71 / 73
七章、迷宮探索
五話、廊下再会
しおりを挟む
————9:21 食堂前 廊下。
開けた長い廊下の先に食堂へ続く扉がある。
廊下は強化ガラスばりで、外の豪雨を映し出す。
普段使わない時は電気を消しているのだろう、ただ薄暗い廊下には窓から差し込む灰色の色彩しか映らない。
食堂に行くまでにはトイレ、大浴場へと続く扉がある。
「……」
————ジャラリ、と鎖がなる。
「(食堂には、鍵が掛かってる……)」
南京錠がかかっている。
鎖を見るも、特に細工のされている様子はない。
「食堂に入りたい……ですか」
————刹那に。アラカは振り返った。ナイフを瞬間で手をかけ、いつでも抜けるようにポケットの中で静かに息を鎮める。
「あっ、ご、ごめんなさい……」
————中村霧。
アラカの担任の教員は静かに謝罪をする。
「…………」
「…………」
そして両者、静かに見つめ合う。
灰色の雨が一瞬の刹那さえ、永遠に引き延ばす。
「…………」
霧はアラカの隣を進むと南京錠の前に行き、静かに鍵を開けた。
「…………」
「…………」
——ジャラジャラ……——
「……?」
「…………」
鎖を全て外し、霧は悪戯気に口元に指を添えた…。
「秘密、ですよ」
「…………」
そう言われて……アラカはナイフを掴む手をさらに強めて。
「……はい…あり、…が……とう……ご、ざ……」
「あ、大丈夫、大丈夫よ……無理に言わなくて…、いい、ですから……」
そう、消えそうなほどに小さな声で言った。
「それと……その、腕の中にいる動物? は……」
次いで霧が視線を向けたのはアラカの右腕に抱かれている黒竜だった。
「Zzz……」
「…………」
「………あ、そも……いいたく、なけ、れ……ば」
ざーーー……。豪雨は収まらず、霧の心を痛め付けるように降り注ぐ。
そしてややあってから……。
「……飼い主と、ペットの関係、です…」
消えそうな、ひたすら小さな声でアラカがそう呟いた。
それに霧が安堵に胸を撫で下ろし、幾らか安定した様子で話を試みた。
「えと……一応、冒険活動にペットも持ち込みは……その…」
「ペットは僕の方なので大丈夫です」
「え゛」
アラカは霧の手にある鍵へと目を向ける。
「その鍵。他に…持っている方は……どなた……です、か……」
「えっ、ああ、この鍵は……学年主任の私と、あとセンターの人ぐらいですよ。
合計で二つです」
霧は困惑した様子でそのまま回答した。
「(……鍵は二つ。もう一人のセンターの人も見てみたい)」
アラカは黒竜を抱き寄せて、思考を回す————雨はまだ、降り注ぐ。
開けた長い廊下の先に食堂へ続く扉がある。
廊下は強化ガラスばりで、外の豪雨を映し出す。
普段使わない時は電気を消しているのだろう、ただ薄暗い廊下には窓から差し込む灰色の色彩しか映らない。
食堂に行くまでにはトイレ、大浴場へと続く扉がある。
「……」
————ジャラリ、と鎖がなる。
「(食堂には、鍵が掛かってる……)」
南京錠がかかっている。
鎖を見るも、特に細工のされている様子はない。
「食堂に入りたい……ですか」
————刹那に。アラカは振り返った。ナイフを瞬間で手をかけ、いつでも抜けるようにポケットの中で静かに息を鎮める。
「あっ、ご、ごめんなさい……」
————中村霧。
アラカの担任の教員は静かに謝罪をする。
「…………」
「…………」
そして両者、静かに見つめ合う。
灰色の雨が一瞬の刹那さえ、永遠に引き延ばす。
「…………」
霧はアラカの隣を進むと南京錠の前に行き、静かに鍵を開けた。
「…………」
「…………」
——ジャラジャラ……——
「……?」
「…………」
鎖を全て外し、霧は悪戯気に口元に指を添えた…。
「秘密、ですよ」
「…………」
そう言われて……アラカはナイフを掴む手をさらに強めて。
「……はい…あり、…が……とう……ご、ざ……」
「あ、大丈夫、大丈夫よ……無理に言わなくて…、いい、ですから……」
そう、消えそうなほどに小さな声で言った。
「それと……その、腕の中にいる動物? は……」
次いで霧が視線を向けたのはアラカの右腕に抱かれている黒竜だった。
「Zzz……」
「…………」
「………あ、そも……いいたく、なけ、れ……ば」
ざーーー……。豪雨は収まらず、霧の心を痛め付けるように降り注ぐ。
そしてややあってから……。
「……飼い主と、ペットの関係、です…」
消えそうな、ひたすら小さな声でアラカがそう呟いた。
それに霧が安堵に胸を撫で下ろし、幾らか安定した様子で話を試みた。
「えと……一応、冒険活動にペットも持ち込みは……その…」
「ペットは僕の方なので大丈夫です」
「え゛」
アラカは霧の手にある鍵へと目を向ける。
「その鍵。他に…持っている方は……どなた……です、か……」
「えっ、ああ、この鍵は……学年主任の私と、あとセンターの人ぐらいですよ。
合計で二つです」
霧は困惑した様子でそのまま回答した。
「(……鍵は二つ。もう一人のセンターの人も見てみたい)」
アラカは黒竜を抱き寄せて、思考を回す————雨はまだ、降り注ぐ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
54
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる