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エメルナちゃんの成長記録3
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あれから更に一ヶ月が過ぎ。
3月13日。
誕生日。
私とフローラちゃんは、村長さん宅で共にお祝いされることとなった。 なんでも私は日の出直後に産まれ、その18時間後にフローラちゃんが産まれたらしい。
お姉ちゃんは、産まれてすぐ寝ちゃったことで翌日だと勘違いしたとか。 てへペロが可愛いかったから許す。
バースデーケーキは、生クリームとフルーツを盛り合わせたパンケーキだ。 砂糖は生クリームに少しだけ、フルーツは私達でも食べやすいようサイコロ状にカットされている。
このまだ雪の残る時期にフルーツ? と思ったが、『シャルトート』と呼ばれる雪の中でも実る果物があったのだ。 シャルトートってのは、日本語に訳すと『雪果』って感じかな。
今回使われたのは、『ミテゥー』と言う糖度の高い桃+梨味の果物と、『リーティェ』と言う酸味のまろやかなキウイ+イチゴ味の果物だ。 まったりとした甘みとフルーティーな酸味が、甘みを抑えた生クリームとパンケーキに凄く合う。
と思う。
だってまだ食べてないもん。 全員揃ってないから。 香りだけでの感想だ。
ミテゥーとリーティェは数日前に試食して美味しかったから、想像してみて、目前のこの宝石箱が美味しくないわけがない。
料理は他にもある。
鶏の丸焼き・キノコと山菜のペペロンチーノ・野菜スティックのチーズフォンデュ・グラタン・ピザ・他にも色々…………完全に主役がおいてきぼりだな。
私達が食べられる物はお母さんが食べやすく取り分け、一口サイズに切り分けてくれるらしい。
「ごめんごめん、お待たせ」
シャワーを終えたフローラちゃんのお父さんとお兄さんが居間に帰ってくる。 にしても、何度も村長さん宅に来ているのに、フローラ父とお兄さんを見たのは今日が初めてだ。
てかフローラちゃんにお兄さんなんていたのか。 エレオノールさん、お母さんと同い年くらいなのに…………10代で結婚したのかな?
ちなみにフローラ父の髪はビターチョコ色で、兄の髪は黄土色だ。 昨年で5歳となり、フローラ父と同じ職場で手伝いをしているらしい。
今日まで会えなかったのは、日中ずっと働いていたからだと。 ついさっき帰ってきて、慌てて汗を流していた。
さて、両家揃い。
記念すべき私とフローラちゃんのお誕生パーティが始まった。
(誕生日おめでとう、フローラちゃん! 誕生日おめでとう、お姉ちゃん!)
そして誕生日おめでとう、私!
私はグラタン・パリパリ皮の鶏肉を貰い、フローラちゃんはチーズを少し浸けた野菜スティック・ペペロンチーノ・グラタン・ピザを受け取る。
フローラちゃん、食べきれるかなぁ……。
ホワイトソース絡まる貝殻形のパスタをスプーンで口に運ぶ。 んん~♪ このソース、炒めた玉ねぎの旨味と控えめの塩・こしょうが良いコク出してる。 具はパスタとソーセージとブロッコリーだけ。 こういうシンプルなの大好きなのよねぇ~。
刻印魔法陣の冷凍庫、最強過ぎだろ。
鶏肉は油の少ない部位を少し、パリパリの皮も貰った。
「パリパリ~!」で理解してくれて助かったよ。
あっ、この皮おいしい。 塩ダレかな? 鳥皮がこしょうとレモンでさっぱりしてる。
このまま食べるより肉と一緒の方が合うかも。 やばい、白米食べたくなってきた。
夢でいっぱい食おう。
((良いねぇ。 全部少しずつ食べておく?))
(あぁ……でも塩分がなぁ……)
何よりメインのケーキをガッツリ食べて眠りたい。 それまでに満腹は困る。
(そういえば、フローラちゃんは大丈夫かな? かなり注文してたけど……)
隣を見ると、フローラちゃんの前には一つの大皿に一口ずつ盛られた各料理が円になっていた。
アミューズブーシュかな? スプーンじゃないが。
エレオノールさん気が利くなぁ。 これなら嫌いな野菜だろうと残さずに食べられる。 お母さん、私もあれでお願いします!
ゆっくり味わい終わり、一足先にケーキを貰おうとしたが、ふとフローラちゃんが気になった。
「……ケプッ」
今この子ゲップしましたよ!
かわいいなぁもぅ♪
ペペロンチーノはお気に召さなかったようだけど、野菜チーズフォンデュはおかわりしていたからなぁ。 牛乳で結構薄めたって言ってたし。
にしても……ケーキいける? 冷蔵庫あるから明日にする? それなら私も付き合うけど。
と、両お母さんが立ち上がった。
「そろそろケーキ切りましょうか」
「そうね」
(マジっすか……えっ、フローラちゃんいけるの?)
お母さんがナイフを持ったことで察したのか、待ってましたとばかりに前のめりになるフローラちゃん。
(まさか、この歳で別腹だと!? 女の子には標準装備なのか!)
((むしろエメルナちゃんが少なすぎなのよ。 普通サイズで食べるつもりだったの?))
(当たり前じゃん。 メインよ? 主役よ?)
誰の誕生日だと思ってるのか、フローラちゃんとお姉ちゃんと私だよ?
主役が一人前すら食べられないなんて悲劇でしょ。 だから少な目にして味で楽しんでたんじゃない。
何か重要な事を言いにくそうにしているお姉ちゃんに、私は首を傾げる。
((えっとね……ミテゥーは糖が強いから、乳児には適していないの))
……………は?
(え? でも試食したよ?)
((サイコロ1つ程度でしょ? それくらいなら問題無いけれど、多分12個……半分くらいで病気になっちゃうと思うよ))
(糖尿まっしぐら!?)
んなもんケーキにすんなよ! 好きになっちゃったら大変だぞ!
てか半分でって、大人になっても危険物じねぇか!
((あぁ、大人になったら大丈夫なのよ、詳しくは知らないけれど))
(お酒か!)
くっそぉ~、ほとんど食べられないなんて! 8等分してる理由が分かったよ!
仕方なく、私はフローラちゃんと一緒に、普通サイズを仲良く分けあった。
誕生日に欠かせないイベントがもう1つある。
待ってました、誕生日プレゼント!
しかもなんと、村長さん達も私の分を用意してくれていた。
私のは……村長さん、フローラお婆ちゃん、フローラ父母、私の両親から計5個。
フローラちゃんのは……私の両親、お爺ちゃん、お婆ちゃん、父、母から計5個。
本当はフローラ父母から代表して1個貰えれば、それだけでも充分ありがたいのだが、3:5と差がでるからと祖父母が言って退かなかったのだ。
孫に買ってあげたくなるアレだろうね。 ……約一名、若干嫌な予感がするんですけど。
先ずは私の両親から。
お父さんがくれたのは積み木だった。 高かったんじゃ? と不安になったけど、廃材を活用しているそうで、それほどじゃないらしい。
廃材だから色が違うのも混ざっている。
丁寧にも角が丸められ、綺麗に鑢掛けがされていた。
フローラちゃんは……微妙な反応だね。 どういう用途なのか理解できていないのかも。 確かに、知らないと只の木材だもんな。
まぁ心配ないよお父さん、こういうのはハマれば強いから。
大人達には好感触だから良かったじゃん。
私? もちろんフローラちゃんの真似してますが何か。
次はお母さん。 っと、エレオノールさんも持ってきた。 一緒にくれるらしい。
私には淡い黄色の羊、フローラちゃんには白い犬のぬいぐるみだった。
ありがたい。 未だにフローラちゃんと遊ぶ時は「めー」だから。
それにあのモコモコは羨ましかった。 家でもモコモコ出来るなんて夢のようだ。
抱き締めると腕がモコモコに深く沈み、新品の頃にしか味わえない香りが鼻に充満する。
あぁ~今日寝れるわぁ~♪
「あぁぅ、きゃわぁ♪」
フローラちゃんも嬉しそうだ。 よくワンコ貸してたからね。
て訳でフローラパパさん、娘に犬って動物をちゃんと教えてあげて。 私の為にも。
続いてフローラ父から。
トランプ? いや、表には単語、裏には白黒の絵が描いてある。
単語帳のカード版みたいな物だ。
これは高いんじゃ……。
「フローラのは俺が子供の頃使っていた物で、エメルナちゃんのはリトグリルで買った新品だよ」
リトグリルってのは馬車で二日進んだ先の隣街だ。 出張してたんだっけ。
印刷で大量生産してるとは思えないから、日本より高いだろう。
大切に学ばせていただきます。
ちなみに、やっぱり微妙なリアクションのフローラちゃんなのであった。
村長さんの番。
取り出したのは白い毛皮製のボールだった。
ボールあったのか。 ちょっとモシャモシャしてるのは興味深いな。
抱き締めてみると、中は空気ではなく綿みたいな弾力だった。
おぉ、気持ちいい。
サッカーボール程の大きさで、弾みは小さいが遠くに跳ばなそうで安全だね。 車は無くても馬車が怖いから、ありがたい。
抱き締めていると大きめの兎を抱いてる心地良さがある。 いいセンスしてるよ村長さん。
フローラ父が村長さんに聞く。
「あれ、一つだけ?」
「二人で遊ぶのだから、一つで充分じゃろ?」
えっ、これ共用なの? 貰う立場の私が我が儘なんて言えないけど、どうなのそれ?
「いやいや、取り合いになったら……」
「そこをどう教育するかが、お前達の課題じゃな。 しっかりやれよ」
フローラ父の肩を叩く村長さん。
あっ、はい……。
これは……姉として妹に持たせるか、妹が我が儘にならないよう姉として厳しくするかだな……悩むなぁ。
取り敢えず、ガン見してるフローラちゃんに渡すか。
抱き締めて、モシャモシャとムニムニの融合にとろける笑顔を浮かべるフローラちゃん。
あぁ~キャワイイなぁ♪ マジ天使!
よし、どっちの家に置くかは大人に任せた! 私はこの天使を眺めるのに集中します。
これで終わっても良かったんだけど、最後にお婆ちゃんからのプレゼントが待っていた。
正直ちょっと怖い。
元冒険者の魔術師で、私達を鍛えようと企む強かさ。
変なの魔法付与してないだろうな……。
「はいこれ」
両親に渡されたのは、お揃いのミサンガだった。
青・緑・黄の糸で複雑に、肌触り良く編まれている。 なんと手作りらしい。
つい安心してしまう。 我ながら失礼だったかも。
だって重力増加する筋トレ子供服とか、魔力容量増やす指輪とか普通に作れそうなんだもん。
以前も私達に魔力を流し込んで感覚掴ませようとしてたし、これ見よがしに水魔法で小さな虹を作ってた。
一歳を機に動き出しそうだったんだよね……。
にしてもミサンガなんて初めて見た。
実はちょっと嬉しかったりする。 ファッション関係はまだ持ってないから。
「あぁ、この魔法陣を肌側にして着けてね」
………ん?
おい今なんつった?
お母さんが首を傾げる。
「肌側ですか? もったいない……」
「金糸は魔力を効率良く循環させるのに最適なんだよ。 生活しているだけで漏れ出す微弱な魔力でも反応させられるからこうしているの。 むしろ肌側じゃないと意味が無い。 金は肌にも良いし、赤ちゃんでも問題無く使えるわ」
私からは見えない所に金糸の魔法陣?
マジで魔法付与しやがったのかこの美魔女。
「それで、どんな効果が?」
「このミサンガを着けている者同士の居場所が、遠く離れていても知ることの出来る探知魔法だよ」
GPSじゃねぇか!!
3月13日。
誕生日。
私とフローラちゃんは、村長さん宅で共にお祝いされることとなった。 なんでも私は日の出直後に産まれ、その18時間後にフローラちゃんが産まれたらしい。
お姉ちゃんは、産まれてすぐ寝ちゃったことで翌日だと勘違いしたとか。 てへペロが可愛いかったから許す。
バースデーケーキは、生クリームとフルーツを盛り合わせたパンケーキだ。 砂糖は生クリームに少しだけ、フルーツは私達でも食べやすいようサイコロ状にカットされている。
このまだ雪の残る時期にフルーツ? と思ったが、『シャルトート』と呼ばれる雪の中でも実る果物があったのだ。 シャルトートってのは、日本語に訳すと『雪果』って感じかな。
今回使われたのは、『ミテゥー』と言う糖度の高い桃+梨味の果物と、『リーティェ』と言う酸味のまろやかなキウイ+イチゴ味の果物だ。 まったりとした甘みとフルーティーな酸味が、甘みを抑えた生クリームとパンケーキに凄く合う。
と思う。
だってまだ食べてないもん。 全員揃ってないから。 香りだけでの感想だ。
ミテゥーとリーティェは数日前に試食して美味しかったから、想像してみて、目前のこの宝石箱が美味しくないわけがない。
料理は他にもある。
鶏の丸焼き・キノコと山菜のペペロンチーノ・野菜スティックのチーズフォンデュ・グラタン・ピザ・他にも色々…………完全に主役がおいてきぼりだな。
私達が食べられる物はお母さんが食べやすく取り分け、一口サイズに切り分けてくれるらしい。
「ごめんごめん、お待たせ」
シャワーを終えたフローラちゃんのお父さんとお兄さんが居間に帰ってくる。 にしても、何度も村長さん宅に来ているのに、フローラ父とお兄さんを見たのは今日が初めてだ。
てかフローラちゃんにお兄さんなんていたのか。 エレオノールさん、お母さんと同い年くらいなのに…………10代で結婚したのかな?
ちなみにフローラ父の髪はビターチョコ色で、兄の髪は黄土色だ。 昨年で5歳となり、フローラ父と同じ職場で手伝いをしているらしい。
今日まで会えなかったのは、日中ずっと働いていたからだと。 ついさっき帰ってきて、慌てて汗を流していた。
さて、両家揃い。
記念すべき私とフローラちゃんのお誕生パーティが始まった。
(誕生日おめでとう、フローラちゃん! 誕生日おめでとう、お姉ちゃん!)
そして誕生日おめでとう、私!
私はグラタン・パリパリ皮の鶏肉を貰い、フローラちゃんはチーズを少し浸けた野菜スティック・ペペロンチーノ・グラタン・ピザを受け取る。
フローラちゃん、食べきれるかなぁ……。
ホワイトソース絡まる貝殻形のパスタをスプーンで口に運ぶ。 んん~♪ このソース、炒めた玉ねぎの旨味と控えめの塩・こしょうが良いコク出してる。 具はパスタとソーセージとブロッコリーだけ。 こういうシンプルなの大好きなのよねぇ~。
刻印魔法陣の冷凍庫、最強過ぎだろ。
鶏肉は油の少ない部位を少し、パリパリの皮も貰った。
「パリパリ~!」で理解してくれて助かったよ。
あっ、この皮おいしい。 塩ダレかな? 鳥皮がこしょうとレモンでさっぱりしてる。
このまま食べるより肉と一緒の方が合うかも。 やばい、白米食べたくなってきた。
夢でいっぱい食おう。
((良いねぇ。 全部少しずつ食べておく?))
(あぁ……でも塩分がなぁ……)
何よりメインのケーキをガッツリ食べて眠りたい。 それまでに満腹は困る。
(そういえば、フローラちゃんは大丈夫かな? かなり注文してたけど……)
隣を見ると、フローラちゃんの前には一つの大皿に一口ずつ盛られた各料理が円になっていた。
アミューズブーシュかな? スプーンじゃないが。
エレオノールさん気が利くなぁ。 これなら嫌いな野菜だろうと残さずに食べられる。 お母さん、私もあれでお願いします!
ゆっくり味わい終わり、一足先にケーキを貰おうとしたが、ふとフローラちゃんが気になった。
「……ケプッ」
今この子ゲップしましたよ!
かわいいなぁもぅ♪
ペペロンチーノはお気に召さなかったようだけど、野菜チーズフォンデュはおかわりしていたからなぁ。 牛乳で結構薄めたって言ってたし。
にしても……ケーキいける? 冷蔵庫あるから明日にする? それなら私も付き合うけど。
と、両お母さんが立ち上がった。
「そろそろケーキ切りましょうか」
「そうね」
(マジっすか……えっ、フローラちゃんいけるの?)
お母さんがナイフを持ったことで察したのか、待ってましたとばかりに前のめりになるフローラちゃん。
(まさか、この歳で別腹だと!? 女の子には標準装備なのか!)
((むしろエメルナちゃんが少なすぎなのよ。 普通サイズで食べるつもりだったの?))
(当たり前じゃん。 メインよ? 主役よ?)
誰の誕生日だと思ってるのか、フローラちゃんとお姉ちゃんと私だよ?
主役が一人前すら食べられないなんて悲劇でしょ。 だから少な目にして味で楽しんでたんじゃない。
何か重要な事を言いにくそうにしているお姉ちゃんに、私は首を傾げる。
((えっとね……ミテゥーは糖が強いから、乳児には適していないの))
……………は?
(え? でも試食したよ?)
((サイコロ1つ程度でしょ? それくらいなら問題無いけれど、多分12個……半分くらいで病気になっちゃうと思うよ))
(糖尿まっしぐら!?)
んなもんケーキにすんなよ! 好きになっちゃったら大変だぞ!
てか半分でって、大人になっても危険物じねぇか!
((あぁ、大人になったら大丈夫なのよ、詳しくは知らないけれど))
(お酒か!)
くっそぉ~、ほとんど食べられないなんて! 8等分してる理由が分かったよ!
仕方なく、私はフローラちゃんと一緒に、普通サイズを仲良く分けあった。
誕生日に欠かせないイベントがもう1つある。
待ってました、誕生日プレゼント!
しかもなんと、村長さん達も私の分を用意してくれていた。
私のは……村長さん、フローラお婆ちゃん、フローラ父母、私の両親から計5個。
フローラちゃんのは……私の両親、お爺ちゃん、お婆ちゃん、父、母から計5個。
本当はフローラ父母から代表して1個貰えれば、それだけでも充分ありがたいのだが、3:5と差がでるからと祖父母が言って退かなかったのだ。
孫に買ってあげたくなるアレだろうね。 ……約一名、若干嫌な予感がするんですけど。
先ずは私の両親から。
お父さんがくれたのは積み木だった。 高かったんじゃ? と不安になったけど、廃材を活用しているそうで、それほどじゃないらしい。
廃材だから色が違うのも混ざっている。
丁寧にも角が丸められ、綺麗に鑢掛けがされていた。
フローラちゃんは……微妙な反応だね。 どういう用途なのか理解できていないのかも。 確かに、知らないと只の木材だもんな。
まぁ心配ないよお父さん、こういうのはハマれば強いから。
大人達には好感触だから良かったじゃん。
私? もちろんフローラちゃんの真似してますが何か。
次はお母さん。 っと、エレオノールさんも持ってきた。 一緒にくれるらしい。
私には淡い黄色の羊、フローラちゃんには白い犬のぬいぐるみだった。
ありがたい。 未だにフローラちゃんと遊ぶ時は「めー」だから。
それにあのモコモコは羨ましかった。 家でもモコモコ出来るなんて夢のようだ。
抱き締めると腕がモコモコに深く沈み、新品の頃にしか味わえない香りが鼻に充満する。
あぁ~今日寝れるわぁ~♪
「あぁぅ、きゃわぁ♪」
フローラちゃんも嬉しそうだ。 よくワンコ貸してたからね。
て訳でフローラパパさん、娘に犬って動物をちゃんと教えてあげて。 私の為にも。
続いてフローラ父から。
トランプ? いや、表には単語、裏には白黒の絵が描いてある。
単語帳のカード版みたいな物だ。
これは高いんじゃ……。
「フローラのは俺が子供の頃使っていた物で、エメルナちゃんのはリトグリルで買った新品だよ」
リトグリルってのは馬車で二日進んだ先の隣街だ。 出張してたんだっけ。
印刷で大量生産してるとは思えないから、日本より高いだろう。
大切に学ばせていただきます。
ちなみに、やっぱり微妙なリアクションのフローラちゃんなのであった。
村長さんの番。
取り出したのは白い毛皮製のボールだった。
ボールあったのか。 ちょっとモシャモシャしてるのは興味深いな。
抱き締めてみると、中は空気ではなく綿みたいな弾力だった。
おぉ、気持ちいい。
サッカーボール程の大きさで、弾みは小さいが遠くに跳ばなそうで安全だね。 車は無くても馬車が怖いから、ありがたい。
抱き締めていると大きめの兎を抱いてる心地良さがある。 いいセンスしてるよ村長さん。
フローラ父が村長さんに聞く。
「あれ、一つだけ?」
「二人で遊ぶのだから、一つで充分じゃろ?」
えっ、これ共用なの? 貰う立場の私が我が儘なんて言えないけど、どうなのそれ?
「いやいや、取り合いになったら……」
「そこをどう教育するかが、お前達の課題じゃな。 しっかりやれよ」
フローラ父の肩を叩く村長さん。
あっ、はい……。
これは……姉として妹に持たせるか、妹が我が儘にならないよう姉として厳しくするかだな……悩むなぁ。
取り敢えず、ガン見してるフローラちゃんに渡すか。
抱き締めて、モシャモシャとムニムニの融合にとろける笑顔を浮かべるフローラちゃん。
あぁ~キャワイイなぁ♪ マジ天使!
よし、どっちの家に置くかは大人に任せた! 私はこの天使を眺めるのに集中します。
これで終わっても良かったんだけど、最後にお婆ちゃんからのプレゼントが待っていた。
正直ちょっと怖い。
元冒険者の魔術師で、私達を鍛えようと企む強かさ。
変なの魔法付与してないだろうな……。
「はいこれ」
両親に渡されたのは、お揃いのミサンガだった。
青・緑・黄の糸で複雑に、肌触り良く編まれている。 なんと手作りらしい。
つい安心してしまう。 我ながら失礼だったかも。
だって重力増加する筋トレ子供服とか、魔力容量増やす指輪とか普通に作れそうなんだもん。
以前も私達に魔力を流し込んで感覚掴ませようとしてたし、これ見よがしに水魔法で小さな虹を作ってた。
一歳を機に動き出しそうだったんだよね……。
にしてもミサンガなんて初めて見た。
実はちょっと嬉しかったりする。 ファッション関係はまだ持ってないから。
「あぁ、この魔法陣を肌側にして着けてね」
………ん?
おい今なんつった?
お母さんが首を傾げる。
「肌側ですか? もったいない……」
「金糸は魔力を効率良く循環させるのに最適なんだよ。 生活しているだけで漏れ出す微弱な魔力でも反応させられるからこうしているの。 むしろ肌側じゃないと意味が無い。 金は肌にも良いし、赤ちゃんでも問題無く使えるわ」
私からは見えない所に金糸の魔法陣?
マジで魔法付与しやがったのかこの美魔女。
「それで、どんな効果が?」
「このミサンガを着けている者同士の居場所が、遠く離れていても知ることの出来る探知魔法だよ」
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