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第2章 球技を扱う冒険者編

第76話 ボールの正体?

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 キングはウィンたちとエルフの里までやってきたが長老からは歓迎されたなかった。

 キングも弱った顔を見せるが――

「ろくに話も聞かないで何よ! 本当に変わってないわね!」
「黙れお前は里から出て行けと言っておいただろう! それがこんな見知らぬ人間を里に入れおって。何だ? わしへの当てつけのつもりか?」
 
 ウィンと長老の口論が始まった。キングも困り顔を見せている。

「どうせ人里に向かうも使い物にならないと追い出されたのだろう。それでおめおめ戻ってきたのだろうが今更貴様の居場所などこの里にはないぞ! しかも人も一緒など仕返しのために迷惑を掛けてやろうとでも思ったか1」
「おいおいちょっと待ってくれよ過去に何があったか知らないがそこまで言うかよ?」
「そうです。確かに私たちも付いてはきましたが迷惑を掛けるつもりなんてないのです。話ぐらい聞いてくれても……」

 けんもほろろなようすの長老にハスラーとアドレスが口を挟んだ。

「よそ者には黙っていて貰いたいものだな」
「その、可能なら話だけでも聞いて頂けないだろうか? これはウィンにとっても大事なことなんだ。精霊の操作もより向上するかもしれない」

 嫌悪感を示す長老にキングに向けてキングが説明した。すると長老がジロッとキングを睨めつける。

 だがその瞬間視線が肩に乗っているボールに向けられた。

「キュッ! キュ~! キュー!」

 見られたボールは抗議するように飛び跳ねながら荒々しく鳴いていたが――

「ま、まさかこのスライムは――使徒様!?」

 キングの肩でプルプル震えているボールを目にし長老が仰天しボールの側に近づいてきた。

 ローブのポケットから片眼鏡を取り出しジロジロとボールを観察し始める。

「その、ボールが何かあったのかな?」
「ボール……まさか使徒様にそのような名前をつけているというのか貴様は! 大体何故使徒様が人間などに――」
「キュ~~~~!」

 長老がクワッと険しい目でキングを睨みつけ詰問してきた。途端にボールの頭から煙が吹き出し地面を跳ねながら長老に体当りしていく。

「な、お、落ち着きください使徒様!」
「キュッ! キュ~!」

 長老が慌ててボールを止めようとするがボールの怒りが収まる様子はない。

「落ち着けボール。長老にも何か事情があるかもしれない」
「キュッ――キュ~」

 キングが飛び回るボールを掴み優しくなでながら宥めた。

 キングに諭されたことでボールも少しずつ落ち着きを取り戻したようだが長老は戸惑っている。

「何故だ。何故……」
「そんなの決まってるでしょう。ボールとキングは仲良しで深い絆で結ばれてもいるのよ。戦闘でも最高のコンビで活躍してきたんだから」

 ぶつぶつと疑問を呟く長老にウィンが言い放った。この中ではキングやボールと一番付き合いの長いウィンだからこそ説得力も生まれる。

「むぅ戦闘で――やはり伝説の通りこの世界が乱れた時、救世球として降臨されたか」

 長老は改めてボールを見て何かを悟ったように口にした。

「いや救世球ってなんだそれ?」
「救世主ではないのですね……」

 ハスラーとアドレスはボールの扱いに苦笑した。確かに見た目は球体だが伝説の球みたいに扱われていることが意外に思ったのだろう。

「俺はボールとの出会いで人生が変わった。ボールは今の俺にとって最高のパートナーだがこれまでボールの素性については詳しくなかった。が、そこまでの存在なのか?」
「当然であろう。お前は知らないかもしれないがこの世界もその形は球状だとされている。そしてこの珠のような世界を統べる存在それこそが精大球神様!」

 天を仰ぎ長老がキングの問いかけに答えた。

「そして精大球神の使徒こそが青き球のようなスライムであると伝説には残っておる。そうまさに今ここにおられるおスライム様のように!」
「おスライム様って……」
「呼び方が可愛くないわね」
「何を言う! 貴様らの呼び方のほうがよっぽど無礼であろうが!」

 呆れ顔のハスラーとウィンに対し長老は納得の行かない顔で怒鳴りつけた。

「キュ……」
「えっと、ボールちゃんもそっちの呼び方は気に入らないみたいですが……」
「なんと!」
「俺もやはりボールの方がしっくりくるな」
「キュッキュ~♪」

 アドレスがボールの反応を見ながら感想を伝えると長老が戦いた。

 キングもボールを撫でながら名前で呼びかけるとボールは嬉しそうにキングの胸員体を擦り寄せた。

 長老がうめき声を上げ不可解そうな顔を見せるが、やはりボールはキングのつけた名前で呼ばれる方が気にいっているということなのだろう――
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