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三章、ノストラ

六話、やってきたよ

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◆◆
 校庭を見渡すことの出来る道をアラカは歩く。校舎へ続く道をふと歩く。
 曇り空の下、靡く髪を指でそっと弄る。

「……………」

 ——銃弾がアラカの肩を撃ち抜いた。
 吹き出す血に、銃傷を気にも止めずまた歩き出す。

「……うそ」

 映画のような光景に驚き、ぽそ…と校門の外から声が聞こえる。

「…………」
「え、あ、あれって」

 校舎の中にいる何者かの声がアラカに気付いたのか銃弾が止む。

「…………」

 一歩踏み出す。ぽた、と血がこぼれ落ちる。
 二歩踏み出す。じわ、とブラウスを赤が染める。

「…………」

 三歩、四歩と静かに歩を進めるアラカ。

 ふと、立ち止まり、校舎の遥か上を眺める。

「……………そう」

 何に頷いたのか、誰にもわからないままにアラカは声を漏らす。

 只々、その姿は幻想的で。

 虚無の瞳が、微塵も揺れ動かずに。
 包帯だらけの満身創痍の体で
 ただただ疲れ切った様子のまま。

「…………」

 バリケードをあくまで優しく乗り越えて、

 靴箱で靴を履き替えて、アラカは歩き出した。
 靴箱を過ぎて、階段を登る。探してる場所は、何処か既に分かっていた。

「…!? え、あ、き、君……は……」

 階段の踊り場、銃を持った男が立っていた。
 恐らくテロリストの一人なのだろう。

「こんにちは。要求、通り…きましたよ」




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