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七章、迷宮探索

四話、活動翌日

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 ——冒険活動 二日目 嵐——

 ————9:01 自室

 二日目にしても嵐は止まず、生徒たちはセンターでの立ち往生を余儀なくされた。
 部屋で待機させるには生徒の不満も溜まるだろう、加えて最近は事件続きで生徒にも不安が積もっていた。

 ゆえに。

「(センター内ならば何処に行ってもよし。規定の時間には部屋に待機せよ……ね。
  現状況からすれば少しありえない対応のような気もする)」

 学校側から見れば自室待機にさせたいはずだろう。
 怪異による殺人事件は例年では群を抜いており、過去のパンデミックさえ容易く覆す勢いで殺戮が続いているのだ。

 ————学生が死ぬかもしれない。そんな状況を踏まえた上でのこの対応は明らかに異質だった。

「…………考えても、わからない……か」
「…………」

 膝に〝ある生き物〟を乗せたまま、フローリングに座り込みアラカは独り言をこぼす。

「(怪異……か……暴雨が病んでないあたり、まだ複数の〝楔〟があるとみた方がいいのかな)」

 口裂け女、くねくね、これらは結界を維持する魔力装置。それを崩しても尚、結界は治らない。

「(……アレらは、ある種の術式なんだろう。
  複数の〝楔〟を呼び出して……結界を作ったやつがいる)」

 そして、だからこそ……それを捕まえなければ結界は晴れない。

「(……捕まえよう)」

 ————アラカは腕の中にいる生き物をぎゅっと抱き締めた。

「うぎゅ……」
「あ、ごめん」
「……Zzz……」

 腕の中にいる生物はずっと眠ったままだった。
 アラカはその生物をお守りがわりに抱き上げたままであった。

 そしてしばらくはずっとそうであろうという予感がアラカにはあった。

「(そもそも……怪異は〝どうやってトレーを用意できた〟のだろ)」

 ————赤子の姿造りは誰が持ち込んだ?

「(あの場所は食堂。
 生徒も行き交う、センターの人もいる。
 そんな中で、どうやって犯人は〝予定されてないトレー〟を用意できた……?)」

 目的は? 手段は? 実行犯は? 瞬間的に幾つもの謎がアラカの脳裏に浮かぶも全てが霞に溶ける。

「っ……情報が何もかも、不足してる」

 ゆえに次にアラカがとる行動は決まっていた。

「(……食堂、行ってみよう。
  情報を集めるんだ……)」
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