらだ。
「熱いぃいぃいい!」
「ちょ、あんた大丈夫かい! だから熱いといったのに! てか何で仮面を外さないんだいあんた!」
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『砂魔法の建国者~砂属性なんて使えないと砂漠に追放されたから砂の城でのんびりスローライフ満喫してた筈なのにいつの間にか巨大国家に成長してた!~』という新作をはじめました。こちらも興味が湧きましたら宜しくお願い致しますm(__)m
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