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六章、事件っ!

七話、おおあめ

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◆◆◆

 豪雨の中、アラカとウェルは進んでいた。
 目標は白い人型の何かを探しに、である。

「…………」
「…………」


「…………ごめんなさい、連れてきて,もらって」

 ————尚,同行者一名。

 豪雨の中でも、アラカを中心にドーム状の膜があり、雨を弾いていた。

「……これ」

 流石に不思議に思ったのか、如月は声を漏らす。

「魔力障壁を膜にして、広げてるのですよ」
「え、魔力……? って、確か使うことが、できなくなった……って」

 ピクっ、とアラカは反応する。
 少しだけ怯えながら、後ろめたさを殺しながら……声を続けた。

「少しだけ……新しく増えた、のですよ。
 ただ、世界に供給できる量じゃないので……」

「あ、いえ……その……ごめんなさい。
 嫌なこと、言って……」

 その気はないのだとしても、外側からしたら責めているように見える……と考えたのだろう。
 如月は謝るもアラカは首を振った。

「今のは僕が間違えていた。
 気にしない、で…」

 気遣いしすぎる如月の心境を汲んで、アラカはこちらも配慮が足らなかったと謝る。

「以前の魔力量が10兆使っても余りあるほどに増やしましたが、今は500ほどなのですよ。
 ……どうやっても供給が間に合いません」
「すごい減ってる……」

 雨に濡れた木々と、泥濘む足元に気を付けながら進む。

「普通の、怪異は、だいたい……100ぐらい、だから、それでも、おおい」

 ウェルがそこで初めて口を挟む。気のせいか、声に少しだけ検が混じる。
 絶賛人嫌いの中にいるウェルからすれば、事情を聞こうとする如月は敵に見えたのだろう。

「増やす方法は、ある、けど……正直、地獄。しようとして、死んだ子もいる……」

 その程度には危険な方法なんだぞ、と怒り混じりにウェルが言う。
 お前ら程度に分かる苦痛じゃない、そう言外に如月を突き刺す。

「そんな……に……じゃあ、菊池、さん、は………あ………ごめん、なさい」

 どうやって、と言おうとして……けれども続きを言えなかった。

 ————死ぬレベルの何かを、ずっと繰り返した。と気づいてしまった故だ。

「(この、小さな背中に……全人類が……甘えてきたんだ。
 今まで、ずっと……ずっと……)」

 その事実に、如月は胸が締め付けられる想いになる。

「…………他にする人がいなかった、それだけです」

 やがて、アラカは雨音の中でそんなことを返していた。




「……どうして……」


 如月はそこまで聞いて……何故なのだ、と嘆くような声を吐き捨てるように呟く。

「……今、申し上げたと思いますが……」

「いえ、そうじゃなくて……する人がいなかったのも、分かるんです、が」

 死ぬ危険すらある苦痛を、この少女は、何故、どうして、という謎が如月の中では深まるばかりであった。

 その謎とは。

「どうして……そこまで、するのかって……」

「………………」

 ざーーーーー     ざーーーーーー

    ざーーーーー

              ざーーーー

ざーーーーーーー………


 雨が降り止まぬまま、三名は進み……やがて目的地付近になると。


「…………そろそろ、例の場所です」

 そう、呟いた。
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