四天王最弱と馬鹿にされ続けた俺が現代日本でダンジョンを喰いまくりレベルを上げまくっていたらいつのまにか日本を救ってました

空地大乃

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第9話 凶暴な蝙蝠

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「そんな蝙蝠がこんな凶暴なんて――」
 
 杉戸が苦悶の表情を浮かべながら呟いた。肩がズキズキと痛み出血も酷い。持っていたタブレット端末も落としてしまった。反射的に虫かごも下ろし遠ざけてしまう。

 中のカブトムシが心配だったからだろう。

 傷は決して浅くはなく泣きそうになるが蝙蝠は泣こうが喚こうが許してはくれないだろう。

「キィ! キィ!」

 空中からまるで嘲笑うが如く鳴き声を上げ杉戸を俯瞰する蝙蝠。飛膜をバッサバッサとはためかせ鋭利な爪と牙を光らせる。

 このままじゃ不味いと直感した杉戸はこの状況をどう打破するか脳をフル回転させた。これまでに読んだ図鑑の内容が想起されていく。

「そういえば――」

 ふと思い出した内容。左手の指を動かしてみる。動いた。どうやら傷は神経までは達してなかったようだ。

 かなり痛むが――杉戸はポケットに手を入れ小瓶を取り出した。

「キシャァアァアア!」

 再び蝙蝠が杉戸に向けて強襲してくる。急がないと! と杉戸は右手で瓶の蓋を開け向かってきた蝙蝠に向けて中身をぶち撒けた。

 入っていたハッカ油が蝙蝠の顔面に掛かる。途端に蝙蝠の鳴き声が変化し軌道も逸れた。

「ギィイィイイィイィイイイッ!?」

 苦しげな鳴き声を上げ蝙蝠がそのまま奥の樹木に衝突。更にパニックに陥ったのか滅茶苦茶に飛び回り立ち並ぶ木に追突していった。

「よ、良かった。ハッカ油を持っていて……」

 血の気が失せた顔で杉戸が呟く。元々は虫除けに持ってきていたハッカ油だったが、蝙蝠にも効くと何かで読んだのを思い出したのだ。

 だがしかし、蝙蝠もただやられて終わりではなかった。暴れまわった蝙蝠は地面に落下しかと思えば杉戸に顔を向けた。

「痛ッ!?」
 
 途端に頭痛と吐き気に襲われる。耳鳴りも酷い。不味いと杉戸は頭を押さえつつ本能的に落ちていたタブレット端末に飛びつき画面を蝙蝠に向けた。

「――ッ!?」

 途端に今度は蝙蝠が地面をのたうち回った。杉戸は本能的に蝙蝠が超音波を放ってきたと判断した。
 
 だからこそタブレット端末を拾い蝙蝠に向けた。端末の画面は鏡面仕様でもあり超音波を反射出来る。

 杉戸にとってラッキーだったのは、親がプレゼントしてくれたタブレット端末が頑丈なタイプだったことだ。

 親としては、子どもがうっかり落としても画面が壊れたりしないようにと選んだものだったが、それが幸いした。

 襲ってきた蝙蝠は明らかにただの蝙蝠ではなく超音波も普通の蝙蝠が扱うソレとはことなっていた。もしこれがただの手鏡などだった場合、鏡面は超音波に耐えられなかった事だろう。

「悪いけど、放ってはおけないから――」

 杉戸はふらつく足で何とか近づき近くに落ちていた石を拾った。杉戸が両手で何とか抱えられる程の石だ。それを蝙蝠に向けて精一杯の力で叩きつける。

「ギィ!?」

 最期の泣き声を上げ、かと思えば蝙蝠が粒子状になって消え去った。

「え? どう、して?」

 痛む肩を押さえながら杉戸は疑問の声を上げた。当たり前だが、これまで暮らしてきて死んだ生き物が粒子になって消えるなんて現象は見たことがない。

――貴方はレベルアップしました。
――レベルアップに伴いステータスが付与されます。
――ステータスに合わせ肉体が再構築されます。
――【ナビ】発動。
――ステータスと発することでステータスの確認が可能となります。

「え? 何この声? え? 嘘、怪我が――」

 脳内に直接語りかけてくるような声に杉戸は戸惑っていた。しかも声がした直後には蝙蝠にやられた筈の怪我もすっかり治っていたのである――
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