9 / 11
第9話 凶暴な蝙蝠
しおりを挟む
「そんな蝙蝠がこんな凶暴なんて――」
杉戸が苦悶の表情を浮かべながら呟いた。肩がズキズキと痛み出血も酷い。持っていたタブレット端末も落としてしまった。反射的に虫かごも下ろし遠ざけてしまう。
中のカブトムシが心配だったからだろう。
傷は決して浅くはなく泣きそうになるが蝙蝠は泣こうが喚こうが許してはくれないだろう。
「キィ! キィ!」
空中からまるで嘲笑うが如く鳴き声を上げ杉戸を俯瞰する蝙蝠。飛膜をバッサバッサとはためかせ鋭利な爪と牙を光らせる。
このままじゃ不味いと直感した杉戸はこの状況をどう打破するか脳をフル回転させた。これまでに読んだ図鑑の内容が想起されていく。
「そういえば――」
ふと思い出した内容。左手の指を動かしてみる。動いた。どうやら傷は神経までは達してなかったようだ。
かなり痛むが――杉戸はポケットに手を入れ小瓶を取り出した。
「キシャァアァアア!」
再び蝙蝠が杉戸に向けて強襲してくる。急がないと! と杉戸は右手で瓶の蓋を開け向かってきた蝙蝠に向けて中身をぶち撒けた。
入っていたハッカ油が蝙蝠の顔面に掛かる。途端に蝙蝠の鳴き声が変化し軌道も逸れた。
「ギィイィイイィイィイイイッ!?」
苦しげな鳴き声を上げ蝙蝠がそのまま奥の樹木に衝突。更にパニックに陥ったのか滅茶苦茶に飛び回り立ち並ぶ木に追突していった。
「よ、良かった。ハッカ油を持っていて……」
血の気が失せた顔で杉戸が呟く。元々は虫除けに持ってきていたハッカ油だったが、蝙蝠にも効くと何かで読んだのを思い出したのだ。
だがしかし、蝙蝠もただやられて終わりではなかった。暴れまわった蝙蝠は地面に落下しかと思えば杉戸に顔を向けた。
「痛ッ!?」
途端に頭痛と吐き気に襲われる。耳鳴りも酷い。不味いと杉戸は頭を押さえつつ本能的に落ちていたタブレット端末に飛びつき画面を蝙蝠に向けた。
「――ッ!?」
途端に今度は蝙蝠が地面をのたうち回った。杉戸は本能的に蝙蝠が超音波を放ってきたと判断した。
だからこそタブレット端末を拾い蝙蝠に向けた。端末の画面は鏡面仕様でもあり超音波を反射出来る。
杉戸にとってラッキーだったのは、親がプレゼントしてくれたタブレット端末が頑丈なタイプだったことだ。
親としては、子どもがうっかり落としても画面が壊れたりしないようにと選んだものだったが、それが幸いした。
襲ってきた蝙蝠は明らかにただの蝙蝠ではなく超音波も普通の蝙蝠が扱うソレとはことなっていた。もしこれがただの手鏡などだった場合、鏡面は超音波に耐えられなかった事だろう。
「悪いけど、放ってはおけないから――」
杉戸はふらつく足で何とか近づき近くに落ちていた石を拾った。杉戸が両手で何とか抱えられる程の石だ。それを蝙蝠に向けて精一杯の力で叩きつける。
「ギィ!?」
最期の泣き声を上げ、かと思えば蝙蝠が粒子状になって消え去った。
「え? どう、して?」
痛む肩を押さえながら杉戸は疑問の声を上げた。当たり前だが、これまで暮らしてきて死んだ生き物が粒子になって消えるなんて現象は見たことがない。
――貴方はレベルアップしました。
――レベルアップに伴いステータスが付与されます。
――ステータスに合わせ肉体が再構築されます。
――【ナビ】発動。
――ステータスと発することでステータスの確認が可能となります。
「え? 何この声? え? 嘘、怪我が――」
脳内に直接語りかけてくるような声に杉戸は戸惑っていた。しかも声がした直後には蝙蝠にやられた筈の怪我もすっかり治っていたのである――
杉戸が苦悶の表情を浮かべながら呟いた。肩がズキズキと痛み出血も酷い。持っていたタブレット端末も落としてしまった。反射的に虫かごも下ろし遠ざけてしまう。
中のカブトムシが心配だったからだろう。
傷は決して浅くはなく泣きそうになるが蝙蝠は泣こうが喚こうが許してはくれないだろう。
「キィ! キィ!」
空中からまるで嘲笑うが如く鳴き声を上げ杉戸を俯瞰する蝙蝠。飛膜をバッサバッサとはためかせ鋭利な爪と牙を光らせる。
このままじゃ不味いと直感した杉戸はこの状況をどう打破するか脳をフル回転させた。これまでに読んだ図鑑の内容が想起されていく。
「そういえば――」
ふと思い出した内容。左手の指を動かしてみる。動いた。どうやら傷は神経までは達してなかったようだ。
かなり痛むが――杉戸はポケットに手を入れ小瓶を取り出した。
「キシャァアァアア!」
再び蝙蝠が杉戸に向けて強襲してくる。急がないと! と杉戸は右手で瓶の蓋を開け向かってきた蝙蝠に向けて中身をぶち撒けた。
入っていたハッカ油が蝙蝠の顔面に掛かる。途端に蝙蝠の鳴き声が変化し軌道も逸れた。
「ギィイィイイィイィイイイッ!?」
苦しげな鳴き声を上げ蝙蝠がそのまま奥の樹木に衝突。更にパニックに陥ったのか滅茶苦茶に飛び回り立ち並ぶ木に追突していった。
「よ、良かった。ハッカ油を持っていて……」
血の気が失せた顔で杉戸が呟く。元々は虫除けに持ってきていたハッカ油だったが、蝙蝠にも効くと何かで読んだのを思い出したのだ。
だがしかし、蝙蝠もただやられて終わりではなかった。暴れまわった蝙蝠は地面に落下しかと思えば杉戸に顔を向けた。
「痛ッ!?」
途端に頭痛と吐き気に襲われる。耳鳴りも酷い。不味いと杉戸は頭を押さえつつ本能的に落ちていたタブレット端末に飛びつき画面を蝙蝠に向けた。
「――ッ!?」
途端に今度は蝙蝠が地面をのたうち回った。杉戸は本能的に蝙蝠が超音波を放ってきたと判断した。
だからこそタブレット端末を拾い蝙蝠に向けた。端末の画面は鏡面仕様でもあり超音波を反射出来る。
杉戸にとってラッキーだったのは、親がプレゼントしてくれたタブレット端末が頑丈なタイプだったことだ。
親としては、子どもがうっかり落としても画面が壊れたりしないようにと選んだものだったが、それが幸いした。
襲ってきた蝙蝠は明らかにただの蝙蝠ではなく超音波も普通の蝙蝠が扱うソレとはことなっていた。もしこれがただの手鏡などだった場合、鏡面は超音波に耐えられなかった事だろう。
「悪いけど、放ってはおけないから――」
杉戸はふらつく足で何とか近づき近くに落ちていた石を拾った。杉戸が両手で何とか抱えられる程の石だ。それを蝙蝠に向けて精一杯の力で叩きつける。
「ギィ!?」
最期の泣き声を上げ、かと思えば蝙蝠が粒子状になって消え去った。
「え? どう、して?」
痛む肩を押さえながら杉戸は疑問の声を上げた。当たり前だが、これまで暮らしてきて死んだ生き物が粒子になって消えるなんて現象は見たことがない。
――貴方はレベルアップしました。
――レベルアップに伴いステータスが付与されます。
――ステータスに合わせ肉体が再構築されます。
――【ナビ】発動。
――ステータスと発することでステータスの確認が可能となります。
「え? 何この声? え? 嘘、怪我が――」
脳内に直接語りかけてくるような声に杉戸は戸惑っていた。しかも声がした直後には蝙蝠にやられた筈の怪我もすっかり治っていたのである――
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる