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第2章 球技を扱う冒険者編
第85話 取り戻された御神木の姿
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配下のモンスターが倒れていき御神木ロードスにも変化が現れていた。
先程まで禍々しい姿に変わり果てていたロードスであったが異様な形に捻れていた枝が、絡んだ糸を解すように元に戻っていき、活力が漲っていく。徐々に、張りのある美しい姿が取り戻されていったのだ。
その様子を見つめるウィンと長老の顔には、安堵の表情が浮かんでいた。ついに、寄生モンスターを倒すことができたのだ。
「やったわ! これってつまり、寄生モンスターを倒したってことよね?」
そうウィンが喜びを込めて尋ねた。
「うむ、その通りだ。見るがいい、御神木も元の神々しい姿に戻ってきておるぞ」
と長老が深く頷き、恍惚とした表情で御神木を見つめた。
「これで、里のエルフ達も安心できるだろう。長い間、この地に住んでいる私たちにとって、御神木は大切な存在だ。寄生モンスターに侵されてしまうなんて、考えられなかった」
感慨深そうに長老が語った。そして、寄生モンスターを倒す上で一番の功労者とも言えるキングに顔を向け言葉を続ける。
「ロードス様が救われたのもボール様のお力は勿論のこと、キング殿の協力があったことこそ、大きな意味を持っていると思います。本当に感謝しています」
と長老は深く頭を下げたのだった。
「俺の力だけではないさ。一人でやっても何も成し遂げられなかったことだろう。ボールも、ウィンも、ハスラーも、アドレスも、みんながいてくれたから、俺は自信を持って戦うことができたんだ」」
キングは長老に向かってそう語りかけた。その言葉に、仲間たちはうなずき、微笑み返した。
「何か改めてキングにそう言われると、照れるな」
とハスラーが言った。
「でも、本当にそうだよな。俺たちのチームワークが勝利につながったんだ」
それを聞きアドレスもうなずきながら微笑んだ。
「そうだよね。お互いを信じ合って戦うことができたから、ロードス様を解放出来たんだと思う」
仲間たちとの絆を再確認しながら、キングたちはその場に立っていた。長老も、感謝の気持ちで一杯だったことだろう。
『――私を救ってくださったのは、そなたたちであったのか?』
突然、彼らの脳裏に声が響き渡った。キングたちは一瞬驚き、しかし、その声がロードスのものであることにすぐに気づいた。
「ロードス様! ご無事で何よりです!」
長老が手を合わせ、御神木の回復を喜んだ。
「この声、私も初めて聞いたわ」
「ウィンも知らなかったのか?」
ハスラーがウィンに尋ねた。エルフの里で生まれ育ったウィンでも、ロードスの声を聞いたことがないというのが意外であった。
「そうよ。長老でさえ滅多に聞くことができないそうだから、私たちは特別な経験をしたことになるわね」
ウィンが右手を軽く振り上げ、キングはうなずきながらロードスに目を向けた。
「エルフの里の御神木の声だなんて教会でも聞いたことがあるかどうか」
アドレスがポカンとした顔で言った。ロードスとはそれほどまでに珍しい存在なのだろう。
『私はあなた方に感謝をしなければなりませんね。私としたことが油断しあのようなモンスターの寄生を許してしまった。あのままでいけばきっとこの森を死に至らしめていたことでしょう』
どことなく悲壮感を漂わせつつロードスが語った。それほどまでに危険な状況だったのか、と改めてロードスを助けられたことに安堵する一行であった。
『本当に感謝しております。あなた方の活躍でこの森とエルフの民は救われました』
と、ロードスは改めて感謝の気持ちを述べた。
「そう言って頂けると俺たちも動いた甲斐があるというものだ。しかし失礼でなければ聞かせて欲しい。一体なぜ貴方ほどの御方がモンスターに寄生されるようなことになったのか」
そうキングが改めて問いかけた。
『それについてですが――』
「やれやれ。折角苦労して寄生させたというのに何で戻って――やがる!」
すると突如異質な声が割り込み、激しい爆発が発生した。突然のことに驚く一行であったが、皆無事であった。
どうやら、ロードスが素早く障壁を展開させたらしく、それで助かったようだ。
『この気配――貴方ですね。私にモンスターを寄生させたのは』
爆発が収まり、ロードスの声が全員の脳内に届くと、キングを含めた全員が身構えた――
先程まで禍々しい姿に変わり果てていたロードスであったが異様な形に捻れていた枝が、絡んだ糸を解すように元に戻っていき、活力が漲っていく。徐々に、張りのある美しい姿が取り戻されていったのだ。
その様子を見つめるウィンと長老の顔には、安堵の表情が浮かんでいた。ついに、寄生モンスターを倒すことができたのだ。
「やったわ! これってつまり、寄生モンスターを倒したってことよね?」
そうウィンが喜びを込めて尋ねた。
「うむ、その通りだ。見るがいい、御神木も元の神々しい姿に戻ってきておるぞ」
と長老が深く頷き、恍惚とした表情で御神木を見つめた。
「これで、里のエルフ達も安心できるだろう。長い間、この地に住んでいる私たちにとって、御神木は大切な存在だ。寄生モンスターに侵されてしまうなんて、考えられなかった」
感慨深そうに長老が語った。そして、寄生モンスターを倒す上で一番の功労者とも言えるキングに顔を向け言葉を続ける。
「ロードス様が救われたのもボール様のお力は勿論のこと、キング殿の協力があったことこそ、大きな意味を持っていると思います。本当に感謝しています」
と長老は深く頭を下げたのだった。
「俺の力だけではないさ。一人でやっても何も成し遂げられなかったことだろう。ボールも、ウィンも、ハスラーも、アドレスも、みんながいてくれたから、俺は自信を持って戦うことができたんだ」」
キングは長老に向かってそう語りかけた。その言葉に、仲間たちはうなずき、微笑み返した。
「何か改めてキングにそう言われると、照れるな」
とハスラーが言った。
「でも、本当にそうだよな。俺たちのチームワークが勝利につながったんだ」
それを聞きアドレスもうなずきながら微笑んだ。
「そうだよね。お互いを信じ合って戦うことができたから、ロードス様を解放出来たんだと思う」
仲間たちとの絆を再確認しながら、キングたちはその場に立っていた。長老も、感謝の気持ちで一杯だったことだろう。
『――私を救ってくださったのは、そなたたちであったのか?』
突然、彼らの脳裏に声が響き渡った。キングたちは一瞬驚き、しかし、その声がロードスのものであることにすぐに気づいた。
「ロードス様! ご無事で何よりです!」
長老が手を合わせ、御神木の回復を喜んだ。
「この声、私も初めて聞いたわ」
「ウィンも知らなかったのか?」
ハスラーがウィンに尋ねた。エルフの里で生まれ育ったウィンでも、ロードスの声を聞いたことがないというのが意外であった。
「そうよ。長老でさえ滅多に聞くことができないそうだから、私たちは特別な経験をしたことになるわね」
ウィンが右手を軽く振り上げ、キングはうなずきながらロードスに目を向けた。
「エルフの里の御神木の声だなんて教会でも聞いたことがあるかどうか」
アドレスがポカンとした顔で言った。ロードスとはそれほどまでに珍しい存在なのだろう。
『私はあなた方に感謝をしなければなりませんね。私としたことが油断しあのようなモンスターの寄生を許してしまった。あのままでいけばきっとこの森を死に至らしめていたことでしょう』
どことなく悲壮感を漂わせつつロードスが語った。それほどまでに危険な状況だったのか、と改めてロードスを助けられたことに安堵する一行であった。
『本当に感謝しております。あなた方の活躍でこの森とエルフの民は救われました』
と、ロードスは改めて感謝の気持ちを述べた。
「そう言って頂けると俺たちも動いた甲斐があるというものだ。しかし失礼でなければ聞かせて欲しい。一体なぜ貴方ほどの御方がモンスターに寄生されるようなことになったのか」
そうキングが改めて問いかけた。
『それについてですが――』
「やれやれ。折角苦労して寄生させたというのに何で戻って――やがる!」
すると突如異質な声が割り込み、激しい爆発が発生した。突然のことに驚く一行であったが、皆無事であった。
どうやら、ロードスが素早く障壁を展開させたらしく、それで助かったようだ。
『この気配――貴方ですね。私にモンスターを寄生させたのは』
爆発が収まり、ロードスの声が全員の脳内に届くと、キングを含めた全員が身構えた――
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