不死鳥契約 ~全能者の英雄伝~

足将軍

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第十一章

ルビーの目的

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「ふわぁ~」

窓から差し込む朝日が俺を起こす。
学生寮の部屋に置いてあるベッドとは違うがそれなりに寝心地も良かった。
サイズも大きくて二人なら寝れそうなぐらい…

スースー

「あれ?隣になにか・・・」

俺は裸で寝ているシロを見て一気に覚醒する。そして順々に自分が何をしていたか思い出す。
そうだ、昨日・・・

「んぁ~、あ、おはようございましゅ」

やっちまった。
完全にロリコンだ。
ジルやガルド先生にバレたら何と言われるか・・・
とりあえず、服を着て朝食でも食べに行くか・・・

◆◇◆食堂◆◇◆

ここは領主・・・つまりレイチェルさんの屋敷だ。
いつ領主になったんだよ・・・とツッコミたいが、領主の屋敷とだけあって広い。
そのおかげで俺達が休める部屋も与えられた訳だ。
屋敷には食堂もあり、そこで集まることになっている。
俺とシロが行くと、既に他の人が集まっているようだった。
ジルとガルド先生はこちらに気が付くと、手招きしてくる。どうやらスペースを取っておいてくれたようだ。
その近くにはリンとメリィもいる。
昨日は一人にしてほしいと言って別室で休ませたので、昨日のことは知らないだろう。

「よう」
「おはようございます」

「「サクヤ  ハ  オタノシミ  デシタネ」」

「ファッ!?」
「えっ?」

ジルとガルド先生は打ち合わせでもしてきたのでは無いだろうかと思わせるほどピッタリ台詞を言った。

「ハハハッ、冗談だよ」
「若い男女が一緒に寝るって言うから、と思ったがクロなら何もしてないだろうしな、ガハハッ」

「お、おう・・・」
「・・・」

言えない・・・何もしてないどころか一線越えたなんて言えない・・・
俺達は朝食を摂りながら雑談を交わす。

「ふぅ、うまかった」

朝食を食べ終え、立ち上がろうとしたその時だった。

ドゴオオオオォォォォン

大きな爆発音が聞こえ、警報が鳴る。

『西の門から襲撃です!!数は・・・一人!!』

警報の後に流れた放送は何とも不思議なものだった。
襲撃がたった一人、ここまでならば笑い話で済むだろう。しかし、先ほどの大きな爆発音がその一人が起こしたものだとしたら?
警報を聞いた人たちはそんな化け物を対処できるのか?と、不安を感じていた。

単独での襲撃…巨大な爆発を起こせるほどの魔力…そしてこの時期。

「ルビーさん…なのか?」

アスモデウスであり、フェニクス教の教祖。十分可能性としてはあり得ることだ。それに…理由もわかってる…

ドゴォォォォォォン!

再び貿易都市に響く爆発音が住民たちの不安を更に煽る。

「…いた」

背後から数か月前、王都で一度だけ耳にしたあの女性の声が聞こえた。
それはメリィの親であり、メリィを創り出した女性。

「彼を蘇らせるために…」

この時、俺はレイチェルさんに言われたことを頭に浮かべていた――

「ルビーはあの人を蘇らせようとしてるの…」
「蘇らせる?どうやって?ってか誰を?」
「全ての属性を合わせることによって死者は蘇る、クロも知っているでしょう?」

確かに全属性の魔力を合わせると死者は蘇る…しかし、

「死んでから十五分経った場合は魂が体と完全に分離して蘇らせることは不可能なはずだ、それに全属性といってもルビーさんは闇と水の二属性しか持っていない」
「まだ、あの人は死んでいないのよ。それとクロ、どうしてルビーはわざわざフェニックスの名まで使って宗教を立ち上げたと思う?」

ルビーさんに足りない属性は、風、火、光。フェニックスの属性は風、火、光。
ルビーさんが欲している属性に合致していた。フェニックスの名を使って宗教を開いていれば自然とその属性が集まってくるだろう。

「足りない属性を宗教で…集めていた?」
「けれど、それだけだと魔力量が絶対に足りないの、だから近いうちにルビーはここに来るわ、貴方の魔力を奪いに…ね」
「…わかった。それで、その蘇らせたい人ってのは誰だよ」
「それは――」






「クロ!」

唐突に聞こえたレイチェルさんの声により、俺は現実に引き戻される。
それと同時に目の前に迫っていたルビーさんが手刀を上から降り下げようとしてくる。
手刀、普段の俺ならば「手刀とか、なめてるのか?」とでも言い捨て受け止めるだろう。
しかし、この手刀には触れてはいけない…そう直感が告げていた。
俺は右に避ける。すると降り下げられた手は背後にあった食堂のテーブルへと当たろうとする。そしてテーブルにルビーさんの手が当たる瞬間…テーブルはまるで何も感触がない空気のようにスッと貫通した。
ぶつかる音もなく、テーブルが壊れるわけでもなく、ただ手刀が貫通していた。

「はぁ!?なんだそりゃ!」

ルビーさんは俺の問いに答えず、ただこちらを見る。その目には殺気が無く。どこか辛そうな目だった。同情、罪悪感、悲しみ。それに近い感情、あるいはその感情全てが詰まっているような気がした。まるで大切な人を殺す

「クロ、どいて」

背後からレイチェルさんの声が聞こえる。レイチェルさんは静かにルビーさんのほうへ歩く。
すれ違い様、小さい麻袋を渡される。

「クロ、あとは任せなさい」
「レイチェルさん…?」
「一度くらいお母さんって呼んでほしかったけど…仕方ない、か」
「…え?」

レイチェルさんは最後に何と言ったのか、小声で聞こえなかった。

「ほらほら、さっさと他の子と一緒に逃げなさい。ここは大丈夫だから」

そう言ったレイチェルさんは俺のほうを見ていつものように優しく微笑んでいた。昔から見ていた笑顔、この顔をしたときは大丈夫なんだと自然と納得できた。

「…わかった」

俺はレイチェルさんを信じて転移を使った。どこに行こうとも意味はないとわかっていながら…
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