サキュバスお姉ちゃんとの転性妹成長記

黒月 明

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異世界初銭湯

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 前世で銭湯に入ったのは、修学旅行先が北海道だった時と、小学何年生の頃だったか、足を火傷した時……くらいだと思う。
 湯たんぽでひざの内側、脹脛ふくらはぎと膝の間辺りを低温火傷し、大きめの水膨みずぶくれが出来て常にヒリヒリと痛かった。
 あの日は平日だったっけな? 当時は両親共働きだったため、学校終わりに婆ちゃんに送ってもらい、車で数分の距離にある火傷に効くという銭湯へと数回通っていたのをおぼえている。
 婆ちゃんと通っていたため、当然入っていたのは女湯。
 いや小学生で、年齢制限もクリアしていたし。 まだ明るい時間帯で人もいなくて、いてもご老人だけ。 銭湯経験も無かった人見知りな子供に、1人で男湯は勇気が出なかったわけよ。
 シャンプー持ってきてないけど大丈夫? 有料だったりしない? のレベルだ。
 婆ちゃんと一緒じゃなければ、シャワーの使い方すら分からなかっただろう。 何なんあの、ボタン押さなきゃ出ない&数秒出たら止まるシャワー。 勢いもアホほど強いし。
 シャンプー洗い流してる途中で何回止まったか。
 あそこの銭湯が特殊だったのかな? 1人で行ってたらシャワーすら出来んかっただろうね。

 それとあとは、修学旅行で行った北海道の宿泊先の風呂ね。
 色白デブだったのもあるけれど、同性でも他人の裸を見るのも見られるのも恥ずかしかった私は、せめてタオルを巻いていたかった。 が、湯船でそれはマナー違反なので……

((あっ、着いたよ))
(聞いといて興味無さそうにぶった切らないで? 一緒に見えてるから、歩いてるんだから)
 あんなハルネより幅広くて人が出入りしてる2階建ての施設、民家じゃないでしょ。

 日に照らされ続けた石畳から上昇してくる熱を、汗ばむ全身で感じながら、薄っすらオレンジ色に染まり始めた空の下。 お母さんに手を引かれ・少し距離があるのでたまに抱っこもしてもらいながら、歩みを進めること数分。
 ようやく古民家風な外観の建築物が見えてきた。
 木製の柱に、白いペンキを塗ったみたいな質感のコンクリ壁。  積雪対策なのか三角の屋根に瓦……現代日本から転移してきたと言われた方が納得なのだが?
 何なの? この村の建築士の趣味なの?
 ファンタジー作品に定番な中世ヨーロッパ風の辺境村に、ログハウスな宿屋だったり、聖教会風な病院だったり、和風な銭湯だったり。
 領地経営もののゲームかここは! 無料ガチャで出たSSRのぎすな!

 この距離からでも見える看板には、大きく【ケロルウノケミラ】と書かれており、お姉ちゃんが言うには『ケロん家の湯屋』という意味らしい。
 ケロ? 銭湯でケロと言われるとアレが浮かぶのだが……

 銭湯は産業地域。 農業・畜産・工業地区と商店街の中間に位置していた。
 仕事終わりの汗だく共には欠かせないオアシスとして、重宝ちょうほうされているのは想像にかたくない。
 汗だく・泥だらけで家に帰り、人によってはお湯をってから……なんてするくらいなら、シャワーで汗を流し、広い湯船で足を伸ばしてから帰れる銭湯に通い詰めるだろう。
 この立地と需要……公務員並みに安定してるんじゃない?

 となれば当然、今が稼ぎ時な訳で。 銭湯の周囲は酒場や屋台で随分と賑わっていた。
 商店街がお客さん向けならば、ここは身内用とでも言った所か。 夜になれば眠るこの世界の人目線で考えると、仕事終わりに即風呂に入り夕飯を食べて酒を呑み、日が沈む頃には家に帰って暗くなったら寝る。 の流れがここからスタートできるとなれば、そりゃぁ大繁盛間違いなしだ。
 直前にまたハルネで食べて来てなかったら、レモン+スパイス+ハーブソルトなかおり漂わせる鳥串屋台にでもフラっと吸い込まれていただろう。
 実際、フラっと吸い込まれていく家族連れが何組か見られた。

 そんな私達も、家族3人で来ている。 お母さんの思い付きとはいえ、お湯張ってないし夕飯の用意もしてないので、実質強制である。
 私の右隣で手を繋ぐお母さんは、久しぶりの銭湯に嬉しそうな表情で。 私の後ろのお父さんは、帰ってきた時の作業着のまま、3人分の着替えを2つの袋で持ってくれている。 私の着替えはお母さんのと同じ袋に入れてある。

 そんな私はと言えば、異世界初銭湯には心おどるが、足は重い。

 いやさぁ……元18の男だからって、誰でも女湯で素直に興奮できる頭思春期ピンクばかりだと思わないでくれ。
 そりゃ女性のが好きだよ? 異性の裸体に性的興味が無いタイプではない。 でもそれ以上に対人恐怖症気味なうえ、親同伴+場違い感しかないんだわ。
 んでもって同性異性関係無く、見るのも見られるのも心恥うらはずかしい。
 何よりさ……無いとは思うけれど、リアクションとかで元男ってバレたら死ぬんよ? マジで。
 選択肢を間違えたら即死ルートまっしぐらな楽園でどう癒やされろと。 笑えない。

 ねぇ、真面目に年齢制限まででも良いから男湯行きたいんだけど。 お父さんと離れたくない!ってギャン泣きしたろうかな……駄目?


 汗たらたらに歩いてると、もう完全に日本の古民家でしかない銭湯に到着する。
 お母さんがりガラスの引き戸を開けた。 途端、外にまで漏れていた喧騒けんそうが一層騒がしくなった。

 親戚一同で宴会でもしてるん?

 磨りガラス戸を開けてすぐは広い玄関で、シックな木造の内装は2階建ではなく吹き抜けだったらしい。 結構広い。 そんで当たり前のように涼しいな。 冷房で26℃くらいかも。
 靴棚なんて靴屋みたいに並んでいる。 何百足分あるんだこれ、もう殆ど埋まってるし。 30人前後✕6クラスあった小学校以上だ。
 その靴棚の先はすぐロビーらしく、受け付けと、老若男女のお客さんが行き交っている。
 暖色と白の中間くらいな照明や、なんか薬草みたいなアルコール消毒みたいな香りもしていて、清潔感が空気にも表れていた。
 なんて見渡しながら歩いていると、両親が空いている棚を探している間、並んでいる靴の中に何かをスプレーしている男性を見掛けた。
 ガラスっぽい容器に金属製の噴霧器で。

(あれ消臭スプレー?)
((だね。 薬草を入れたアルコールが良いって、何年か前に流行ってたから))
 詳しい精製法は企業秘密で公開されていないが、こちらの世界にも似たような物があるらしい。 あったんだねスプレー。
 お客さんが来る度に噴いてるのだろう。 大変だ。
 そんなに臭かったのか。

 4列目の中段に靴を置き、靴下のままロビーに進む。 中央正面には受付け。 受付けの左右には通路があり、右は白の暖簾のれん……半カーテンか? 暖簾って感じじゃない。
 左は黒の半カーテンが下がっている。
 多分あそこが男湯女湯への通路なのだろう。 どっちがどっちか分かんねぇな。
 国によって色のイメージって変わるからな……例えば日本じゃ紫って高貴や毒のイメージがあるけれど、欧米だと高貴が黒で、毒は緑らしい。
 白と黒の湯……私のイメージ的には、黒が男湯で白が女湯かな。

 んで、外にまで聞こえていた喧騒なんだけど。

 真っ先に受付けへ進み、サツマイモの皮のような赤紫の甚平ジンベエを着た店員さんに、お母さんが人数を言って料金を払う。 電車の切符きっぷみたいな白いのと黒いのを受け取ると、そのまま右の休憩スペースに進んだ。

 広っ!

 ロビーの倍以上はあるスペースに、木製の椅子と長机が数セット。 そこでは十数の大人が飲み食いしていて。
 はたから見るとフードコートだな。
 メニューなどはない。 屋台の持ち込みOKって感じ。
 さすがに酒はマナー違反なのか、呑んでいる人は見当たらなかった。

「レナリアちゃ~ん」
「あわっとっ……こんばんわ~!」
 休憩スペースに入ると、室内はL字になっており、曲がった先に3歳くらいの子と手を繋いでいたレナリアちゃん。 と、年の近い、または年下の幼い子共達が計5人集まっていた。 周囲にはそれらしき親もいて、レナリアちゃんのお母さんが立ち上がる。
 明るい黄橙色おうとうしょくお団子ヘアーの三十代さんで、私がまだリスニングも難しい0歳児の頃から、何度かレナリアちゃんを連れて家に来ていた。
 3回目からはお邪魔し過ぎは良くないと思ったのか、レナリアちゃんだけで来ていたので、名前は知らない。

 今はそれぞれの親御達さんと談笑していたらしく。 仕事終わりと考えると少し待たせてしまったかも。 私が歩くの遅かったせいで。

「ほら、エメルナ行っといで」
 と、いきなりお母さんから手を離され、手招きしながら「エメルナちゃ~ん♪」と期待の眼差しを送るレナリアちゃんと目が合う。

 ぉぅ……あの輪に自分の足で入れと。

 例えるならば、不本意ながら幼児プレイをしている18の男が、両親に見守られながら、はじめましてな本物の幼児グループに加入するようなもので。
 しかも私が1番年下な可能性すらあるし。 5人ともレナリアちゃんみたいなテンションだったらどうしよう……

 フローラちゃんは妹みたいな距離感なので気にもならなかった。 シスターちゃんはお世話してくれるお姉さん感があって接しやすかった。
 レナリアちゃんは、加減を知らない子がキラキラした瞳で、犬の顔の皮膚を伸ばしたり牙を触ったり肉球をムニムニして一方的に遊んでいるような感覚だった。
 それが✕5だったらと思うと……

 だったわ。
「やわらか~い!」
「みどりー!」
「キャハハハ! もうペチャペチャしてる~!」
「あったかい……ギュってしていい?」
 男の子2人女の子3人に囲まれ、身長でも負けていて。 おっと! 脇腹を背後から掴まれレナリアちゃんの太腿ふとももの上に強制着座させられた。
 背中が子供体温で熱い。

 待って、汗酷いから今密着するのは……

 服までベッチャベチャって程ではないけれど、首筋に鼻が近い姿勢はちょっと遠慮してもらえませんかね。
 フェチなら……何も言うまいて。

 にしても、たまに個性的な発言が聞こえて、返事してしまいそうになる。
「なまパンみた~い。 あったかくてモニュモニュ~」
 生地きじのことかな? パン屋の娘ですか?
「ハム! ここハム! ふとってる!」
 と二の腕や足で爆笑する、まだデリカシーが育っていない男の子。 うっせえな幼児体型だ。 蓮根れんこんと呼べ。
「えほんすき? なにすき?」
 ちょっ君、タイトル答えて良いのか悩む絶妙なラインやめて。 単語はいけても文はまだ解禁してないんよ。
 なかでも、太腿を撫でながらの「パパのあたまみた~い!」は吹き出した。 
 両親と談笑している親達に目を向ける。 あの人だな、お父さん。

 にしても、いつになったらお風呂に行くんだろう。 何かあっちはあっちで普通に話し始めちゃってるし、子供達は私に夢中で動く気配すら無い。
 女湯に行くのは気が引けていたが、せっかく来た銭湯を待てされ続けるのも……
 なんてソワソワしていると、
「こんばんわ~、なにしてんの?」
「あっ、ケンくん!」
 レナリアちゃんより年上そうな葡萄ぶどう色髪の男の子が現れた。 両親と妹らしき女の子も一緒だ。
 「こんばんわ~」とレナリアちゃんが手を振り、少し遅れで「こんばんわ~」が親同士でも交わされる。

 完全に忘れていた。
 そういえば今回銭湯に来た理由は、ケンくんって子が年齢制限で混浴出来なくなるため、レナリアちゃんが落ち込んでいたからだった。
 主役じゃん。 どんだけ緊張してんのよ私。

 妹の手を引き、ケンくんが新人をでる会に合流する。
「ごめんな遅れて」
「いいよぉ、エメルナちゃんと遊んでたから」
 エメルナちゃんな。
 同時多発的に質問されるから返事すらできてないからね。

 私と目が合ったイチゴ髪の妹ちゃんが、ケンくんの手から離れ、前に出る。
「だれぇ?」
 小首を傾げる仕草が可愛い。
 少ない単語しか組み合わせられない私の代わりにと、レナリアちゃんが紹介してくれた。
「エメルナちゃんだよ。 はなしてたシトルちゃんみたいな子」
 誰?
「シトルちゃん。 こんばんわ」
 違うよ?


 そうこうしている間に、親達も話しが一段落ついたらしく。 私はレナリアちゃんとイチゴ髪ちゃんに立たせてもらって、手を繋いだまま脱衣所へと歩き出した。
 女湯は黒のカーテンだった。 ホールでお父さん達と別れ、子供達が先行して黒カーテンをくぐり脱衣所への短い廊下をグングン進む。

 ちょっ待っあぁぁ!!

 なるべく他人の裸を見ないよう視線を下げたい、けど内装は知りたい。 そんな理由で心の準備が調ととのわないまま立ち止まることさえ許されず。

 角を曲がり、思ったより広めな脱衣所に到着する。


 「………………」
((…………どうしたの?))
 呆けたようにぼ~っと突っ立っている私に、お姉ちゃんが声を掛ける。
(いやぁ……なんか懐かしくって)
 女湯が、ではない。 この空気が、だ。
 木の柱にアイボリー色の壁。
 床は硬めな木材で、撥水はっすい加工でもされているのかつるつるだが、細い棒を並べたような凹凸を足裏で感じる。 滑り止めだろう。
 壁際と中央に並ぶ木製ロッカー。
 シャンプーや石鹸の甘爽やかな香り。
 肌で感じる濃い湿気。
 何よりこの開放感よ。 露出は趣味じゃないのに、広いお風呂へのワクワクみたいな?
 お客さんも結構いる。 私達みたいな親子連れから、中学生くらいの若いグループ、仕事終わりらしきお姉さん(30~70代)達まで。  ドライヤーで髪を乾かしていたり、今まさに脱いでいる途中だったり、お互いの下着姿を見せ合っていたり。 とは言えやはり肌色が多い。

 なのに……銭湯というより、小・中学生の頃に何度か連れて行ってもらった『ルネス』ってプール施設を思い出していた。 あの空気感、雑多感。 あそこ風呂もあったしお客さんも多かったのよ。

 なんて懐かしんでいると、お姉ちゃんの((結構落ち着いてるね))にハッ!とした。
((もっとキャ~!ってなるかと思ってたのに))
(ぁ~、うん……)
 確かに、もっと童貞らしく興奮するものかと思ってた。 見ないように~なんて薄目になりつつ、つい胸とかお尻とかチラッチラッしたり。
 ……今はむしなぎに近い。 心恥うらはずかしさも、全くではないが男湯ほどではない……な。
 え? 私ゲイだったん?
 前・今世含めてもまだ19の元男のリアクションかこれが? 言うまでもなくガン見できている訳ではないにしても、せっかくの女湯の脱衣場なのに……なんだろう……この、思ったほどじゃない感。
 落胆とも違う、特段輝いて見える訳でもない。 むしろ前世の施設に近い……ですよね~感。
 いや、まぁ、うん……異性専用の空間ってだけであって、脱衣場は脱衣場でしかないからな。
 勝手に私が気にして、勝手に聖域的な想像をしていたってだけで。
 ……あれ? これ私がおかしいのか?

(何でだろ? 幼児だから?)
 体が勝手に泣いてしまうのと同じシステムとするならば、肉体が女性・幼児になったから脳の構造的に? それともお母さんので見慣れたとか?
 見るどころか飲んでたからね……食レポしてたからね。
((あれかな、フェチなポイントが胸やお尻じゃないから、とか?))
(…………あ~)
 お姉ちゃんの仮説に心の底から納得する。 確かに、妄想で夢見過ぎたせいなのか、想像の域を出ていない……という印象の方が強い。 胸は胸だし、尻は尻だ。
 女性の身体だ。
 これがおっぱい星人・尻フェチなら鼻血出してた、と?
 だが、言われたから気付いた仮説がもう一つ。
(それかさ、おーー)
 「エメルナ、こっち~」とお母さんに呼ばれ、振り向くと子供達は皆自分の母親と合流していて、既に服を脱ぎ捨てていた。

 あいつらマジか! せめて一声さぁ!

 急いでお母さんと合流し、私も「ぅんしょ」と脱がせてもらう。 1歳児じゃ、まだ自分では脱げないだろうからね。


 安全のため座ってズボンとパンツを脱がせてもらい、完全なスッポンポンになったところでーー
「いこ、エメルナちゃん!」
 同じく、一糸纏いっしまとわぬスッポンポンになったレナリアちゃんに手を引かれて立ち上がった。
 隣で、私の服をロッカーに仕舞ったお母さんが、自分も服を脱ぎ始める。
「…………」
 歩幅の違うレナリアちゃんにグイグイ引っ張られ、私はそれぞれがタオルを持った子供達と合流した。
 ケンくんなんてタオルは肩に掛けている。
「…………」
「エメルナちゃん、どうした?」
「さぁ? エメルナちゃ~ん」
「あっ」
 ごめん、ち◯こ見てた。

 いやね、仮説が確信に変わるかなって。
 で、うん、分かったわ。
 女って普通に立ってても陰部見えないじゃん? また広げないと。
 男ってち◯こ見えるじゃん? 普通に。
 それだわ。
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