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1話 転生

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 俺…藤谷優弥はラノベ好きな高校生だった。
 交通事故で死んでしまったが、友達もいたし両親も優しかった。
 もっと生きたかったとは思うが、そこまで悪い人生じゃなかったと思う。
 なんてことを考えていたら

「…様、目を覚ましてください!」

「早く治癒魔法を使える者を連れてこい!」

 そんな声が聞こえてきた。
 騒がしいなと思って目を開けたら

「アラン様、ご無事ですか!」

 今にも泣き出しそうな顔をしているメイド服を着た女性が俺を抱きかかえていた。
 周囲を見わたすと慌てた様子の人や安堵の表情を浮かべている人がいた。
 どういう事だ。
 俺って死んだはずじゃ。
 俺が状況を飲み込めないでいると、執事服に身を包んだ老年の男性が、

「アラン様、お身体に異常はありませんか?
 アラン様は階段から落ちてしまったときに頭を打ち
 意識を失っておられました。
 今、治癒魔法の使える者を連れてきております」

 と、言ってきた。
 少し状況が飲み込めてきた。
 記憶を辿ってみると、階段を上っているときに足を滑らせて階段から落ちたときのことを思い出せた。
 現実に起こるとは思えないが、これは異世界転生というやつだろう。
 階段から落ちて意識を失ったときに俺の魂が入り込んだのだろうか。
 俺はラノベが好きだったから、異世界転生ものも読んだことあるし、こういう展開も見たことがある。
 その知識を活かせば無双できるんじゃ…
 なんて思いを馳せていたら、あることに気がついた
 
(さっきからアラン様って呼ばれてるけど、もしかしてあのアランか!?)

 もしそうだとしたらかなり不味い状況だ。
 俺を抱きかかえている女性に聞いてみることにした

「俺の名前はアラン・ハイドで合っているか?」

「は、はい。そうでございますが…もしや記憶に問題
 が!?」

「いや、問題ない」

 そう言って話を切る。
 女性は慌てているようだが、今はそれどころではない。
 アラン・ハイドは、俺が前世でやっていたゲームに
登場する悪役貴族だ。
 公爵家の次男に生まれ、その地位と才能で努力することなく、傲慢で平民差別など当たり前というようなやつだ
 主人公とヒロインたちに事あるごとに絡み、嫌がらせをしてくる。
 最初は才能のおかげで主人公に負けることはなかったが、努力をする主人公に敗れ、婚約者も主人公に取られてしまった。
 それが原因で公爵家を勘当された挙句、情報が洩れる可能性を危惧した父親に暗殺者を仕向けられ、殺された。
 自業自得だし、スカッとするから、ゲームをやっている分には良かったが、自分が転生するとなると話は別だ。
 せっかくの2度目の人生なのだ。
 そんな風に死ぬのは御免だ。
 幸いなことにゲームが始まるのは、学園入学時だから、15歳になってからだ。
 見たところ俺は5歳ぐらいだろうから、後10年はある。
 学園に入学するまでに力をつけて、発生するイベントに対処する必要がある。
 それだけではない。
 アランが悪役貴族としての道を歩み出すのは10歳ごろからだ。
 圧倒的な才能を持つ公爵家長男のローラン・ハイドと比較され、そのストレスからあんな性格になっていった。
 両親からも長男以上を期待されていたが故に、普通以上の成果を出しても褒められることはなかった。
 寧ろ

「どうしてお前はそれぐらいしかできないのだ。
 ローランはお前の歳ではもう2段階上の魔法を使え
 るようになっていたというのに。」

 と、ローランと比較してアランを貶すことしかしなかった。
 ローランはアランと仲良くしようとしていたが、アランがこうなった原因が自分にもあると気づいていた
為に積極的に関われなかった。
 そういった事情があって、アランは悪役貴族になったのだ。
 
 (そう考えればこの年齢で転生できたのはよかった
な。アランはまだ悪役貴族になっていないから、周りからの評判は悪くない。学園入学までの期間で、主人公たち以上に強くなればゲーム通りの展開にはならないだろう。何より、ゲームではアランが主人公たちに絡みに行っていたのが問題だったのだ。主人公たちに関わらなければその心配もない。)

 俺は決めた。

 努力しまくって、主人公たちより強くなって、2度目の人生を楽しんでやる。

 主人公たちと関わる必要なんてない。
 
 俺はゲームとは違う道を歩む。
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