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第二章 サムジャともふもふ編

第38話 サムジャ、パピィの成長を感じる

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 俺達は途中野宿を挟みながらも七層まで降りてきた。流石にここまでくると魔物の強さも上がってくる。トラップの数も多いがそれはパピィが見つけてくれた。

 そしてこれまでの戦闘でパピィのレベルも上がっていた。今のパピィのステータスだが。

ステータス
名前:パピィ
レベル:2
天職:忍犬
スキル
気配遮断、気配察知、周囲探知、五感強化、空蝉の術、天地落とし、旋風爪牙、影走り、影潜り、影操作

 こんな感じになっていた。新しく覚えた中で気になったのは影移動だった。影走りと何が違うかと思ったがどうやら影に潜ったままある程度移動が可能なスキルなようだ。影潜りは自分や相手の影の中に潜れるスキルで、自分の影に潜った場合は移動はままならないが、この影移動のおかげでそれも可能となったということだ。

 さて、ダンジョンの奥へと進む俺達だが、目の前に魔物が現れた。大型の狼と言った様相だな。

「グルルルゥウウ」
「ガルルルルウゥウウウ!」

 こちらを睨めつけ唸り声を上げているが、対抗意識からかパピィも負けじと唸り返していた。

「アンッ! アンッ!」
「わかった。任せるよ」
 
 すっかりやる気になってるようだからここはパピィにまかせてみた。

 すると相手の狼が飛びかかり前に出たパピィに爪を振った。体格差はかなりのものだ。爪もパピィぐらいの大きさなら軽々引き裂けそうだが、パピィは小柄な体を活かしたすばしっこい動きで爪を躱していく。

「ガル?」

 直後、狼がパピィを見失った。当のパピィは既に狼の背後に回っている。

「影で移動したのね」
「あぁ、新しいスキルの効果だな」

 自分の影に潜り、そこから移動して背後に回る。相手を撹乱するには有効だな。

「アォオォォオオオン!」
 
 そしてパピィが地面を蹴り回転しながら狼に突撃した。旋風爪牙だ。回転を加えることで爪と牙の威力も飛躍的に上昇する。

「ギャン!」

 狼が悲鳴を上げた。ダメージは大きい。しかし倒しきれていないな。相手の狼は反撃とばかりに密着するパピィをその鋭そうな牙で噛みつこうとした。いつでも介入できるよう柄に手は掛けてあるが、その必要はなかった。密着状態から相手より早くパピィが首に噛みつき、狼を持ち上げて跳躍し地面に叩きつけたからだ。これで狼は動かなくなった。

「旋風爪牙からの天地落としか。やるなパピィ」
「アンッ! クゥ~ンクゥ~ン」

 頭を撫でてやるとパピィがもっともっとと頭を擦り付けてきた。こういう甘えん坊なところは子犬らしいな。

「むむむ、パピィもやるわね。可愛らしくて強いなんて――最高ね!」
「そうだろう?」

 ルンの意見に全面的に同意だ。パピィは可愛い。そして着実に強くなってる。

「私も負けていられないわ!」

 ルンが張り切った。暫く進むと目玉に翼の生えたような魔物が現れた。
 
「狩人の刻印!」

 刻印を刻むと、ルンの手の中に弓矢が生まれた。狩人の刻印は弓使いであれば弓を使った攻撃の威力が上がるし、弓を持ってなくても魔力を使用して擬似的な弓矢を生み出すことが出来るようになる。

 そして矢で羽の生えた目玉を狙った。

「ギャッ!」

 上手いこと目に当たり、倒すことが出来たな。

「やったわ!」
「うん。やるなルン」
「えへへ~♪」

 俺が褒めるとルンの機嫌が良くなる。

「ワンワン!」
「うふふ、ありがとうねパピィ」
「アン!」

 ルンがパピィの頭を撫でる。尻尾がパタパタと揺れていた。

 さて、七層の攻略も順調に進んでいたが。

「ワンワン!」
「こっちになにかあるのか?」

 パピィが分かれ道で吠えて俺達を誘導してくれた。パピィの後をついていくと宝箱のある場所にたどり着く。

「よくやったぞパピィ」

 頭を撫でると気持ちよさそうにパピィが目を細めた。本当に優秀だなパピィは。

「居合忍法・影分身」

 俺は自分の影分身を生み出し、宝箱に向かわせた。

「便利よねそれ」
「そうだな」

 罠が発動してもとりあえずは助かる。ただ中には広範囲に及ぶ罠もあるから油断は出来ない。宝箱との距離を取っておく。

――カチッ。

 分身が宝箱を開けると何やら音が聞こえた。罠か――宝箱に何か起きるようなことはなかったが左右の壁が崩れぞろぞろと魔物が姿を見せる。

「ちょ、結構多いわね」
「魔物が出てくるトラップだったようだな」

 この手のトラップになると解除は出来ない。仕方ないな倒すしか無いだろう。

「パピィ、ルン、油断しないようにな」
「わかってるわ!」
「アンッ! グルルルゥ!」

 ルンが新しい杖を構え、パピィも毛を立てて唸り臨戦態勢に。そして影分身にも戦闘準備に入ってもらった。

 出てきたのはラットマンやレッドラットマンそれにゲッコジンだ。両方とも人のような形状をした鼠やイモリといった様相をしている。

「赤いのはラットマンより厄介な病原菌持ちだ。爪や牙に気をつけろ」

 俺が注意を呼びかけるとルンがコクリとうなずき、火刻印を自らに刻んだ。あれは遠くから火で攻撃可能だ。近づかないで済むから毒や病気を受けるリスクが減る。

「パピィにも」
「ワン!」

 パピィには鉄の刻印か。守備力を上げて攻撃を通しにくくしてくれたようだ。

 俺は時間がないからとりあえずは大丈夫と伝え戦闘を開始した。

 ゲッコジンが俺に狙いを定めてやってきた。二体が爪や棘の生えた尻尾で攻撃してくる。この尻尾にも毒があるから注意が必要だ。

「居合忍法・抜刀旋風」

 それでも相手にならなかったが。忍法で二匹纏めて切り裂いた。分身も鎌鼬でレッドラットマンを倒し、パピィも旋風爪牙で突撃。更にルンも火球でラットマンも倒し勝負は決まった。

「やったわね。ふぅ、でも皆がいて良かったわ。流石に一人だったら対処しきれなかったもの」

 ルンが安心したような顔で伝えてくる。当初はルンが単身でこのダンジョンに挑む予定だった。だけど、確かに一人だときつかったかもしれない。

「役に立てたなら何よりだ。さて、宝箱だが――」

 魔物も倒したし、宝箱の中身を確認したが、中には石版が一枚入っていた。

「これは一体?」

 見てみると何か印が刻まれているが。

「あ! これルーンの石版ね! 新しいルーンが刻まれているのよ」

 ルンが嬉しそうに叫んだ。そうかこれがあれば刻印を新たに覚えられるんだな。

「何の刻印なんだ?」
「これは、鈍重の刻印ね。刻むと動きが遅くなるの」

 動きが遅くなる刻印か――強化ではなく弱体化が目的のルーンってことだろう。

 さて、刻印はルンに覚えてもらい、俺達は七層の攻略も終わった。次は八層だが――
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