異世界球技無双~最強すぎる必殺シュートで伝説のドラゴンや魔王も全てふっ飛ばす!~

空地大乃

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第2章 球技を扱う冒険者編

第33話 厳しい言葉

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 一方受付のカウンターではウィンがダーテから手厳しい言葉を浴びせられ続けていた。勿論、それもウィンが撒いた種ではあるのだが、ただどうにもウィンの口調がいつもより厳しくて怖いと見聞きしている受付嬢も囁き始めていたわけだが。

「とにかく、これ以上失敗が続くようならランクはF級までまた下がることになりますよ。折角苦労してE級になったのにそれでは意味がないですよね?」
「わ、わかってるわよ。もう、失敗しないわ……」
「……あのねウィン。あまり冒険者のやり方に口を出すつもりはないのだけど……貴方はもう魔法はやめた方がいいんじゃないかな?」
「え? ど、どういう意味よ!」
「……貴方だってもうわかっているのでしょう? 失敗の原因は全て貴方の魔法が原因なわけだし……だから無理して魔法に頼るのは止めたほうがいいと思うの。人にはね得手不得手があるわ。幸いエルフなら弓という手もあるのだし……」

 諭すようにダーテが言うが、それを聞いた途端ウィンの表情に変化が表れ。

「冗談じゃないわ! 何勝手に決めているのよ! エルフだから弓も得意だろうからそれでやれですって? 私は物心ついてからずっと魔法で生きていくって決めているのよ!」
「……でも実際」
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさーーーーい! もういいわよ! だったらF級にでもなんでも落とせばいいでしょ! 冗談じゃないわ。私は、私は絶対魔法を諦めるつもりなんてないんだからね! ば~かば~か!」
「ちょ、ウィン!」

 結局ウィンはダーテにそんな子どものような捨て台詞を残してギルドから飛び出していってしまった。

「そんな……あんなにムキになるなんて――」

 そして後に残されたダーテは眉を落とし項垂れた。呵責が内心に尾を引く思いだったことだろう。少し言い過ぎたかもしれない、と後悔している様子も感じられた。

「今出ていったのはウィンか? 何かあったのかな?」

 すると、キングが解体所から戻ってきて疑問の声を上げた。ダーテは戻ってきたキングを見て更に表情を曇らせた。

「私、少し言い過ぎたみたいで……」
「言い過ぎた?」
「はい、実は――」
 
 ダーテは今のやり取りを包み隠さずキングに聞いてもらった。キングは真剣に耳を傾け。

「なるほど……確かに彼女は魔法の制御が得意ではないようだったな――ただ威力に関してはどれも大したものだった」
「キュッ~」

 キングはウィンの魔法を思い出すようにしながら語ってみせた。ボールもそこは同意なようだ。

「はい。実際ウィンの内包する魔力は凄いんです。エルフは元々人よりも魔力が高いのですが、その中でもウィンは際立っているようなので」
「ほう――」

 ダーテの話を興味深く聞くキング。実はこの時キングの中にある話が思い浮かんでいた。

「ただ、それだけに魔法の暴発は死活問題なんです。今の所は人への危害は出ていませんが、なまじ威力が高いだけに今後その可能性が無いとは言い切れなくて、だからつい強く言ってしまって……」

 ダーテが伏し目がちに語る。彼女が心配になる気持ちもキングにはよくわかった。何せついさっきお婆ちゃん相手にかけようとした魔法には、その危険が十分にあったのだから。

「それにしても魔力が高いのに制御が出来ないってどういうことなんでしょうね? 普通は魔法が得意になりそうなんだけど……」
「逆だよ。魔力が高いからこそ制御が難しいんだ」

 二人の会話にレナが割り込み、かと思えばいつの間にか下りてきていたギルドマスターのマラドナも話に加わってきた。

「どういうことですか?」
「文字通りの意味だ。たしかあのエルフ娘は生まれつき魔力が高いんだったよな?」
「そう聞いてますね」
「それが問題を生むこともある。魔力が生まれつき高いってのはエルフだけじゃなく人間にも時折ある現象だ。普通魔力が高ければ喜ばれるが、それが思いがけない不都合を生むこともある」

 マラドナは腕を組み更に話を続けた。

「魔力が生まれつき高いってのは結局魔力の扱いに慣れてない内から手に余る魔力と過ごすことになる。それでも自然と慣れるのもいるが、中にはそのまま慣れること無く成長してしまうのもいる。そうなった場合、そうだな例えて言えば水圧と蛇口の関係に近いことになる」
「水圧に、蛇口ですか?」
「そうだ。蛇口を捻れば水が出る。これは今となっては当然の知識だ」
「異世界から入った技術ですね。蛇口を捻る大きさで出てくる水の量も変わる。素晴らしい技術です」
「たしかにな。だが水圧が異様に高い状態で蛇口を捻った場合、少ししか捻って無くても水が勢いよく飛び出してきちまう。これがつまり魔力だ。本人がいくら制御している気になっても思わぬ力が発揮され暴走するってわけだ」

 マラドナがそこまで語ると、あぁなるほど、とレナが頷き。

「でも、それなら途中でバルブをつければいいじゃ
ないですか?」

 などと言った。マラドナは呆れ顔を見せ。

「お前な、エルフのどこにバルブを付けるんだよ?」
「え? あ、そっか」
「ふむ、バルブか……」
「キュ~?」

 テヘッ、と自分の頭を軽く小突くレナだったが、キングは一人呟き何かを考えている様子だった。

「マスター、それはなんとかならないのですか?」
「まぁ難しいだろうな。制御できないまま成長すると一生引きずるのさ。だからダーテの言ってることは間違いではない。大事になる前に魔法は止めさせたほうが賢明だろう」
「だが、本人は納得言ってないようだし、手があるならなんとかしてみたいところだな」
「おおキング。そういえばお前、大活躍だな。全くF級の仕事でB級規模の事件を解決するとは思わなかったぜ」
「はは、たまたまだけどな」
「まぁそれでも評価には繋がる。全くお前を復帰させて大正解だったようだな。と、それはそれとしてだ、ウィンのことなら正直難しいと思うぞ?」
「うむ、だが今の話で思い当たる事があってな。もしかしたら俺の知識が役立つかもしれない。とにかく、その件、俺に任せてもらってもいいかな?」
「お前もお人好しなやつだな。まぁでもこのまま放ってもおけないし、何か考えがあるなら頼むぜ」

 うむ、と頷くキングを認めた後、マラドナは部屋に戻っていった。

「それではキングさん、これが今回の報酬となる金貨10枚です」
「こんなにもか、驚いたな……」
「キュッキュ~♪」

 一旦話が落ち着き、そこで今回の報酬を受け取るキングである。

 キングが請けた依頼は本来なら三つ合わせて銀貨10枚程度のものだった。それが金貨10枚、一気に百倍である。

「キングさんの活躍を考えれば当然ね。でも、ウィンのことは本当に任せても?」
「あぁ、絶対に大丈夫とは保証できないが、まぁやってみるさ。それじゃあ、ちょっと探しに行ってくるよ」
「キュッキュッキュ~」

 そしてボールがキングの肩に乗り、キングとギルドを後にするのだった――
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