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第2章 球技を扱う冒険者編

第66話 オーガスタの正体

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「しかし驚きましたよ。この連中に聞いた限りでは無能な治療術師だという話でしたからねぇ」

 額に指を添えながら語るのはアドレスが追放された後に、ダフ達のパーティーに入ったオーガスタであった。

 そして彼の周囲にいるアドレスの元仲間達の様相は明らかに変化していた。血の気が感じられず他のアンデッドと同じく呻き声を上げ続けている。

「ま、まさか皆アンデッドに――」

 青ざめた顔でアドレスが呟く。追放した相手ではあるが、それでも元仲間だ。元々心優しい少女でもあり憂いを抱くのも無理がないだろう。

「……どういうことだ? 何故貴様だけ平気でいる」

 キングがオーガスタに問いかけた。表情の険しさから大体予想はついていそうだが、念の為といったところなのだろう。

「フフフッ、それは当然、ここにいるアンデッドが全て私の作品だからですよ」

 両手を広げ得意げに語る。愉悦に浸るその表情からは狂気じみた物も感じられた。

「アンデッドが作品――つまり貴方が? で、ですが貴方は神官ではありませんか! 寧ろアンデッドを浄化させ魂を天に導く存在!」

 アドレスがキッと眉を引き締めて言い放つ。治療術師でもある彼女も似たような力を持つ。故にオーガスタの言動が理解出来なかったのだろう。

「やれやれ貴方は随分と察しが悪いですねぇ。それとも知らないのですか? 世の中には聖と命を司る神官もいれば闇と死を司る神官もいることを?」

 オーガスタが語るとアドレスが愕然となる。

「ま、まさか闇神官――」
「ご明察。そして私の作品を倒したあなた達に大変興味がわきました。光栄に思いなさい。今すぐ貴方達も殺しアンデッドにして差し上げましょう! さぁ行きなさい!」

 オーガスタが命じるとアドレスの仲間達が一斉に掛かってきた。

「くっ、嫌な奴らとは言えアドレスの元仲間となるとやりにくい」
猛虎蹴弾ディーガーシュート!」
「「「イギャァアァアアアアアッ!」」」
「「「えぇええぇええぇえええぇえええぇえ!?」」」

 少しためらうウィンだったがキングは存外容赦がなかった。サッカーボールに変えたボールをシュートし虎になったボールがアドレスの元仲間を容赦なくふっとばしたのである。

「キングあんたやっぱすげぇな! 思い切りがいい!」
「うん? 何がだ?」

 ハスラーがキングを称えるが本人はキョトン顔だ。

「いや、何がって一応アドレスの元仲間よね?」
「そうだ。だからこそあんな姿にしておくのは忍びないだろう。アドレスも奴らから辛い目に合わされただろうが――元仲間だからこそ成仏させてやったらどうだ?」

 キングがアドレスを振り返り語りかける。キングの必殺シュートで吹っ飛びこそしたがアンデッドは何れ蘇生するだろう。

 アンデッドを完全に浄化させられるのは今はアドレスだけなのである。

「キング――わかりました。私、やります! はぁああぁああぁ! ホーリー・イン・ワンショット!!」

 アドレスのショットで光の帯が伸び倒れた元仲間を飲み込んだ。死体はあっという間に灰燼に帰し消滅する。

「やったわねアドレス!」
「あぁこれであらかたアンデッドは片付いたぜ」
「そういうことだ。残りは貴様だけだなオーガスタ。お前は闇神官らしいがアンデッドでないのなら俺達の攻撃も通じる。そしてお前を倒せばそれで終わりだ」

 ボールを抱えながらキングが言い放つ。確かに既に動いているアンデッドはいない。まだ浄化されていないアンデッドもいるが倒れたまままだ蘇生が完了していない。

 しかしアンデッドを生み出したのがオーガスタであるなら、術者である彼さえ倒してしまえばアンデッドは現世に存在出来ない。

「くくっ、あ~はっはっはっは!」

 するとオーガスタが頭を押さえ声を上げ笑う。

「何だ? ヤケにでもなったか?」

 ハスラーが眉を顰めて言う。だがオーガスタは不敵な笑みを浮かべ更に言葉を続ける。

「ククッなるほどなるほど。確かに大したものだ。だがねぇこれで勝ったと思っているのなら甘いのだよ。集い合わせそして固まれ――吾が闇の祈りに答えよ!」

 オーガスタが詠唱するとまだ浄化されずにいたアンデッドが宙に浮き一箇所に集まっていった。

 その形がどんどんと変わっていきついには腐臭のする巨大な怪物が出来上がった。

「これはまさかフレッシュゴーレム!」

 アドレスが叫ぶ。そうそれは死体が集まって出来たゴーレムであった――
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