不死鳥契約 ~全能者の英雄伝~

足将軍

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第十一章

創造物

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「実は全能者の事を言ったの。そしたら…自殺をしたわ」
「な、何を言って…」
「全能者といっても子供だったから能力が馴染んでなかったんじゃないかしら、子供の精神に少し上乗せがかかったぐらいじゃ耐え切れなかったんでしょうね」
「じゃあ、残りの五回は…」
「全部同じよ…魔王軍に殺されたわ」
「……」

確かに魔王軍本隊撃退のの時は死ぬかと思ったが、まさか本当に死んでいたなんて…。だが、今までの話と比べるとそこまでショックはない。もう慣れたのかもしれない。
あれ…?でも、それだと一つ不可解な点がある。

「世界が巻き戻ると記憶が消えるって言ったよな…」
「えぇ」
「じゃあ、どうしてレイチェルさんに記憶が残ってるんだ?」

そう、レイチェルさんはこんな情報を持っているという事は記憶が残っているという事ではないか?

「それは神との契約の影響よ、神の力が微々たるものだけど私の中に流れ込んでいるの。それを私は神気と呼んでいるわ。神気は巻き戻しの影響を受けないの」
「神気…」
「神気の使い道は様々よ、魔力を生み出したり、武器を無から創り出したり、とにかく【創る】のに関しては何でもできるわ。さらに…人を創り出す事だって」
「人を創り出す…?」
「十六年ぐらい流れ込んでくる神気をため込めば、人を創ることだってできるの。とはいっても年齢、属性、魔力量、種族しか決めることが出来なくて、あとはその子の生き方次第で決まるわ、決められることはそれだけで他は全部普通の人間と同じよ」
「その言い方だと誰かを創ったみたいだが…」
「……クロが産まれる五年ほど前にリンという子供を創ったわ」
「リンが…創造物」
「創造物だとしても私の子供であることは変わりないわ、性格とかは環境によって変化するんだから子育ても大変だったわね」

レイチェルさんは苦笑いしながら思い出すように言った。子育てなんてしてこなくていきなり子供ができるのだから大変だったのだろう。

「クロが産まれて五年で死んで、その次も五年目で自殺して…そこで今度はロード・レリエルという人間を創ってその子だけには事情を説明したの、ロードは貴族の家の子供として産まれたことになっていたわ。神気で創った人間は元からいるように扱われるから人間関係は問題なかった…」

神気万能かよ。と、いうかあの学園長はレイチェルさんの事なんで知ってるのかと思ったらそういう事か…

「そして十五歳でクロが魔王軍に殺され、次はジル、ガルド、シロ、とクロの味方を創っていったの。神気で創り出された人間だから通常の人間とは比べ物にならないぐらい強くなっているわ」

…え?皆が創造物?

「そして今は七回目の世界、十六年で神気が溜まったからガルドの使い魔に少し手を加えて強化しておいた…と、いうわけよ。私が創れる属性は火、風、光だけ。クロの仲間はその三つの属性の子が多いはずよ。それと…メリィちゃんね、その子はルビーの創造物だと思うわ」

そんな、嘘だ。俺の生きてきた人生が全て操られていたっていうのか?そんな馬鹿な…、頑張って、頑張って生きてきた道は…全て偽物だった…?
嘘だ。嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!

「…嘘、だろ?」
「残念だけど…真実よ」







――――と、言うのがレイチェルさんの話だ。

「…全部聞いたみたいだね、それで私に頼みたいことって?」
「あぁ、それは―――」

俺はロード学園長に頼みごとを伝える。

「わかった、それでクロ君はこれからどうするの?」

了承してもらい、俺はふっと笑う。そしてある魔法を気付かれるように発動させる。

「あれ…なんだか眠く…」
「ク、クロ、何を…」
「駄目だ…寝ちまう…」

バタッ

「学園長、シロ達を頼むわ」
「クロ…、私は付いていくよ」
「私もです…!」

俺は魔法でジル、ガルド、シロの三人を眠らせるとロード学園長に言う。隣でリンとメリィが付いていくと言うのに対し「ありがとう」とだけ言った。それ以外に思い浮く言葉もなかったし、なにより…リンとメリィは連れていくつもりだったが、改めて付いていくと直接言われると嬉しくて「ありがとう」としか言えなかった。

「それはいいけど、クロ君はどこに行くんだ?」

ロード学園長が話を変えようとする。まぁ、この会話が続いても俺が居づらくなるだけだしな。

「なぁに、ちょっと終焉を見に行くだけだよ、あ、その前に…」

俺は映像結晶を取り出し、シロの寝顔を写す。

「クロ君…変態?」
「うるせー、それとこいつらが起きたら伝えてくれないか?」
「何を?」
「俺が帰ってくるの待っててくれ、百年か二百年か分からないけど絶対に帰ってくる」
「君も相当鬼畜だねぇ、そんなに待たせるのかい?」
「ハハッ、善処するよ、それに神様とやらよりは短いだろ?、じゃあ…な。転移」

俺は転移と唱え、ある場所へ向かった。そう、終焉を見に行くため…
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