17 / 49
2巻
2-1
しおりを挟む第1章 ドワーフとの因縁
カルセル王国の宮廷から追放された俺、ワーク・ルフタ。
魔導の技術を使う建築士――魔導建築士だった俺は、使い魔のブラウニー、ウニと一緒に国を出ると、海を渡ってとある島に流れ着いた。
その島では、タンボ、マーボ、モグタ、マツオ、イッキという五匹のモグラの魔物たちに、カーバンクルのキャニといったもふもふな仲間が増えた。その後も、ゴーレムのルベルにスライムのキオン、そして島の竹の主である竹姫という名前の女の子も仲間になって、俺たちは島を開拓していた。
そんなある日、ドワーフの姫であるエフと知り合った俺たちは、俺の使う道具を父であるドワーフ王に見せたいという彼女の頼みで、ドワーフの王国に向かっていた。
移動手段は、魔導作業車。
魔導建築の技術で生まれた、四つのタイヤと頑丈な装甲の鉄の車体を持ち、魔力によって走行する機械だ。
ドワーフの王国は山の方にあるので、平原を抜けて山を登っていく。
途中でゴリラのような魔物の襲撃にあったけど、上手く追い払って俺たちは先を急いだ。
すると、エフが感心したように声を上げた。
「山道でもすいすいなのね、この魔導作業車って」
「ああ、どんな悪路でも進めるようじゃないと、建築作業に支障をきたすからな」
ドワーフの国までは、自然に出来た山道を使って向かっているが、当然舗装されていない。
かなりの悪路だが、魔導作業車なら何の問題もなかった。
そうして進むことしばらく――
「着いたわ。ここが私たちの暮らしている町よ」
「おお! 何か凄いな」
「山に穴が一杯開いているのじゃ」
「ウニッ!」
「ク~♪」
魔導作業車から下りて、ドワーフの暮らしている町並みを見る。竹姫にウニ、キャニも興味津々といった様子だ。
段々畑のようになっている山の斜面が利用されていて、畑なんかがある。
そして何より特徴的なのは、斜面に掘られた横穴たちだった。
「モグ~」
「モギュ~」
「モグッ!」
「モグモグ」
「モ~グ~」
人が出入りしているから、あの中が住居なのかな。穴掘り名人のモグラたちも、この造りには好感をもったようだ。
「キュピ~♪」
「ゴッ!」
ルベルの肩の上にはキオンが乗っていて、ポンポンッと跳ねて町の様子を眺めている。
「原始的で驚いたでしょ? ちょっと恥ずかしいぐらいよ」
「いやいや、そんなことはないよ」
苦笑交じりにエフが問いかけてきた。
原始的か。確かに昔の人間は、洞窟を住まいとして利用していた。
だからといって、そういう暮らし方が恥ずかしいとは思わない。俺は魔導建築士だが、しっかりとした建物を造って暮らすべきだ! なんて考えを押し付けるつもりもないしね。
イメージしているドワーフの暮らしとはちょっと違ったけど、こういう暮らしもいいと思う。
「いいのよ、ハッキリ言ってくれても。私だって、いい加減ちゃんとした家の一つでも造ってほしいと思ってるもの」
ただ、エフはどこかうんざりしたような口調で言った。そして文句は続く。
「大体パパもそうだけど、うちのドワーフ連中は剣とか鎧とかそんなのばっかり打ってて、生活に役立つ物なんて何一つ造ってくれないのよ」
口調に段々と熱がこもってきたな。
しかしエフの話を聞いてると、ドワーフは好きで穴の中で暮らしているってわけじゃないのか。
確かに、例えばエルフなんかは自然と共存している種族だから、わざわざ木々を伐採して家を造ったりはしない。エルフは精霊と意思疎通できるため、精霊を通して森の樹木と会話し、そこに洞を作って住処とするんだ。
そんな自然を大切にする種族だから、かつては木々を伐採して家を造る人間に嫌悪感を持っていたらしい。今は時代が変わり、互いを尊重できるようになっている。
それはそれとして、ドワーフはそういったエルフとは対照的という印象があったんだけどな。
物作りが好きな種族だから、本来家なんかも自分で造れるはずだ。だから洞窟で暮らしているのは好きでやってるのかと思ったのだが、エフの口調では違うようだ。
「そこまでして造りたい装備品があるってことなのかな?」
俺はふと、そう思った。装備品にこだわりがあって、建物を造る暇がないとかだろうか。
「どうかな? ただ意固地になってるだけって気もするんだけどね」
エフがマツオを抱きかかえながら言った。理由は彼女も知らないようだな。
「とにかく、話は聞いてみようかな」
「ならこっちよ」
「中はどうなってるのかのう?」
竹姫は洞窟暮らしに興味津々なようだ。エフの案内で、俺たちは坂を登っていく。
「姫様! どこに行ってたのよ! 心配したのよ!」
すると穴から出てきた女の子が、目を見開きながら声をかけてきた。姫様とはエフのことだろう。
「ごめんね。ちょっと気になることがあって出てたの。そうそう、こっちの皆は昨日知り合ったお客さん」
「え? お客、て、え? 嘘? もしかして人間!?」
出てきた女の子は、エフの後ろにいた俺たちを見て驚いている。しかし、この人もエフ同様に幼く見えるな。
「わしは竹姫じゃ!」
「た、竹姫……?」
竹姫が前に出て、やってきたドワーフに名前を告げた。相手は若干戸惑ってるようだな。
そんな彼女に、エフが説明する。
「そこのワークは、カルセル王国から海を渡って来たんだって。それでね、パパに会ってもらおうと思って」
「随分急な話ね……それにカルセル王国? 何か聞いたことあるような……」
ドワーフの彼女が頭を捻る。エフもそうだったけど、国の名前には聞き覚えがあるようだ。
「とにかく悪い人じゃないから安心して」
「姫様がそう言うなら……でもジェイ王は何て言うかしらね」
「ま、パパには私からなんとか言うわ」
そして俺たちは、ドワーフの彼女と別れて王のもとへ向かうことになった。
「エフの友だちだったのかな?」
道中、エフにさっきの女性について聞いてみた。随分と親しげだったよな。
「友だちって、まぁ仲はいいけど、あの人私よりずっと年齢は上よ」
そうだったのか。見た目からは年の差が全くわからないな。
「随分心配されていたけど、エフは俺たちのところへ来るのを誰にも言ってなかったのか?」
「ええ。水を汲みに山を降りた時に、貴方たちの砦をたまたま見つけただけだったから」
そんな話をしながら、エフの案内で横穴を進む。
うん。なんか普通に洞窟って感じだな。この中が住居兼王の工房になってるらしいけど……さて、一体どんなドワーフなのか。さっきから遠くの方で、高い音が聞こえるんだよな。
それにしても、中は随分と蒸し暑いな。やっぱり近くに炉があるからなんだろうか?
「むぅ、とっても暑いのじゃ! キオンがひんやり気持ちいいのじゃ~」
「キュピ~」
「ウニュ~」
「「「「「モグッ、モギュッ、モ~グ~、モグ~、モグモグ」」」」」
この暑さには竹姫も参っているようで、キオンを抱きかかえて暑さを和らげようとしている。
ウニもキオンに寄り添う。モグラたちもグテ~ッとしていた。やはりキオンの冷たさに救われているようだ。
「ルベルとキャニは大丈夫か?」
「ゴッ!」
「ク~」
どうやら大丈夫みたいだな。キャニも意外と暑さには強いようだ。障壁を張れるから、もしかしたらそれで熱を通さないようにしているのかもしれない。
俺はといえば、現場によってはもっと暑い場所で作業することもあるから、これぐらい問題ない。
そうして奥に行くにつれ、次第にカーンカーンカーンという金属音が大きくなってきた。
そのまま進むと、大きく開けた空間に出た。そこではドワーフたちが一心不乱に鉄を打っている。
赤く染まった鉄を打つドワーフの目は鋭い。ドワーフの漢たちのムンッとした熱気で鍛冶場全体が霞がかっている程だ。
「パパ、ちょっといい?」
――カーン! カーン! カーン!
エフは上半身裸のドワーフに声を掛けた。パパと言っているから、この人がジェイというドワーフの王なのだろう。
背は他のドワーフと一緒で低いが、筋肉量が他を圧倒していた。目付きも魔獣のごとく鋭い。
鉄を打っては掲げて、出来を確認している。形状を見るに剣を造っているのか。
う~ん、でもあれって……
「ねぇパパってば! 聞いてるの!」
「……何だまったく、うるさい奴だ。こっちは仕事中だぞ」
エフが何度も呼びかけて、ようやくジェイが反応する。
「だから一体何の仕事なのよ……」
「女にはわからんことだ」
「年がら年中鉄を打って、失敗したといって捨てるだけの作業の何が仕事なのよ」
エフが胸の前で腕を組み、口をへの字に結んだ。それから指を立ててジェイに用件を告げる。
「とにかく、お客さんが来てるから一旦手を止めて話を聞いてよ」
「――客だと?」
ジェイは振り上げた鎚を止め、ギロリと俺を睨んでくる。
そしておもむろに立ち上がり、隣に積んであった巨大な鉄鉱石を俺の足もとに投げつけてきた。
「打ってみろ。鉄も打てないような奴に娘はやらんからな」
「藪から棒に何言ってるのよパパ! バッカじゃないの!」
エフが顔を真っ赤にして叫んだ。い、いきなり盛大な勘違いだな。
「むっ、貴様、人間だな?」
するとジェイの眉が上がり、訝しげにこっちを見ながら聞いてきた。
「え? はい。そうです。初めまして、ワークと申します」
なので俺も、相手は王だから失礼のないように、そう答えた。
「ふん。人間がドワーフ様の娘に手を出そうとはいい度胸じゃねぇか。いいか? 俺は人間なんかに娘をやる気はねぇ!」
「だからやるとかやらないとか、そっから離れてよ馬鹿!」
エフがジェイの背中をぽかぽかと叩きながら訴える。とんだ勘違いではあるけど、なんか可愛い。
「何だ、男を捕まえてきたんじゃないのか?」
「違うって言ってるでしょう!」
「だったらお前は何だ? 何で人間がこの島にいる」
ジェイは仁王立ちになり、ギラギラした瞳を俺に向けてきた。エフと違って人間への警戒心が強そうだな……
「えっと、実は事情があって」
「待て――そこにいるのはブラウニーだな?」
「ウニッ?」
ジェイは俺を手で制し、すぐ横にいたウニに注目した。
「この子はウニなのじゃ!」
「うん? 人間の子どももいたのか?」
そしてウニを抱き上げ、竹姫が会話に加わった。
「人ではない! わしは竹姫なのじゃ!」
「竹姫?」
ジェイは目をパチクリさせている。
「だから、まずは説明を聞いてってば」
眉を寄せながらエフが言い聞かせるように告げると、ジェイは鼻を鳴らし答える。
「……ふん。仕方ない。こっちは忙しいんだが、ちょっとだけ時間を割いてやろう」
よかった、話を聞いてもらえるみたいだ。しかし、エフは父親らしいこともしてくれなかったと言っていたけど、さっきの会話を聞いてるとエフのことを父親として気にかけているみたいだよな。
ただ、やはり噂通りドワーフは気難しそうだ。しっかり話ができるかどうか。
まずはエフが俺たちについて簡単に説明してくれる。
「――ふむ。つまりお前はカルセル王国から来たということか」
ジェイがジロリと俺を見る。値踏みするような目付きだ。
「……しかし、まさかあの国からこの島にやってくる者がいるとはな」
「カルセル王国を知っているのですか?」
「俺の親父は元々カルセル王国で鍛冶師をやっていたからな」
ジェイが答える。それは驚きだ。
「凄い偶然じゃない。それならパパも仲良くしてあげてよ」
「は? ふざけるな! なんで俺がカルセルの人間と仲良くなんざ。馬鹿も休み休み言え」
エフが笑顔で告げるが、ムスッとした顔でジェイが答える。どうやらカルセル王国そのものが嫌われているようだ。
「あの、王国と過去に何かあったのですか?」
「そんなことをわざわざてめえに聞かせる義理はねぇ」
おいおい、取り付く島もないな。なまじ出身国の名前を出してしまったせいか、より意固地になってしまった気がする。
「もう。そんなこと言わないでよ。何があったか知らないけど、そこの出身ってだけじゃない」
エフが両腕を組んで口をへの字にした。ジェイの方は、ふんっ、と鼻を鳴らし俺に背中を向ける。
「とにかくそういうことなら話すことはなにもない。とっととけぇれ」
そして鎚を振り上げる。どうやらもう話す気は失せたようだ。
「いい加減にしてよ! 大体その作業だって、いつも失敗ばかりして横に積んであるのもその成れの果てでしょう!」
エフが怒鳴った。ジェイが作業している辺りには鎧や盾、剣などが無造作に積み上げられていたが、あれは全て廃棄する予定の失敗作ってことか。
「だから私はワークを連れてきたのよ! 彼、凄いんだから! 魔導建築士と言ってね。砦や壁もあっという間に作れちゃう凄腕なのよ!」
「何!? 魔導建築士だと!」
エフの話を聞いた途端、ジェイが鎚を振る手を止めて、弾かれたように俺を振り返る。
「つまり貴様はカルセル王国からやってきた魔導建築士だというのか!」
「は、はいそうですが――」
ジェイはクワッ! と両目を見開くと、顔を真っ赤にして、積み上げられていた鎧を掴み投げつけてきた。地面に当たって明後日の方向に跳ね返ったが、いきなりの行動に皆驚く。
「ウニィ!?」
「「「「「モ~グ~!」」」」」
「お主、いきなり何をするのじゃ! あぶないじゃろう!」
竹姫たちが抗議の声を上げた。
当たりこそしなかったが鉄の鎧だ。もし命中していれば大怪我していたかもしれない。
「流石に今のは危ないだろう! 皆に当たったらどうするんだ!」
俺もたまらず文句を言った。だが、謝るどころかジェイは怒りを露わに怒鳴り返す。
「うるせぇ! こっちは魔導建築士と聞くだけでムカムカしてたまんねぇんだ! とっとと神聖な工房から出て行け! ぶっ飛ばすぞ!」
「パパ、何馬鹿なことを言ってるのよ!」
「うるせぇ! テメェもこんなのと付き合うのは今すぐ止めろ! そうでないならこの町から出て行け!」
「なッ! わかったわよ。だったら出て行くわよ、このわからず屋!」
そしてエフは「行こう、ワーク!」と促してきた。
それにしてもなんて剣幕だ。他のドワーフもジェイの憤慨ぶりに作業を止めてこっちを見ていた。
今も興奮して鼻息が荒い。このままじゃ話にならないし、またその辺の物を投げつけられる可能性がある。
「……わかりました。この場は出ていきます。だけど、あんたも鍛冶師の端くれなら、自分の作った物を投げつけるなんて恥ずかしい真似はやめるんだな」
「な、何だと! てめぇ、わかったふうなことを!」
ジェイの怒鳴る声が聞こえたが、俺は無視してエフを追いかけるようにその場を後にした。
「全くもう! あの意固地! 頑固者! 偏屈ドワーフ!」
工房から離れてから、エフの口からはジェイの文句ばかりが出ていた。かなりご立腹の様子だな。
「むぅ、それにしても何なのだ? なぜにワークの職業を聞いただけであそこまで怒るのじゃ?」
「竹姫もそう思うか……俺個人ではなくて、魔導建築士という職業を毛嫌いしている様子だった」
「わかんないけど、どうせ子どもっぽい理由よ!」
う~ん、エフはすっかりジェイに不信感を抱いてしまったようだ。勿論俺も、いきなり切れられていい気はしないが、親子の仲が拗れてしまうのを見ると複雑な気分だ。
「あら、どうしたんだいエフちゃん。随分とご機嫌斜めじゃないか」
「あ、ステンおばあちゃん!」
怒りが収まらないエフと歩いていると、正面からやってきた女性が声を掛けてきた。
それにエフが応じていたけど……お、おばあちゃん? 全くそうは見えないな。他の女性と一緒で、見た目はとても幼い。
「エフのお婆様なのかのう?」
竹姫がエフに聞いた。彼女も気になったのだろう。
「ううん。そういうわけじゃなくて、うちでは年長者だから皆からおばあちゃんと呼ばれて親しまれてるのよ。こう見えてパパより大分上だし」
そ、そうなのか。本当にドワーフは年齢がわからないな。
そう困惑していると、ステンがエフに尋ねた。
「それで? そんなユッサユッサして一体どうしたんだい?」
「それが……って、なぜユッサユッサ!」
「いや本当。エフちゃんはいつみても豊かだねぇ。ドワーフの女は極端に大きいか極端に小さいかのどちらかだからねぇ。あたしゃ羨ましいよ」
そう言ってアッハッハ、と笑ってみせた。おばあちゃんとは思えない可愛らしさだけど、確かに胸はエフと比べるまでもないな。
「おっと、ついおっぱいに目が行っちゃったねぇ。それでどうしたんだい?」
「うん。パパがね、わからずやなの! もう本当偏屈!」
「おやおや。あんたら親子は本当よく衝突するねぇ。だけど、今回はもしかしてそちらのお客さんにも関係してるのかねぇ?」
ちらりと視線を向けられたので、俺は挨拶しようとする。
「あ、申し遅れました。私は――」
「あぁ、いいってそういうのは。人間が来たってのは既に噂にはなってたけどねぇ。私も前の国にいた時は、人間とはよく話したさ。とにかく普通に喋ってくれたらいいよ」
前に出した手を上下させながらステンがそう促した。ならまぁ、お言葉に甘えるとしようかな。
「俺はワークと言って、カルセル王国から来た魔導建築士なんだ」
「こりゃ驚いたね。カルセル王国、しかも魔導建築士ときたかい」
目を丸くするステンに、エフが尋ねる。
「おばあちゃん、もしかして何か知ってるの? パパがそれで急に怒り出して追い出されたのよ。私にも、ワークと付き合うならもう出て行けって! 本当信じられない!」
思い出したのか、エフがまた不機嫌になった。
「なるほどね。まったく、親子揃って頑固というか馬鹿というか」
えっと、頑固と馬鹿はちょっと意味合いが違ってくるような……ただこの口調だと、何か知ってそうではあるな。聞いてみるか。
「その、ステンさんは王がなぜ怒ったのかわかるのかな? よかったら聞かせてくれると嬉しいんだけど」
「そうさね。あんなことで親子の仲が気まずくなるのも、折角やってきてくれた人間と反目するのも馬鹿げてるしねぇ。いいさ、教えてあげるよ。ま、立ち話も何だからうちに来な」
そして俺たちはステンの家へと案内された。家と言ってもたくさん開いた横穴の一つでもある。
「ま、今茶でもいれるさ」
ステンは洞窟内の出っ張った岩に、金属のケトルを置いた。特に魔法や道具を使ってる様子はなかったのだが、しばらくしてケトルの口から湯気が噴き出てくる。
「ウニィ~」
「「「「「モグ~モグ~」」」」」
「キュピ~」
「ク~」
「ゴッ!」
「あはは、これに興味あるのかい? こんなのは魔導建築士が作るような道具に比べたら玩具みたいなもんだろうさ」
興味津々な様子の使い魔たちにステンはそう言うが、俺は首を横に振る。
「いやいや。だけど、よく考えられてるな。この近辺は温度が高い。恐らく火山の熱を利用してるんだと思うけど、その出っ張った部分は熱が集中していて熱くなってるのでは?」
「流石だね。だから触ったら駄目だよ。危ないからね」
そう言ってお茶を淹れてくれた。
壁に熱源があるからか、洞窟内もかなり暑いのだが、湿度は低いからかカラッとはしている。
お茶を飲み終えると、不思議と暑さが和らいだ。竹姫が満足げに頷く。
「うむ。旨い茶なのじゃ!」
「はは、喜んでくれたなら何よりだよ。さて、落ち着いたところでさっきの話だけどね」
ステンが話を切り出してくれたので、俺たちも聞く態勢に入った。
0
お気に入りに追加
5,524
あなたにおすすめの小説
親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが当たり前になった世界。風間は平凡な会社員として日々を暮らしていたが、ある日見に覚えのないミスを犯し会社をクビになってしまう。その上親友だった男も彼女を奪われ婚約破棄までされてしまった。世の中が嫌になった風間は自暴自棄になり山に向かうがそこで誰からも見捨てられた放置ダンジョンを見つけてしまう。どことなく親近感を覚えた風間はダンジョンで暮らしてみることにするが、そこにはとても可愛らしいモンスターが隠れ住んでいた。ひょんなことでモンスターに懐かれた風間は様々なモンスターと暮らしダンジョン内でのスローライフを満喫していくことになるのだった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。