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大学生編
72. 夏の計画
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7月1日。この日、GEMSTONEからある発表がされた。
12月1日に、buddyのメンバー全員の名前、顔をすべて公表するとともに、メディア出演を解禁するというものだった。
その情報は、ファンクラブの公式サイトをはじめ、動画配信サービス、SNSを通じてテレビなどのマスコミなどで大きく報道され、瞬く間に広がっていった。そして2週間後には、第3弾の重大発表があると告知し、ファンのみならず、若者を中心とする世代の関心を一気に集めた。
buddyに興味があるのは、同業者であるアーティストや、芸能界の関係者も同様だった。
「ここまで隠しておいたのに、いまさら出してくるなんて」
「どうせ大したことない奴らだろ」
「いま騒いでいるだけで、そのうち飽きるだろ」
など、心無いものもあれば、
「どんな人たちか楽しみ」
「共演したい」
など、歓迎するものまで、様々な反応があった。
その発表を受けて、GEMSTONEにはbuddyへの仕事が一気に入ってきた。
音楽番組を始め、バラエティーやCMなど数多くのオファーがあり、元木はその一つ一つを吟味し、受けるもの、受けないものを選択していった。
今日はレッスン日。
6人はダンスレッスンを終え、次のボイトレが始まるまで休憩していた。
パシャッ、パシャッ
6人は休憩中、水を飲みながらレッスン室の床に座り込んで、みんなでくだらない話をしていることが多いのだが、今日はいつもと様子が違う。
パシャッ、パシャッ
6人が集まっている場所よりも少し離れたところに、カメラマンとその助手がおり、ひたすら6人を撮り続けている。
しかも、休憩中だけではなく、レッスン中からずっと撮られている。
「なんか.....慣れてなくて、居心地が悪すぎる」
「盗撮?ではないけど、ちょっとね......」
隼斗と明日香が苦笑いをする。
このカメラマンは、12月1日に最新曲と一緒に発売される、buddyの素顔を撮った写真集のために撮影をしている、決して盗撮ではない。
「buddyのみなさん、表情が硬いですよ。もっと自然体で、普段通りにお願いしまーす」
と言われても、撮られてるのをわかっているのに、自然体なんかムリムリ!と、全員思っていた。
するとそこに、元木が入ってきた。
「あ、みんなお疲れさま。休憩中だけど、ちょっといいかな?」
常に笑顔の元木だが、今日はいつにも増して楽しげだった。
「なにかありましたか?」
僚が尋ねると、元木がフッフッフッと笑い、
「8月5日から11日まで、沖縄に行くぞ‼」
と大きな声で言うが、6人の頭の上には???が並んでいた。
「元木さん、旅行にでも行くの?」
「なんだよ自慢か?」
「え....わざわざ自慢したくて来たの?」
「そうだよー。わたしたちは夏休みに入ったらレッスン漬けになるのにぃ」
ブーブー文句を言う6人に元木が、
「違うよっ!僕も行くけど、君たちも行くのっ!いまやっている写真集の撮影と、プロモーションビデオの撮影だよ。あと、最後の3日間は自由行動していいよ。事務所からのプレゼントだ。ただし、ハメを外さないようにな」
そう説明された瞬間、6人は大きな声で喜んだ。
「え⁉ほんと⁉」
「やったー‼沖縄‼」
「初めて行くよー!明日香どうする?どうする?」
「ど、ど、どうしよう....?」
「久しぶりに焼けるな」
「でたよ、誠の天然日サロ」
など、思い思いに喜ぶ。もちろん、その様子もカメラマンにしっかり撮られていた。
そんな中、僚が少し冷静になって元木に質問する。
「元木さん、最後の3日間って、どうしたらいいんですか?例えば宿泊先はどうするとか......」
「ああ、別に、事務所で用意してもいいけど、お前たちがどこに行きたいかだよな。自分たちで予約するならそれでもいいけど、ただ、夏の沖縄は人気だからな。早めに取らないとダメだぞ」
それを聞いて頭に浮かんだのは、美里を、芽衣を、木南を、葉月を呼べるかも.....だった。そしてその表情を、元木は見逃さなかった。
「はっはーん.....さてはお前たち、最近妙に色気づいていると思ったら、そういうことか......」
子供の頃から知っている元木には、隠しても感づかれていたらしい。
「まぁ僕もさ、鬼じゃないから、年頃の君たちに恋愛するなとは言わないよ。そりゃあ、沖縄で3日間1人で寂しく過ごすよりは、恋人を呼んで一緒に過ごしたい気持ちもわかる。そこは目をつぶってあげる。た・だ・し!」
6人は元木の次の言葉を待つ。そして元木は、6人にだけ聞こえるように、小声でひとこと。
「ちゃんと、避妊はするように」
と、言った。
突然出された強烈なワードに、誠以外の5人は唖然とする。
「なんだい?当たり前のことだよ。スキャンダルっていうのもそうだけど、いま決まっている仕事も、全てパーになる可能性だってあるんだ。自分だけじゃなく、自分以外の仲間、事務所のスタッフ、レコード会社やEvan先生、迷惑をかける人を挙げたらキリがないくらい、いま君たちに関わっている人間が多いんだ。それを頭に置いた上で、ちゃんとするようにって言ったんだよ」
6人は至極真っ当なことを言われて、納得する。
そして、言うだけ言って元木はレッスン室を出て行ってしまった。
その日のレッスン終了後、今日元木に言われたことを相談するため、急遽いつもの個室創作ビストロへやってきた。
夕飯をそこで取りつつ、作戦会議だ。
「みんな、それぞれ呼ぶのか?」
僚は、隼斗、深尋、誠、竣亮に尋ねる。
「来れるかどうかわからんけど、声は掛けるよ」
「俺も」
隼斗と、誠は誘うつもりらしい。
「僕は、葉月先輩が大学院の受験を控えているから、邪魔しないでおこうかなって思ってる.....」
「あ、そうか....そうだったな」
竣亮には気の毒な話だったなと、反省した。
「でも、それが終わったら、どこかへ連れて行ってあげようかなって.....」
「.......うん。葉月さんも、きっと喜んでくれるよ」
明日香がうまくフォローしてくれる。本当こういうのが上手いよなと、僚は改めて思った。
「深尋は?木南くん誘うの?」
「うーーーーん.......」
明日香に聞かれて、深尋は悩む。なぜなら、まだ何の進展もないからだ。
それなのに旅行に誘うって、おかしいよねって思ってしまう。
「なに、深尋。木南に何かされたのか?」
僚が心配して聞いてくる。
「ううんっ!何も、ないよ......」
そう、何かされるどころか、何もないのだ。だからこんなに悩んでる。
「深尋、木南くん誘ったら?喜ぶと思うよ」
その明日香の言葉に、深尋は、え?となる。
「だって、好きな子から旅行に誘われて、嬉しくないわけないじゃない」
そういうと明日香は、ねえ?と男4人に同意を求める。
「ん......まぁ、誘われたら嬉しいよな.......」
「そうだな。普通に、深尋が言ったら喜ぶと思うぞ。あいつ重いし」
誠がそういうと、僚と隼斗がしっ!と誠に合図する。
でも、それに深尋は気づいておらず、
「わかった......連絡してみる」
と、木南を誘ってみることにした。
「僚と明日香はどうすんの?」
隼斗に聞かれて、2人で顔を合わす。
「どうすんのって、まだ、なにも決まってないけど......」
「ならさ、2人だけでゆっくりしたらいいじゃん。いつも俺らがいて、2人っきりになることなんてないだろう?」
隼斗がそういうと、竣亮と誠も乗ってくる。
「そうだよ。向こうで思いっきりデートしたらいいんだよ。12月になったら、それも出来なくなるし」
「そうそう。僚の限界も近いみたいだしな」
そういう誠に今度は竣亮まで加わって、しぃーっ!とする。
明日香と深尋は「何してんの?」という顔で、男たちを見ていた。
その日の夜。深尋は家に帰った後、木南に電話を掛ける。
『もしもし、深尋ちゃん。お疲れさま』
「あ、光太郎くん。お疲れさま。いま、大丈夫?」
『うん、大丈夫だよ。どうしたの?』
「実は.....」
それから深尋は、写真集の撮影で沖縄に行くこと、最後の3日間は自由行動だということを説明する。
「それで、もし光太郎くんが良ければ、遊びに来ないかなぁって.....」
『.......深尋ちゃんは、どうしたい?』
「どう、って......」
『僕に来てほしい?』
そこで深尋は言葉に詰まってしまった。自分が誘ってるのに、木南はなんでこんなことを言うんだろうと思ったからだ。
でも、聞かれているからには、答えないといけない。
「わたしは........来てくれたら、うれしい......」
すると、ふふっという木南の笑う声が聞こえてきた。
『わかった。せっかくの深尋ちゃんのお誘いだし、行くよ』
その返事を聞いて、深尋は急にテンションが上がる。
「ホントに⁉来てくれるの⁉」
『うん、行くよ。深尋ちゃんが誘ったんでしょ?』
「そうだけど.....嬉しくて.....」
『そのかわり深尋ちゃん、ちゃんと心の準備はしておくんだよ』
「心の準備?」
『そう。2人だけで旅行するっていうことが、どういうことかわかってるよね?』
木南に言われて、深尋はハッと気づく。
みんな、それぞれ恋人がいて、竣亮以外はその恋人と沖縄で過ごそうとしている。ということは、必然的に自分も木南と2人だけになる。
しかも、ホテルは自分たちで予約するって言ってたし.....ホテルの部屋も、木南と同じ部屋......?
「あ、あ、あのっ....光太郎くん....」
『やっぱり無しは無しだからね?深尋ちゃんが僕を誘ったんだから、ちゃんと最後まで責任を取ってくれなきゃ、ね?』
電話越しでもわかるくらい深尋は動揺し、木南はそれを楽しんでる。
深尋にとっては、写真集撮影どころの話ではなくなってきた。
早く明日香に相談したい。そればっかりが、脳内を駆け巡っていた。
結局、美里はインターン参加のため、芽衣は夏休み明けの実習の準備と、病院へのインターンのため、沖縄に行くことが出来ないという返事だった。
隼斗と誠は、2人が来れないことは残念がっていたが、竣亮を1人にすることにならなかったので、これはこれで良かったと思った。
7月14日。GEMSTONEからbuddyに関する追加情報、第3弾が発表された。
12月1日に最新曲と本人たちが登場するMVの公開、そしてbuddyの素顔やレッスン風景などを載せた写真集の発売を発表した。
それと同時に、デビュー曲からまた注目されるようになり、人々の関心の高さが窺える。
そしていよいよ、沖縄へ行く日がやってきた。
12月1日に、buddyのメンバー全員の名前、顔をすべて公表するとともに、メディア出演を解禁するというものだった。
その情報は、ファンクラブの公式サイトをはじめ、動画配信サービス、SNSを通じてテレビなどのマスコミなどで大きく報道され、瞬く間に広がっていった。そして2週間後には、第3弾の重大発表があると告知し、ファンのみならず、若者を中心とする世代の関心を一気に集めた。
buddyに興味があるのは、同業者であるアーティストや、芸能界の関係者も同様だった。
「ここまで隠しておいたのに、いまさら出してくるなんて」
「どうせ大したことない奴らだろ」
「いま騒いでいるだけで、そのうち飽きるだろ」
など、心無いものもあれば、
「どんな人たちか楽しみ」
「共演したい」
など、歓迎するものまで、様々な反応があった。
その発表を受けて、GEMSTONEにはbuddyへの仕事が一気に入ってきた。
音楽番組を始め、バラエティーやCMなど数多くのオファーがあり、元木はその一つ一つを吟味し、受けるもの、受けないものを選択していった。
今日はレッスン日。
6人はダンスレッスンを終え、次のボイトレが始まるまで休憩していた。
パシャッ、パシャッ
6人は休憩中、水を飲みながらレッスン室の床に座り込んで、みんなでくだらない話をしていることが多いのだが、今日はいつもと様子が違う。
パシャッ、パシャッ
6人が集まっている場所よりも少し離れたところに、カメラマンとその助手がおり、ひたすら6人を撮り続けている。
しかも、休憩中だけではなく、レッスン中からずっと撮られている。
「なんか.....慣れてなくて、居心地が悪すぎる」
「盗撮?ではないけど、ちょっとね......」
隼斗と明日香が苦笑いをする。
このカメラマンは、12月1日に最新曲と一緒に発売される、buddyの素顔を撮った写真集のために撮影をしている、決して盗撮ではない。
「buddyのみなさん、表情が硬いですよ。もっと自然体で、普段通りにお願いしまーす」
と言われても、撮られてるのをわかっているのに、自然体なんかムリムリ!と、全員思っていた。
するとそこに、元木が入ってきた。
「あ、みんなお疲れさま。休憩中だけど、ちょっといいかな?」
常に笑顔の元木だが、今日はいつにも増して楽しげだった。
「なにかありましたか?」
僚が尋ねると、元木がフッフッフッと笑い、
「8月5日から11日まで、沖縄に行くぞ‼」
と大きな声で言うが、6人の頭の上には???が並んでいた。
「元木さん、旅行にでも行くの?」
「なんだよ自慢か?」
「え....わざわざ自慢したくて来たの?」
「そうだよー。わたしたちは夏休みに入ったらレッスン漬けになるのにぃ」
ブーブー文句を言う6人に元木が、
「違うよっ!僕も行くけど、君たちも行くのっ!いまやっている写真集の撮影と、プロモーションビデオの撮影だよ。あと、最後の3日間は自由行動していいよ。事務所からのプレゼントだ。ただし、ハメを外さないようにな」
そう説明された瞬間、6人は大きな声で喜んだ。
「え⁉ほんと⁉」
「やったー‼沖縄‼」
「初めて行くよー!明日香どうする?どうする?」
「ど、ど、どうしよう....?」
「久しぶりに焼けるな」
「でたよ、誠の天然日サロ」
など、思い思いに喜ぶ。もちろん、その様子もカメラマンにしっかり撮られていた。
そんな中、僚が少し冷静になって元木に質問する。
「元木さん、最後の3日間って、どうしたらいいんですか?例えば宿泊先はどうするとか......」
「ああ、別に、事務所で用意してもいいけど、お前たちがどこに行きたいかだよな。自分たちで予約するならそれでもいいけど、ただ、夏の沖縄は人気だからな。早めに取らないとダメだぞ」
それを聞いて頭に浮かんだのは、美里を、芽衣を、木南を、葉月を呼べるかも.....だった。そしてその表情を、元木は見逃さなかった。
「はっはーん.....さてはお前たち、最近妙に色気づいていると思ったら、そういうことか......」
子供の頃から知っている元木には、隠しても感づかれていたらしい。
「まぁ僕もさ、鬼じゃないから、年頃の君たちに恋愛するなとは言わないよ。そりゃあ、沖縄で3日間1人で寂しく過ごすよりは、恋人を呼んで一緒に過ごしたい気持ちもわかる。そこは目をつぶってあげる。た・だ・し!」
6人は元木の次の言葉を待つ。そして元木は、6人にだけ聞こえるように、小声でひとこと。
「ちゃんと、避妊はするように」
と、言った。
突然出された強烈なワードに、誠以外の5人は唖然とする。
「なんだい?当たり前のことだよ。スキャンダルっていうのもそうだけど、いま決まっている仕事も、全てパーになる可能性だってあるんだ。自分だけじゃなく、自分以外の仲間、事務所のスタッフ、レコード会社やEvan先生、迷惑をかける人を挙げたらキリがないくらい、いま君たちに関わっている人間が多いんだ。それを頭に置いた上で、ちゃんとするようにって言ったんだよ」
6人は至極真っ当なことを言われて、納得する。
そして、言うだけ言って元木はレッスン室を出て行ってしまった。
その日のレッスン終了後、今日元木に言われたことを相談するため、急遽いつもの個室創作ビストロへやってきた。
夕飯をそこで取りつつ、作戦会議だ。
「みんな、それぞれ呼ぶのか?」
僚は、隼斗、深尋、誠、竣亮に尋ねる。
「来れるかどうかわからんけど、声は掛けるよ」
「俺も」
隼斗と、誠は誘うつもりらしい。
「僕は、葉月先輩が大学院の受験を控えているから、邪魔しないでおこうかなって思ってる.....」
「あ、そうか....そうだったな」
竣亮には気の毒な話だったなと、反省した。
「でも、それが終わったら、どこかへ連れて行ってあげようかなって.....」
「.......うん。葉月さんも、きっと喜んでくれるよ」
明日香がうまくフォローしてくれる。本当こういうのが上手いよなと、僚は改めて思った。
「深尋は?木南くん誘うの?」
「うーーーーん.......」
明日香に聞かれて、深尋は悩む。なぜなら、まだ何の進展もないからだ。
それなのに旅行に誘うって、おかしいよねって思ってしまう。
「なに、深尋。木南に何かされたのか?」
僚が心配して聞いてくる。
「ううんっ!何も、ないよ......」
そう、何かされるどころか、何もないのだ。だからこんなに悩んでる。
「深尋、木南くん誘ったら?喜ぶと思うよ」
その明日香の言葉に、深尋は、え?となる。
「だって、好きな子から旅行に誘われて、嬉しくないわけないじゃない」
そういうと明日香は、ねえ?と男4人に同意を求める。
「ん......まぁ、誘われたら嬉しいよな.......」
「そうだな。普通に、深尋が言ったら喜ぶと思うぞ。あいつ重いし」
誠がそういうと、僚と隼斗がしっ!と誠に合図する。
でも、それに深尋は気づいておらず、
「わかった......連絡してみる」
と、木南を誘ってみることにした。
「僚と明日香はどうすんの?」
隼斗に聞かれて、2人で顔を合わす。
「どうすんのって、まだ、なにも決まってないけど......」
「ならさ、2人だけでゆっくりしたらいいじゃん。いつも俺らがいて、2人っきりになることなんてないだろう?」
隼斗がそういうと、竣亮と誠も乗ってくる。
「そうだよ。向こうで思いっきりデートしたらいいんだよ。12月になったら、それも出来なくなるし」
「そうそう。僚の限界も近いみたいだしな」
そういう誠に今度は竣亮まで加わって、しぃーっ!とする。
明日香と深尋は「何してんの?」という顔で、男たちを見ていた。
その日の夜。深尋は家に帰った後、木南に電話を掛ける。
『もしもし、深尋ちゃん。お疲れさま』
「あ、光太郎くん。お疲れさま。いま、大丈夫?」
『うん、大丈夫だよ。どうしたの?』
「実は.....」
それから深尋は、写真集の撮影で沖縄に行くこと、最後の3日間は自由行動だということを説明する。
「それで、もし光太郎くんが良ければ、遊びに来ないかなぁって.....」
『.......深尋ちゃんは、どうしたい?』
「どう、って......」
『僕に来てほしい?』
そこで深尋は言葉に詰まってしまった。自分が誘ってるのに、木南はなんでこんなことを言うんだろうと思ったからだ。
でも、聞かれているからには、答えないといけない。
「わたしは........来てくれたら、うれしい......」
すると、ふふっという木南の笑う声が聞こえてきた。
『わかった。せっかくの深尋ちゃんのお誘いだし、行くよ』
その返事を聞いて、深尋は急にテンションが上がる。
「ホントに⁉来てくれるの⁉」
『うん、行くよ。深尋ちゃんが誘ったんでしょ?』
「そうだけど.....嬉しくて.....」
『そのかわり深尋ちゃん、ちゃんと心の準備はしておくんだよ』
「心の準備?」
『そう。2人だけで旅行するっていうことが、どういうことかわかってるよね?』
木南に言われて、深尋はハッと気づく。
みんな、それぞれ恋人がいて、竣亮以外はその恋人と沖縄で過ごそうとしている。ということは、必然的に自分も木南と2人だけになる。
しかも、ホテルは自分たちで予約するって言ってたし.....ホテルの部屋も、木南と同じ部屋......?
「あ、あ、あのっ....光太郎くん....」
『やっぱり無しは無しだからね?深尋ちゃんが僕を誘ったんだから、ちゃんと最後まで責任を取ってくれなきゃ、ね?』
電話越しでもわかるくらい深尋は動揺し、木南はそれを楽しんでる。
深尋にとっては、写真集撮影どころの話ではなくなってきた。
早く明日香に相談したい。そればっかりが、脳内を駆け巡っていた。
結局、美里はインターン参加のため、芽衣は夏休み明けの実習の準備と、病院へのインターンのため、沖縄に行くことが出来ないという返事だった。
隼斗と誠は、2人が来れないことは残念がっていたが、竣亮を1人にすることにならなかったので、これはこれで良かったと思った。
7月14日。GEMSTONEからbuddyに関する追加情報、第3弾が発表された。
12月1日に最新曲と本人たちが登場するMVの公開、そしてbuddyの素顔やレッスン風景などを載せた写真集の発売を発表した。
それと同時に、デビュー曲からまた注目されるようになり、人々の関心の高さが窺える。
そしていよいよ、沖縄へ行く日がやってきた。
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