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ダンジョンの『現実』

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次の日の朝───────────

いつものように宿の部屋からパーティーメンバーが1人、また1人と起きて来る。僕はというとまた呪文詠唱の本を読んでいたので起きるのは遅いほうだった。

手で四角を作ると、持ち物とレベル、スキル、スキルポイントなどが見てとれる。スキルの振り分けが6つも余っているので、あとで忍者アリンにアドバイスを聞こう。

侍は一気にレベルアップしたせいか、モチベーションが高いまま早起きした。スキルポイントは力に極振りしている模様。

しかしレアモンスターの宝箱は本当においしい。そのおかげで宿に連泊してるといってもいいだろう。昨日みたいな挟み撃ちだけはご勘弁だけど。

忍者アリンが、盗賊ナターシャの部屋をノックすると、

「どうぞ」

アリンが部屋に入ると、ナターシャが窓に体を乗り出して、弓矢を放っているようだった。近づくとカラスの死体が地面に落ちていた。

「あなた弓使いなの?ってゆうかなんでカラス殺してるの⁉」

「いけませんか?」

「カラスだって必死に生きてるんだよ」

ナターシャの笑みが消える。

窓に腰かけていた体を床に下ろし、アリンにナターシャが近づいてささやいた。

「…そんなだから3階止まりなんですよ」

「ナッ…」

ナターシャは弓入れを抱えながら、また笑みを浮かべ部屋を後にした。

アリンには充分意図は受け取れた。実際それが弱点なことも見抜いていた。

ナターシャはデバフといい、鳥にヒットさせているので、相当高いレベルの猛者に見えた。

それゆえに綺麗事(きれいごと)はモヤになるだけという現実を打ち払わなければならなかった。

1人死ぬだけでパニックになり、態勢が崩れてゆく。

昨日のレアモンとPTの挟み撃ちは、よく生き残れたと今更ながら思う。しかしそれも去っていった忍者がいての事。

「あーもう!考えていてもしょうがない!徹底的に生き残るのみ!」

手の平で頬を叩くと、アリンも部屋を出た。

「おーい!早くこーい」

宿の出入り口から皆の声が聞こえてくる。

「遅れてごめーん‼」

「それより今日は何階まで行くん?」

笑顔をふりまきながらナターシャが言った。

「今日は5階までいきませんか?」

パーティー内からどよめきが起こる。

「マジで言ってんのか?」

「私、5階のマップだけは持ってますから、これを参考にすれば一気にテレポで5階までいけますよ」

「それ、いただきま~す」

ピピンがひょいと地図を奪い取って頷きながら眺めている。

今日は1階から1気に5階へ飛ぼうとしている。ナターシャはもしかすると最新階の10階まで行ったのではないだろうか?という疑問さえ浮かんでくる。

さてこのPTはどうなるのか。僕には全く想像できなかった。そう言えばスキル割りの相談もまだだったのに、ドタバタしていてとても相談できる状況じゃない。

僕は祈りながら天を仰いだ。
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