不死鳥契約 ~全能者の英雄伝~

足将軍

文字の大きさ
上 下
75 / 86
第十章

王の騎士

しおりを挟む
◆◇◆地下・下水道◆◇◆

抜け道は下水道に繋がっており、町外れの墓地に繋がっているようなのだが・・・

「迷った・・・」

下水道は同じような道が多い、目印があれば別だがここにはそんな物は無いようだ。

「まぁ、秘密のって言われるぐらいだし貴族の一部しか知らないんだろうな・・・」

逃げる為にあるのだから目印なんか付けるわけないか・・・

「しかし・・・どうするべきかな・・・」
「お!いたいた!」
「・・・ん?今、ジルみたいな馬鹿っぽそうな声が・・・」
「なに!?クロがいたのか?」
「なんだろう、今、ガルド先生の熊とゴリラを合成したような声が・・・」
「お兄ちゃん!」
「お?今の声はシロか」

俺は振り返る、すると見慣れた三人がいた。

「なんでいるんだ?ジル、ガルド先生、シロ」

俺が平然とした態度で聞くとジルは呆れたように溜め息を吐いた。

「あのなぁ、お前が処刑されるって聞いたから助けに行こうとしたんだぞ?」
「あぁ、ありがとな、でも今は時間が無いんだ。町外れに行かないと・・・」
「町外れか、それならこっちだ」

ジルはこの道を知ってるかのように迷いなく進んだ。

「ってジル、なんでそんなこと知ってるんだ?」
「なんでって・・・俺の一族は王国騎士だぞ?しかも王を護衛を任されるぐらいの」
「あぁ、そういえばそうだったな」

ジルを見てると騎士ってのをついつい忘れてしまう。
・・・と、言おうとしたが胸の内のしまっておくことにしよう・・・

「じゃあ、案内を頼む」
「おう!任せとけ!」

◆◇◆町外れ・墓地◆◇◆

墓地に着くと他の囚人達はもうすでの来ていたようだ。
アドちんが人数確認をしている。

「アドちん!来ました!」
「おぉ!来たかクロ!お前が最後だ!」
「アドちんって・・・何があったし・・・」
「ジル、お前も来てくれるとは心強いな!それと君達は・・・」

アドちんはシロとガルド先生に会ったこと無いんだっけ?

「シロとガルドだな!息子から話は聞いておるぞ!」

あぁ、そうか。
アルベルト王子はシロが好きなんだっけ?

「あれ?そういえばアルベルト王子は?」
「あぁ、フェニクス教が発表してたけどアルベルト王子は好きな女の子を自分のモノの出来る事を条件にフェニクス教に入ったそうだ」

ジルは公表されている情報は大体知っているそうなのでここで聞いておくか。

「・・・その好きな女の子って・・・」

その続きを言おうとしたらシロが震えていたので止めた。

「自分の【モノ】って・・・奴隷制度はこの国には無いだろ・・・」
「それが・・・作るらしいぞ」
「ヤバいなそれ、俺ら捕まったら絶対奴隷に・・・」

反逆罪だの何だの言われるのだろうな・・・と考えているとアドちんが震えていた。

「アドちん・・・?」
「アドルフ王・・・大丈夫ですか?」

俺達は話を止め、アドちんを心配する。
アドちんは目をつぶり、ただ、黙っていた。
そして、目を開けるとーー

「あぁ、大丈夫じゃ、あのバカ息子は元気でやってるらしいな、ハハ、心配して損したのぅ・・・」

アドちんは笑って返した。
作り笑顔であることはすぐにわかった。
今までずっと心配していたのだろう。
それでもアルベルト王子の話題に触れなかったのは殺されていないかと不安で現実逃避をしたかったからだろう。

聞くのが怖かったのはずだ。
何も情報がなかったのが不安だったはずだ。
息子の安否が確認出来なかったのが何よりも恐怖だったはずだ。

それが今、【裏切り】という形で知らされて自分の気持ちが馬鹿らしくなってグチャグチャになってるはずだ。
それを耐えて一人の王として、笑って返したのだ。
民を安心させる為に・・・

「・・・アドルフ王、貴方は立派な王です」
「ジル、ワシは今や王じゃない、反逆者じゃ、その呼び方は止め「いえ」」
「アドルフ王、俺は一度だって王族を守りたいと思った事はありません。」
「・・・ジル?」
「覚えていますか?俺が城を出た日になんと言ったか」
「・・・ハルに王族の守護を任せたい・・・」
「・・・・・・」

ジルはただ黙ってアドちんを見ていた。
そんなジルをアドちんはじっと見て言った。

「だから俺はアドルフ王を守護する事にします。困った事があったらいつでも呼んでください・・・じゃろ?」
「・・・俺は、アドルフ王に憧れていたんです、強くて誰よりも優しい。けれどそれがアドルフ王を今回のように苦しませてることも知っていた。だから俺は王族では無く、貴方を守護したかった。だから言わせてください。俺が守護したいのは王族じゃない。ここにいるアドルフ王だと」
「・・・」
「・・・」
「ジル」
「はい」
「お前から騎士の称号を剥奪する」
「・・・」
「お前は・・・このアドルフ・ラミエルの近衛騎士だ、そして・・・これだけは言わせてほしい。お前は最高の騎士じゃ」
「・・・ありがとうございます・・・」

そしてその夜、俺はアドちんの本名を初めて知った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...