表紙へ
上 下
19 / 49
2巻

2-3

しおりを挟む
 第2章 魔導反射炉


 明朝、暁光ぎょうこうに照らされながら、俺と使い魔たちは作業に取り掛かった。
 昨日ルベルが頑張ってくれたおかげで、玉掛けはバッチリだった。労うためにルベルの鋼の肉体を俺とキオンでしっかり磨いてあげることにする。
 すると、エフや竹姫が起き出してきた。

「おはよ~、本当早いよね」
「あぁ。今日はクレーンでの移動になるからな。どうしてもスピードを出せないし、早くから動かないと」

 魔導反射炉をクレーンでげた状態での移動は、魔導作業車で普通に移動するのとはわけが違う。
 速度も普段の半分も出ないだろう。一応クレーン車であっても問題のない道を進む予定だが、途中モグラたちやウニに、地盤じばんが緩んでないかを確認してもらう必要もある。

「何か私にもできることがあるといいんだけど……」
「むしろエフにはぜひ助けて欲しいんだ。これで運んでる途中、魔物なんかが襲ってくる可能性もあるからな」
「そ、そうね! 勿論その時は私も戦うわ! 何か武器はある?」

 エフが問いかけてきた。家から飛び出してきたようなものだから、これといった物は持ってきてないのである。もっとも、それはわかった上でのさっきのお願いだ。

「これを見てくれ。クレーン車に備えつけた放水設備だ」

 クレーン部分の横には人が乗れる程度のスペースがあり、握りのついた放水装置がある。握りにはボタンが備わっているので、これを押すことで水が出る仕組みだ。

「えっと、放水ってことは水を出せるってことね。でも、そんなのが武器になるの?」
「そうだな――」

 俺は近くに生えている木を見た。そのうちの何本かは伐採ばっさいが必要なものだ。

「あの木は切ったほうがいいものだからこれで試そうか。放水してみてくれ」

 既に調整済みだから、戦闘にも使える高出力で放水できるはずだ。

「わかった。やってみるね」

 そしてエフが握りを掴み、台座を旋回せんかいさせながら目標の木に狙いを定めた。

「いくわよ!」

 エフの操作で水が一気に吹き出した。
 ――シュバッ!

「へ?」

 放水により、まず木に風穴が開き、首を振ることで鋭利な刃物を使ったように樹木が切れ、倒れていった。

「うん。これなら相手を追い払うことぐらい出来るだろう」
「いやいや、十分過ぎるわよ! 何これ怖い!」

 エフが叫んだ。え? そんなにかな?
 とはいえ、何でもかんでもスパスパ切るわけにもいかないかなら、とりあえずは水のかたまりを飛ばすモードにしておいた。
 明らかに害になる魔物だったり、素材や食材になる魔物だったりするならともかく、そうでないなら無駄むだに傷つけるわけにはいかない。

「ふむ、それ、わしもやってみたいのう!」
「勿論、ずっと一人でというわけにはいかないから竹姫とエフでかわりばんこでやってほしい」
「うむ、任せるのじゃ!」
「私も頑張るわね!」

 これで二人に任せておけばいいな。

「さて、それじゃあ行くとするか」
「そうね!」
「ゴッ!」

 ルベルが張り切っている。

「ウニッ!」
「モグッ!」
「モグ~!」
「モギュ~!」
「モ~グ~!」
「モグモグ!」

 ウニとモグラたちも円陣を組んでやる気を見せた。ちなみに皆には念の為ヘルメットを被ってもらっている。

「さて、出発するぞ!」
「ク~♪」
「うむ!」
「キュピ~♪」

 キャニとキオンも頑張るぞと言っているようだ。
 キャニは皆に障壁を張ってくれている。そしてキオンは癒やし担当だ。ぷるぷるした体は触るとひんやり気持ちがいいしな。竹姫も抱きしめていてご機嫌だった。
 さて、魔導反射炉を吊り上げたまま、移動を開始する。
 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ、と重苦しい音をかなでながら、魔導クレーン車が進んでいった。やはり相当重いからか、地面にわずかにタイヤが沈む。
 進行方向では、ウニとモグラたちが地盤を調べてくれていた。
 ルベルは玉掛けの様子を見ながら前を進んでいる。俺たちの移動速度は、基本的にはルベルの歩みに合わせていた。
 スピード的にもなかなかの長丁場になる。朝から出て正解だったな。朝早くならそうそう魔物や魔獣とも遭遇しないし。

「グルルルルルゥウウゥウウ!」

 そして日が高くなり始めた頃。いよいよ魔物たちも動き出したようで、おおかみの魔物が数匹現れ、俺の運転するクレーン車を囲み始めた。

「ゴッ!」
「ウニィ!」
「「「「「モグ~! モグッ!」」」」」

 しかしルベルとウニとモグラたちが追い払ってくれた。この程度なら放水も必要ないようだ。
 うんうん。みんな頼りになるな。おかげで俺もクレーン車の操縦に専念出来る。

「ブモォォオォォォオォオオオォオオオ!」

 そう思っていたら、今度はいのししの魔物が突っ込んできた。相当勢いがついているな。

「任せて!」

 今度はエフが放水設備を操作し水弾を発射した。飛んでいった水の弾丸によって猪は吹き飛ばされ、目を回して気を失った。ルベルがそっと脇に移動させて、引き続き移動する。

「ウニ~ウニ~ウニ~」

 ウニが慎重に誘導ゆうどうしてくれる。場所によってはクレーン車の車幅だと結構ギリギリだから、今はウニがオーライオーライと言わんばかりに誘導してくれているわけだ。

「きゃ、きゃわいぃいいぃ!」
「モ~グ~♪」

 ウニの姿にエフが興奮気味だ。休憩のためにクレーン車に乗っているイッキをキュッと抱きしめながら、体を激しく揺さぶっていた。

「ゴッ!」
「あぁ、サポートありがとうな」
「ルベルも頑張っているのじゃ」

 ルベルもやる気満々だし、とても助かる。
 魔物や魔獣のたぐいもルベルやエフと竹姫の放水のおかげで近づいてこないし、安心して移動が出来るってものだ。皆がいてくれてよかったよ。
 こうして半日がかりで、ついにドワーフの町に再び足を踏み入れることが出来た。

「あらま! 一体何だいこの鋼鉄の竜は!」
「いえ、魔導重機で魔導クレーン車です」
「え? くれるのかい? いやでもこんな大きな竜を飼う余裕はちょっとないさね」

 俺たちが着いた先にたまたまいたのがステンだったわけだが、そんな冗談か本気かもわからないやりとりをしてしまった。
 その後エフが説明すると、ステンはふむふむ、と頷いていた。

「これは驚いたね。こんなものすごい乗り物をあんたが作ったのかい?」
「そうなるかな」
「ウニ~」
「「「「「モグ~モギュッ!」」」」」
「ク~」
「キュピ~」
「ゴッ!」

 俺が答えると、使い魔の皆もどことなく誇らしげに声を上げた。するとぞろぞろとドワーフが穴から出てきて囲まれてしまった。
 全員女性だったけどな。エフが言っていた通り、男のドワーフは基本穴の中に閉じこもってるようだ。

「凄いね、これ」
「この人間の男が作ったんだと」
「な、なんてものを作ってくれたの……これに比べたらドワーフの作った物なんて鉄くずよ!」
「うむ、ワークの作るものは凄いのじゃ! ドワーフなんて鉄くずなのじゃ!」

 とりあえず皆の評判は上々だ。中には凄く辛辣しんらつな人もいるけど、竹姫も乗っかってとんでもないことを言ってるような……
 でも、ドワーフは今は考えがかたまっているだけで、ボテンシャルの高さを思えばこの程度はすぐ作ってしまいそうな気がするな。三日とかで。

「ワークが常識外れなことを考えている気がするわ」
「はは、まさか」

 エフがジト目を向けてきたけど、俺としてはドワーフの腕を信頼しているので、本気で三日くらいで出来てもおかしくないと思っている。というかドワーフと協力関係を結べれば、発魔所――マナが自然と大量発生しやすいマナ溜まりという場所に作る、マナを効率的に魔力に変換する設備を造ることも出来るかもしれないし。
 すると、ステンたちが思い出したように口を開いた。

「そういえば、ジェイの奴は随分と鼻息を荒くしてたよ。娘をたぶらかしてでかい口叩きやがってとか、逃げ出したら地の果てまで追いかけていって叩き潰すとかね」
「普段は工房から出ようともしないのにねぇ」
「はは、やっぱり姫が心配なんだよ。素直じゃないんだからねぇ」
「まぁしょうがないさ。王様が愛したイー様に、エフ様はよく似てきたし」

 ドワーフの男は寡黙かもくな感じがしたけど、女性は逆におしゃべりなのかもしれないな。
 しかし、そうか。なんとなくそんな気がしたけど、ジェイもやっぱり娘は大事なんだな。

「ところでイーというのは?」

 ドワーフたちの会話の中で聞き慣れない人物の名前があった。気になったのでエフに聞いてみる。

「私のママよ。今はいないんだけどね……」

 そう答えてエフが顔を伏せた。
 しまった! これは地雷を踏んでしまったか! ちなみに地雷というのはトラップ型の魔導具で踏むと爆発する。もともとはダンジョンでよく見られたトラップだ。
 ど、どうしよう。正直俺はあまり女性と接する機会がなかったから、どうもこういう時どうしていいのやら……

「そ、そのごめんな? くなっていたなんて知らず……」

 とはいえ、家族の死は辛い……俺の親が死んだ時も、当時はまだ小さかったが、それでもやっぱりキツかった。その後師匠に拾ってもらえたおかげでここまで生きてこられたけどな。

「何勝手に殺してるんだい! イーは今も健在だよ!」

 俺はとにかく謝ろうと頭を下げたのだが、ステンが声を張り上げ冗談っぽくこぶしを振り上げた。
 え? そうなのか?

「ママはドワーフの中では変わっていてね。今は冒険者をやっているの。世界中を旅して回りたいって言ってね。それでこの島にはいないんだよ」

 何だ、そうだったのか。

「あの当時はエフちゃんも寂しがっていたわね。イーが海に出ると知って、世界の終わりみたいな顔してたもの」
「わ、忘れたわよ、そんなこと!」

 ツンッとエフがそっぽを向いた。強がってるけど、母親のことがそれだけ好きなんだろうな。
 そんな会話をドワーフの女性たちとしていると、ジェイの声が頭上から降ってきた。

「逃げもせず本当にやってくるとは、いい度胸してやがるな小僧!」

 見ると、洞窟から現れたジェイと仲間の職人がこっちを見下ろしていた。

「逃げも隠れもしないさ。見ての通りちゃんと炉を持ってきてやったぞ」
「……その竜みたいのがそれか?」

 ジェイがマジマジと魔導クレーン車を見ながら言った。何だかんだ言っても興味深そうではあるな。まぁ、これは目的の魔導反射炉を運ぶために使用しただけだが。

「これはあくまで魔導建設重機の一つだ。魔導クレーン車と言ってな。この魔導反射炉を運ぶために運転してきたんだ」
「魔導クレ……そんなもの聞いたことないぞ。昔聞いた魔導建築士の話でも出てこなかった」

 魔導重機を完成させたのは俺だからな。まぁ、ベースにしたのは師匠の術式だし、始祖が魔導建築の技術を確立し発展させてきたからこそ、俺もこれらの重機を完成させることが出来たのだが。

「とりあえず魔導反射炉を置きたいんだが、ここでいいかな? 工房内は流石に厳しいだろうし」

 クレーンが入らないしな。魔導反射炉を入れるスペースもなさそうだ。

「……別にどこに下ろしてくれてもいい」
「そうか、よかった。助かるよ」

 俺たちは適当な開けた場所に魔導反射炉を設置した。ジェイはそれを値踏みするように見ている。

「ふん。反射炉と言ったな。俺が知ってるのとは見た目が違うが」

 どうやらジェイは反射炉の存在自体は知ってたみたいだ。ただ、『魔導』の部分が抜けている。ただの反射炉と魔導反射炉では性能が全然異なるのだけどな。

「パパ、知ってたの?」

 エフは俺ほど細かいことは気にせず、ジェイが反射炉と口にしたことに反応していた。

「当然だ。俺たちドワーフをめるな」
「なら、どうして溶岩を利用した炉なんかを使ってるんだ?」
「は! そんなの、今の炉の方がよりよい物を造れるからに決まってるだろうが!」

 後ろに控えていたドワーフが堂々と言い放つが、俺からしてみれば首を傾げたくなる話だ。
 別に魔導反射炉でないとしても、あれならば反射炉の方がまだマシだ。

「納得してないようだな?」
「そりゃまぁ……前も言ったが、あんなのじゃ中途半端な物しか出来ないぞ?」
「何だと! テメェ、一体何を根拠にそんなこと言ってやがる!」
「そうだそうだ!」
「そんな見た目だけの代物を持ってきて偉そうにしてるんじゃねぇぞ!」

 今日はジェイよりも、他のドワーフがうるさいな。

「モグ~……」
「モグッ!」
「モギュ~」
「モグモグ……」
「モ~グ~!」

 思わぬヤジが飛んだので、モグラたちも辟易へきえきとしていた。マーボとイッキなんかは腕を振り上げながら、何を! と言い返しているようにも見える。

「そもそも、なんであれにこだわるかがわからないぞ。確かに見た目は熱そうだが、あのマグマで作業しても熱が弱すぎる」

 俺は思ったことをドワーフたちに伝えてやった。するとジェイ以外のドワーフが顔を見合わせ、そしてゲラゲラと笑い出した。

「おいおい、言うに事欠いてマグマが熱くないだとよ?」
「頭の中にガスでも溜まってるんじゃないのか?」
「ガッハッハ! 人間にはあの真っ赤に煮えたぎる溶岩がひんやりしてそうに見えるのかい?」

 ドワーフに小馬鹿にされてしまった。
 しかし俺は別に熱くないとは言ってないんだがな。その辺りを勘違いしているようだ。無言のジェイが気になるが、一応説明はしておく。

「何を勘違いしているか知らんが、俺は熱が足りないと言ったんだ。あの溶岩の温度は大体千六百度といったところだろう」

 そこまで話すとドワーフたちが顔を見合わせた。一方でジェイの目つきは鋭い。

「一方で鉄の融点は千五百三十八度だ。あのマグマは確かに特殊で普通に見られる溶岩よりは温度が高いが、それでも鉄を溶かす温度としてはまだ弱い。より良い武器や防具を造りたいなら、反射炉が必要だろう」

 このマグマ程度の熱では、鉄が溶けるのに時間が掛かりすぎる。そうなるとマナとの結びつきが悪くなるし純度にも影響が出る。結果的にあんな中途半端な物が量産されることとなるのだ。
 もっとも、マグマを利用するというやり方が間違っているにもかかわらず、それなりの物を作れているのはドワーフの技術があってこそなんだろうが。

「――なるほど。話はわかった。つまり俺たちが使っているマグマの炉だと熱が足りないから使い物にならない。だがお前の持ってきた炉なら俺たちが使ってるマグマの炉よりも使えるし性能もいいと、そう言いたいんだな?」
「平たく言えばそうだ」

 ジェイの言葉に俺はそう答えたが、口ぶりが妙に気になった。
 だいたい、反射炉は知っていたとなると、それなのになぜあのマグマを?
 まさか本気でマグマの方が使えると思ったのか?

「親方! どうせ口からでまかせですよ! マグマの温度なんざ見ただけでわかるもんじゃねぇ!」
「ちょっと! ワークの言っていることが信じられないっていうの?」
「そうじゃ。聞き捨てならないのう」

 エフと竹姫が不機嫌そうに、職人に言葉を返した。俺を信頼してくれているのが単純に嬉しい。

「俺も物作りに関わる人間だ。熱の温度なんて見ただけで大体わかる」
「ウソつけ、マグマの温度がそんなに低いわけあるか!」
「親方が選んだマグマだぞ! わざわざマグマを利用して鍛冶をしようと決めたんだ!」

 ドワーフたちが叫ぶ。ただ、やはり言い方が気になる。ドワーフたちはジェイの決めたことに盲目的もうもくてきに従っているようにも感じられたからだ。
 というか、中には焦っているドワーフもいる気がするんだよな。もしかしたら何人かは気がついていたのかもしれない。

「こいつの言ってることに嘘はねぇさ。確かにあのマグマは特殊で普通より温度が高いが、それでも炉には勝てねぇ。それは事実さ」

 そして驚くべきは、ジェイがあっさりとその問題を認めたということだ。

「だけどな。やはり魔導建築士というものは信用できねぇな。見てるのは技術だけで、物事の本質ってもんを理解してねぇ。俺からしてみたら、反射炉なんざを持参していきがってるお前の方がよっぽど滑稽こっけいだぜ!」

 素直に認めるだけでは終わらなかったか。まさか逆に言い返されるとは。
 ただ、これはただの反射炉ではないんだけどな。

「なるほど。反射炉ぐらいは知っていたし、その程度じゃ負けを認める気にもならないってか」
「その通りだ。わかったらとっとと帰って、二度と俺たちに関わるな。娘にも手を出すなよ」
「ちょっと、勝手に何決めてるのよ!」
「モグ~!」
「モグッ!」
「モ~グ~!」
「モグゥ!」
「モグモ~グ!」

 エフが顔を顰め、モグラたちもそうだそうだ~と言わんばかりにブ~ブ~、いやモグモグ言っている。
 まぁ、何気にエフのことは気にしてそうなあたり、やはり父親か。

「何か勘違いしているようだが、俺の炉はただの反射炉ではないぞ。魔導反射炉だ」
「……何だと?」

 ジェイの眉がピクリと反応した。
 魔導反射炉だからこそ、クレーンでここまで運べるぐらいのサイズで済んだのだ。まぁ俺からすれば、これでもまだ大きいけどな。もう少し素材が充実すれば、内部空間を次元的に拡張できるから、見た目を更に小さくできる。

「……魔導反射炉、一体それが普通の炉と何が違うってんだ」
「当然だが熱量が段違いだ。これは簡易的な物だが、それでも普通の反射炉の三倍は上げられる」

 勿論ただ温度を上げればいいというわけではないが、金属は鉄以外にも存在する。例えばアダマンタイトなどは、融点が五千五百度だ。
 このぐらいになると普通の炉では手が出ない。それにただ熱するだけでは劣化する一方の金属もある。それも魔導反射炉なら、問題なく扱えるのだ。

「……しかし、ただ温度を上げればいいというものじゃ……」
「さらに言えば、この魔導反射炉は炎を魔炎まえん化出来る」
「……魔炎?」

 俺が説明を続けると、ジェイが疑問の声を上げ短くうなった。あれ? 知らないのか?

「魔炎はマナが込められた炎だ。マナの影響で普通の炎より青く光るのが特徴なんだが……知らないのか?」
「……知らなきゃ悪いか?」

 ギロリと睨まれた。いや、悪いということはないが、ドワーフが鉄以上に大好きとされるミスリルの加工で困るだろう。
 ミスリルは繊細せんさいな金属だ。マナの含有率が高く、鉄嫌いのエルフもミスリルは受け入れると言われている。見た目には青白い銀といったところで、それ故か魔法銀なんて呼ばれることもある。
 このミスリルは、ただ熱しただけだと純度が大きく損なわれる。
 昔は魔炎加工も一般的でないから、ミスリルも普通に熱していた。それでも魔法武器に加工しやすいということで重宝されたが、その場合武器としてはもろくなる。
 そこで重宝されたのがドワーフだったという話だ。
 当時はミスリルを加工するならドワーフと言われた程だが、これはドワーフが鎚を振る時に、意識しなくても魔力を込めることが出来たからだ。しかも鍛冶の時に限ってだが、かなり繊細な魔力操作を無意識に出来る、と俺は師匠から聞いた。
 だから、たとえ冶金やきんの段階で劣化してもドワーフの腕である程度の質まで持っていくことが出来たってわけだ。
 だけどそれでもやっぱり加工の段階で質が低下しているのはかんばしくないからな。
 それで、ドワーフなら魔炎のことを知ってると思っていたのだ。
 しかし知らないなら仕方ない。魔炎の重要性を説明すると、ジェイは唸った。


しおりを挟む
表紙へ

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

【完結】捨てられ令嬢は王子のお気に入り

怜來
ファンタジー
「魔力が使えないお前なんてここには必要ない」 そう言われ家を追い出されたリリーアネ。しかし、リリーアネは実は魔力が使えた。それは、強力な魔力だったため誰にも言わなかった。そんなある日王国の危機を救って… リリーアネの正体とは 過去に何があったのか

無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗
ファンタジー
 帝国の第三皇子・ラスティは“無能”を宣告されドヴォルザーク帝国を追放される。しかし皇子が消えた途端、帝国がなぜか不思議な力によって破滅の道へ進む。周辺国や全世界を巻き込み次々と崩壊していく。  ラスティは“謎の声”により無人島へ飛ばされ定住。これまた不思議な能力【無人島開発】で無人島のレベルをアップ。世界最強の国に変えていく。その噂が広がると世界の国々から同盟要請や援助が殺到するも、もう遅かった。ラスティは、信頼できる仲間を手に入れていたのだ。彼らと共にスローライフを送るのであった。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。