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オーバエージ

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ヨーコの回想

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小さな漁港街フィフタへ1台の車がスピードを上げて走っている。
運転手はタバコを吸っているヨーコ。チラと隣に目を向けると爆睡中の猫族、ネコパンチ。
ヨーコはこの居眠り野郎との出会いを回想しながら車の窓を半分上げると、車内にまん延しているタバコの煙が一斉に吐き出されてゆく。

ネコパンチとの出会いーーーそれは二人で強盗をするきっかけにもなった無残な回想ーーーーーーー

当時19歳だった私は、小さい集落で生まれ育ち、居心地の良い場所でもあったので生活には全く困っていなかった。
そこに、放浪の旅を続けている気象強行士の伝道師が現れたのが大きな転換点だった。
「必ずなれるわけではないぞ?」
そう言われても私は気象強行士には大きな魅力を感じずにはいられなかった。まるで光輝くガーネットのような閃光のようにキラキラ輝いていたのだ。
志願者が8名ほど現れたので早速放浪者は修行に入った。傘を忘れるなと言われ、自前の傘を持参しつつ放浪者の元へ急いだ。
「豪雨!」
放浪者が天を指差すと、とたんに村全体が豪雨に見舞われた。傘を差しながら私は興奮した。凄い。私は素直に感動していた。
そこから修行の期間に入ってゆく。あらゆる天候を網羅した分厚い書物をむさぼるように読んだり、手を天に指差す時のオーラを発動させなければ失格となる。
応募した8人の内、半分が挫折して去る中、私は必至に修行を続けた。放浪の男は私に厳しい口調で言った。
「君には才能があるかもしれない。でもそれはインスピレーションだから気を抜くなよ」
日々修行を続けていた私は、全集中で天を指差す時にオーラを発動する事に成功したその瞬間、
「私ならできる。いや、やってみせる!」
「もうすぐだ。こりゃまいったな。ここまで早く習得するとは…」
27の気候が書かれた全てを読み込んだ私は、外に出て天を仰いだ。深呼吸してから手を振り上げる。放浪者の男も神妙な顔で様子をうかがう。
天に指を差すと青いオーラに包まれる。
「いいぞ、そのまま全集中で行け!」
「雷雨っ‼」
そう発した瞬間、村全体が雷雨に包まれた。雷がそこかしこに落ちて来る。雨でびしょ濡れになった私は、涙と雨が一緒に顔を伝っていく中、放浪者は
「完璧だ。よく頑張ったな!今日からお前は気象強行士だが、日々の鍛錬だけは欠かすなよ」
残った他の3人は能力を使えずに終わったので、結果的に気象強行士は私だけになり、放浪者は村から去っていった。

その後の私は村が干ばつした時や作物のために水が必要な時、雨を降らせて村人から信頼という名の絆を築いていた。
しかし平和は長く続かなかった。私の住む集落に強盗団が大勢押し寄せて来た。7、8名の強盗団だったが、民家に火を放ち、たまらず出てきた人々を銃でやっつけながら、金になりそうなものを貪る悪逆非道な集団だった。
もちろん私も素早く家をとびだした。
「どうする気?」
母親の声も聞こえないほど私は走り続けた。強盗団にはまだ気づかれてない。
すると、住民数名を相手に、素早い銃さばきで倒してる黒服の猫族を発見した。ガンカタではなくニャンカタだと後々気づいた。
私は燃やされている家を鎮火させるため、天に指を伸ばし、
「豪雨‼」
と、叫んだ瞬間に猫族が私に気づいた。溢れる豪雨が火の粉をたたんでゆく。
猫族は銃をクルクル横に回すとホルスターに収め、こっちにやってきた。
(殺されるっ…)
旋律を覚えた私はその場を動けなかった。
猫族の第1声は
「すごい異能力使いだにゃ!」
「えっ…?」
「ウチの強盗団にはいらにゃいか?ここはもう手遅れだからにゃ」
あまりの突拍子ぶりに、ポカンとしてると、
「今のメンバーは正直ダメダメなんにゃ。2人で荒稼ぎしよう!」

そうして2人の旅は始まったのだ。20歳を超えて酒とタバコが手放せなくなっていた。気象強行士の腕も上がってゆき、すでにオーラを発動させなくとも、気象変更ができるようになった。が、連続発動はパワー不足で出来なかったが強盗するのにはそれで十分役には立っていた。
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