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第二章 サムジャともふもふ編

第44話 サムジャ、皆と約束

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「やっぱり教会は高いのか?」
「高い高い。ちょっとした怪我でもとんでもない金額要求されるって話だもの」
「私達じゃ手が出ないわね」
「ふむ……」

 俺はパピィの命が掛かっていたことだから百万ゴッズも惜しくなかったが、やはり相当な寄付金を要求されるようだな。

「シノはこの子を助けるのにどれぐらい支払ったの?」
「百万ゴッズだな」
「「「「「百万ゴッズーーーーーー!?」」」」」

 周囲にいた皆に随分と驚かれてしまった。

「信じられない。確かに最近の教会は要求される寄付が高い高いとは聞いていたけどそこまでだなんて」
「それをすっと支払える兄貴はやっぱすげーぜ!」
「いやいや、そもそもそんな大金どうしてあっさり支払っちゃったのよ!」

 タンは俺を凄いと言ってくれたが、ルンは険しい顔を見せていた。

「パピィを助けてもらったしな。教会の力がなければ危なかった」
「それは勿論わかるけど、でも高すぎよ」
「クゥ~ン……」

 ルンが一人憤っているとパピィがしょげた顔を見せた。申し訳なく思ったのかもしれない。

「ちょ、違うのよ! パピィは悪くないしむしろ助かってくれてありがとうで、だから、悪いのは教会よ!」
「またぶっちゃけるわねルンも」

 ビシッと何故かシエロに指を突きつけて宣言するルンに、シエロが苦笑した。

「まぁでも気持ちはわからなくはないわ。正直怪我の多いギルドにとって見れば教会は本来重要よ。治療を受ける面でね。だけど以前の司祭から今の大神官に変わってからは寄付金が上がってかなりの稼ぎ頭でないと支払えないのよ」

 シエロが肩を竦め続けた。

「教会で治療を受けられないと結果的に皆、依頼に対して及び腰になるのよね……依頼が失敗に終わることも増えてきたし参っちゃうわ」

 う~ん、なるほど。怪我をしても教会があれば何とかしてくれると思えるうちはまだ無理がきくが、そうでなければどうしても慎重にならざるを得ないからな。

「本当教会なんとかならないかしらね。大体その百万ゴッズも支払い過ぎだし本来なら取り返しても良い金額よ! ねぇパピィ」
「アンッ!」

 パピィが元気よく吠えた。しかしもう支払ったものは仕方ない。今更返せともいえないしな。

 それに今は教会よりも通り魔事件の方だしな。

「兄貴、俺達に何か手伝えることがあったら何でも言ってくれよな!」
「あぁ、わかった。その時は頼むよ」

 そしてファイト団とも一旦わかれた。

「ところでシノ。その事件も大事だけど、明日はどうしようか?」

 あぁ、そうか。ルンとも正式にパーティーを組むことになったしな。

「今後はルンの為にも、もっと頑張らないとな」
「え? わ、私のために?」
「あぁ、一緒になるんだから勿論それだけ稼がないといけないし」
「い、一緒に!」
「ちょっと。どう聞いてもパーティーのことじゃない。何を勘違いしているの?」
「わ、わかってるわよ!」

 うん? 目を細めたシエロにぷんぷんとルンが言い返してるな。勘違いって何がだ?

「それにルン、明日はバザーを見に行くって言ってなかった?」
「あ、そうだった!」
「うん? バザー?」
「この街で年に数回やってる大規模な商いの催事よ。中央広場で行うの」
「掘り出し物がみつかることがあるのよ!」

 ルンが張り切って言った。なるほど。

「そ、そうだ。シノもどう? 事件のことはわかるけど明日の昼なら息抜きの意味も込めて、とか?」

 ルンが上目遣いに聞いてきた。バザーか……稼ぎもあるし、孤児院へ仕送りする分は残しておく必要あるけど、見て回るのは楽しいかもな。

「わかった。明日はバザーにいくか」
「う、うん! そうね!」
「それ、私も行っていい?」

 俺がルンと約束を交わしたところで、シエロも話に乗ってきた。

「シエロは仕事じゃない」
「受付嬢にも休みぐらいあるわよ。明日丁度その休みだったしバザーにも興味があったし」
「そうか。なら皆で行くか?」
「アンッ!」

 うん。パピィも嬉しそうだしな。

「そ、そうね。皆でね」
「あら、何か不満?」
「べ、別にそんなことないわよ! そんなこと!」
「それなら良かった」

 というわけで俺の明日の予定は皆でバザーに行くこととなった。今日は結構な稼ぎになったし、たまにはそういうのを見て回ってもいいよな。

「ワンワン!」
「あぁ、何か面白いものがあればいいな」
「パピィは何か美味しいものがいいかもねぇ~パピィ」
「バザーには屋台も出店されているしね」
 
 そうか。それならパピィも嬉しいかもな。

 そして明日の予定が決まった後、待ち合わせ場所をシエロと決めて俺たちはギルドを出た。

 もういい時間でもあったのでこのまま宿に戻ろうと思ったのだが、ふと向こうからどこかで見たような顔ぶれが、いやそうだ。

「あれは、大神官だな」
「え? あれが、そうなのね」
「グルゥ――」

 俺がルンと話していると、向こうも気がついたようでこっちに近づいてきた。大神官の周りには別の神官の姿もある。

「これはこれは。その節はどうも。ふむ子犬も随分と元気になったようで何よりだ」

 大神官、確か名前はハデルと言ったな。にこやかな顔で俺とパピィを交互に見る。

「それにしても隣りにいるのは随分と可愛らしい子じゃないか。君の彼女かね?」
「え? か、彼女、そんな……」
「彼女は俺の冒険者仲間だ」

 何か勘違いしているようだからすぐに訂正させてもらった。ルンも迷惑だろうしな。

「……えぇ、そうね。私がただの仲間のルンよ」

 うん? 何だろう? 何か少し不機嫌になったような。

「ルン、冒険者でその見た目、あぁもしかしてギルド長の娘かな?」

 するとハデルが思い出したように尋ねた。それにルンが眉をひそめる。

「そうですが、それが何か?」

 随分と不機嫌になったな。そういえばギルド長の娘として見られるのがいやなんだったか。

「ふむ、やはりそうか。ならば少しは教会に協力頂けるよう説得してもらえないかね? ギルドとしても教会の魔法は大事であろう? 我々も本来ならもう少し治療費を安くしてあげたいのだが、中々良い返事がもらえなくてね」
「……一体何の協力かしりませんが、私と父は別ですので」

 そっけなくルンが返す。

「チッ、ギルド長の娘如きが生意気な」
「たかが冒険者は教会の言うとおりにしておけばいいのよ」
 
 ふむ、ハデルは何も言わないが、周囲の神官は不満そうだな……
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