18 / 125
第二章 サムジャともふもふ編
第17話 ファイト団の危機?
しおりを挟む
ファイト団のメンバーは、シノを草摘みと小馬鹿にした後、目的を達成するために森の奥に入り込んでいた。
「そっちにいった!」
「任せろ! 強打!」
ポンが声をかけるとタンが逃げる灰ねずみの正面に立ち剣を振り下ろした。強打は戦士のスキルであり、通常より威力の高い一撃が繰り出せる。
グシャッと潰れる音がし、灰ねずみは動かなくなった。
「どんなもんだい!」
「はいはい、灰ねずみぐらいではしゃがないの」
腰に手を当ててアンが諭す。灰ねずみは魔物の中でもかなり弱い部類に入る。ある程度腕っぷしが強ければ天職が農民の村人であっても倒せてしまえるほどだ。
「ちぇっ、アンは冷たいな。俺は褒められて伸びるタイプなんだからもう少しは気を遣ってくれよ」
「はいはい、凄い凄い」
両手を上げて、投げやりに言う。どうみても仕方なくだが。
「はっはっは! そうだろうそうだろう」
「いや、単純過ぎるでしょ」
「でも、そこがタンのいいところでもあるだろう?」
そんな会話をしながらも三人は更に奥まで進んだ。魔物の出る森というのは奥に行けば行くほど強力な魔物が潜んでいることも多い。
ただ、ミツの森は初心者冒険者が実戦練習を兼ねて入ることも多い森だ。故にどれだけ奥にいったところでたかが知れてるというのが彼らの認識でもあった。
「見つけた! ガンズモンキーだ!」
「ウッキィーー!」
目的の魔物を探索する三人だったが、いち早くポンが見つけ叫んだ。ガンズモンキーはやたらと大きな目が特徴的な猿の魔物である。
「よっしゃー! 待て待てーー!」
三人に見つかり、ガンズモンキーが慌てて逃げ出した。枝から枝へ飛び移り、三人との距離を一定に保ちながら逃亡している。
「チッ、結構素早いな。ポン見失うなよ」
「勿論。スカウトの探索能力を舐めないでもらいたいね」
「もう、ちょっとまってよ。私はそんなに足は早くないんだから」
最後尾ではアンが顎を拭いながら必死に二人に食らいついていた。アンの天職は魔法使い。体力面ではだいぶ劣る。
とは言え、少しずつガンズモンキーとの距離が縮まっていく。これであればもうすぐ追いつき退治できる。
三人にはそんな確信があった。だが、彼らは気がつくべきだった。今追いかけている魔物の動きがまるで彼らをどこかにおびき寄せてるようなものであることを。
「よっしゃ! こっちだな!」
そしてタンが藪から飛び出し目にしたものは巨大な肩に飛び乗ったガンズモンキーの姿であった。
「――え? な、何だよこれ……」
「じょ、冗談でしょ――何だよこの巨大な化け物」
「な、なんでこんな魔物がこの森にいるのよ!」
三人は動揺していた。それほどまでに信じられない光景だった。
それはあまりに巨大な存在だった。首から下でも三メートルは軽くある体格をし、その上で首から上が二メートル近くあった。特に頭の部分が以上に長く、円筒状の頭蓋はまるで巨大な柱のようですらある。
見たものを畏怖させる異様な容姿をした魔物だった。しかも魔物は三人に既に気がついていた。
ガンズモンキーが戻ってきた時点でまんまと獲物が引っかかったと思っているのだろう。
その証拠に獲物だったガンズモンキーは巨大な魔物の肩の上で尻を叩いて小馬鹿にしている。乗られている魔物も嫌な顔ひとつしてないことから、この二匹は協力関係にあるとみるべきだろう。
そして巨大な魔物が無造作に地面に置かれていた斧を握りだした。
これにより狩る側が狩られる側にシフトする。三人はFランクの冒険者だ。しかし目の前の相手はFランク程度でどうにかなるとはとても思えない。
「こ、こんなところでやられてたまるもんですか!」
しかしアンが杖を向ける。何もせず終われないと考えたのだろう。
「ウィンドカッター!」
アンが行使したのは風の初級魔法だった。小さな風の刃が魔物の頭に命中する、が傷一つ付いていなかった。
「そ、そんな私の魔法が全く通じない」
「くそ! ワンポイントスロー!」
ポンがベルトからナイフを抜き連続で投げつける。ワンポイントスローはある一点に的を絞るスキルでありその分威力が上がるスキルだ。
だが、ナイフは全て硬い皮膚に弾かれて地面に落ちてしまった。ダメージに全く繋がっていない。
「強打!」
タンが接近し足に向けて剣を振り下ろす。だが銀色の刃が宙を舞う。
「う、うそだろ? 俺の剣が――」
剣は根本からポッキリと折れてしまっていた。もう武器として使い物にならないだろう。
「タン! 逃げてーーーー!」
その時、響くアンの悲鳴。タンはうかつとも言えた。自分より遥かに巨大でリーチのある相手に不覚にも近づいてしまった。
見上げると斧を振り上げる化け物の姿。タンは硬直したように動きが止まっていた。相手のあまりの強さに理解が追いつかず思考が停止してしまっている。
そしてその斧刃がタンに向けて振り下ろされたが、その時だった、疾駆する影がタンに近づき肩を掴み引っ張った。刹那――振り下ろされる凶刃。地面に巨大な亀裂が走った。
「あ、あ……」
危なかった。あと一歩遅ければきっとあの斧で自分がミンチになっていた。そう思うと震えが止まらないようでもあったが、同時にこうも思ったことだろう。一体誰が助けてくれたのか?
そして震える少年に彼は声をかける。
「危なかったな。怪我はないか?」
「え? え? う、嘘だろ! あんた――」
「そっちにいった!」
「任せろ! 強打!」
ポンが声をかけるとタンが逃げる灰ねずみの正面に立ち剣を振り下ろした。強打は戦士のスキルであり、通常より威力の高い一撃が繰り出せる。
グシャッと潰れる音がし、灰ねずみは動かなくなった。
「どんなもんだい!」
「はいはい、灰ねずみぐらいではしゃがないの」
腰に手を当ててアンが諭す。灰ねずみは魔物の中でもかなり弱い部類に入る。ある程度腕っぷしが強ければ天職が農民の村人であっても倒せてしまえるほどだ。
「ちぇっ、アンは冷たいな。俺は褒められて伸びるタイプなんだからもう少しは気を遣ってくれよ」
「はいはい、凄い凄い」
両手を上げて、投げやりに言う。どうみても仕方なくだが。
「はっはっは! そうだろうそうだろう」
「いや、単純過ぎるでしょ」
「でも、そこがタンのいいところでもあるだろう?」
そんな会話をしながらも三人は更に奥まで進んだ。魔物の出る森というのは奥に行けば行くほど強力な魔物が潜んでいることも多い。
ただ、ミツの森は初心者冒険者が実戦練習を兼ねて入ることも多い森だ。故にどれだけ奥にいったところでたかが知れてるというのが彼らの認識でもあった。
「見つけた! ガンズモンキーだ!」
「ウッキィーー!」
目的の魔物を探索する三人だったが、いち早くポンが見つけ叫んだ。ガンズモンキーはやたらと大きな目が特徴的な猿の魔物である。
「よっしゃー! 待て待てーー!」
三人に見つかり、ガンズモンキーが慌てて逃げ出した。枝から枝へ飛び移り、三人との距離を一定に保ちながら逃亡している。
「チッ、結構素早いな。ポン見失うなよ」
「勿論。スカウトの探索能力を舐めないでもらいたいね」
「もう、ちょっとまってよ。私はそんなに足は早くないんだから」
最後尾ではアンが顎を拭いながら必死に二人に食らいついていた。アンの天職は魔法使い。体力面ではだいぶ劣る。
とは言え、少しずつガンズモンキーとの距離が縮まっていく。これであればもうすぐ追いつき退治できる。
三人にはそんな確信があった。だが、彼らは気がつくべきだった。今追いかけている魔物の動きがまるで彼らをどこかにおびき寄せてるようなものであることを。
「よっしゃ! こっちだな!」
そしてタンが藪から飛び出し目にしたものは巨大な肩に飛び乗ったガンズモンキーの姿であった。
「――え? な、何だよこれ……」
「じょ、冗談でしょ――何だよこの巨大な化け物」
「な、なんでこんな魔物がこの森にいるのよ!」
三人は動揺していた。それほどまでに信じられない光景だった。
それはあまりに巨大な存在だった。首から下でも三メートルは軽くある体格をし、その上で首から上が二メートル近くあった。特に頭の部分が以上に長く、円筒状の頭蓋はまるで巨大な柱のようですらある。
見たものを畏怖させる異様な容姿をした魔物だった。しかも魔物は三人に既に気がついていた。
ガンズモンキーが戻ってきた時点でまんまと獲物が引っかかったと思っているのだろう。
その証拠に獲物だったガンズモンキーは巨大な魔物の肩の上で尻を叩いて小馬鹿にしている。乗られている魔物も嫌な顔ひとつしてないことから、この二匹は協力関係にあるとみるべきだろう。
そして巨大な魔物が無造作に地面に置かれていた斧を握りだした。
これにより狩る側が狩られる側にシフトする。三人はFランクの冒険者だ。しかし目の前の相手はFランク程度でどうにかなるとはとても思えない。
「こ、こんなところでやられてたまるもんですか!」
しかしアンが杖を向ける。何もせず終われないと考えたのだろう。
「ウィンドカッター!」
アンが行使したのは風の初級魔法だった。小さな風の刃が魔物の頭に命中する、が傷一つ付いていなかった。
「そ、そんな私の魔法が全く通じない」
「くそ! ワンポイントスロー!」
ポンがベルトからナイフを抜き連続で投げつける。ワンポイントスローはある一点に的を絞るスキルでありその分威力が上がるスキルだ。
だが、ナイフは全て硬い皮膚に弾かれて地面に落ちてしまった。ダメージに全く繋がっていない。
「強打!」
タンが接近し足に向けて剣を振り下ろす。だが銀色の刃が宙を舞う。
「う、うそだろ? 俺の剣が――」
剣は根本からポッキリと折れてしまっていた。もう武器として使い物にならないだろう。
「タン! 逃げてーーーー!」
その時、響くアンの悲鳴。タンはうかつとも言えた。自分より遥かに巨大でリーチのある相手に不覚にも近づいてしまった。
見上げると斧を振り上げる化け物の姿。タンは硬直したように動きが止まっていた。相手のあまりの強さに理解が追いつかず思考が停止してしまっている。
そしてその斧刃がタンに向けて振り下ろされたが、その時だった、疾駆する影がタンに近づき肩を掴み引っ張った。刹那――振り下ろされる凶刃。地面に巨大な亀裂が走った。
「あ、あ……」
危なかった。あと一歩遅ければきっとあの斧で自分がミンチになっていた。そう思うと震えが止まらないようでもあったが、同時にこうも思ったことだろう。一体誰が助けてくれたのか?
そして震える少年に彼は声をかける。
「危なかったな。怪我はないか?」
「え? え? う、嘘だろ! あんた――」
1
『砂魔法の建国者~砂属性なんて使えないと砂漠に追放されたから砂の城でのんびりスローライフ満喫してた筈なのにいつの間にか巨大国家に成長してた!~』という新作をはじめました。こちらも興味が湧きましたら宜しくお願い致しますm(__)m
お気に入りに追加
882
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。
『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。
もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです!
そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、
精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です!
更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります!
主人公の種族が変わったもしります。
他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので
そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。
面白さや文章の良さに等について気になる方は
第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる