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64 有名プレーヤーたち

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深夜11時50分。
イベント開始10分前にプルミエの中央広場でクロとサーシャと待ち合わせだ。ハニーさんとホノカおねーさんは明日参加予定らしい。

「おお、サーシャ装備新しい~」
「えへへへ、ついに自作始めました」

サーシャはもともとコスに興味のある人だったもんね。彼女はドゥジエムの宿が拠点なので、ドゥジエムの洋装店に入り、お針子のクエをこなしているそう。
サラサラストレートの羊人のサーシャは自作の白いローブに薄いグレーのふんわり膨らんだミニスカート。白いニーハイと、デザインは素朴だけれど彼女が好きなファンタジーや魔法少女ものに出てくるスタイルを模していてカワイイ。

「もーちょっと裁縫のLv上がれば防御力高いもっと凝った服が作れると思うんですよ。でも魔法、物理防御アップの付与付きです。あ、付与はハニーさんにお願いしました。なので見た目より高機能です!」
「やっぱ、ベータ勢侮れぬ…」
「そうちょくちょくは頼めませんよね。今、ハニーさん、ハウジング購入に向け軍資金集めしている真っ最中だそうですよ」

ハニーさん社会人だもんなー。忙しいもんね。良かった、私もイベント前に指輪や王冠買えて。

「杖も新しいものを入手です! これはドゥジエム貴族街のお店で。なんと水魔法の効果、40%アップ付き」
「へー、さすがドゥジエム」

彼女が見せてくれた杖は魔法具屋や武器屋では見たことないデザインの、瀟洒な杖で、光の角度で青く光る。凝っている。
私はドゥジエムは観光でチラとしか歩いていないからな~。

「これ、プレーヤーズメイド?」

クロがまじまじと見た。

「そうなんですよ、クロ君。やっぱ、貴族街ありましたね。私、プルミエ貴族街に出入り可能の通行証手に入れたじゃないですか」

土地の付属として入手したんですとサーシャは言う。

「それを持っていると他の街の貴族街も出入り自由になるんです。で、ドゥジエムの貴族街行きました! 町のBGMが、アレンジ違って高尚な感じで街並みが違った! そして高級店でプレーヤーズメイドがふんだんに並んでいました! 高額でしたが、NPC製にはないデザインがいっぱいです」

(うわ~、なんか楽しそう~。サーシャがゲーム満喫してる~。私ももう少し、世界広げたいかな…)

「……フェザントも、新世界行くじゃん。俺、正直うらやましいよ?」

顔に出ていたのかクロがこちらを見て言った。

「まあ、俺もその内 行くし」
「私も! 私もです! 仲間外れにしないで!」

慌てて口を挟むサーシャさん。
最近、サーシャめんこいな。

そんな風に他愛ない会話をしていると、ワールドアナウンスが流れた。


《――レイドイベント、"プルミエ冥界門からのスタンピードを阻止せよ!"が本日深夜0時より開始です。プルミエの町へのモンスターの侵入を阻んでください。プルミエに住むNPCの被害率が90%を越えたらプルミエは消滅します。冥界門のボスモンスターは討伐しても、明日深夜0時に同じ場所にリポップします。ボスモンスター討伐参加は一般モンスターより高得点です。2日間通してのスタンピード対策の貢献度でランキングが決まります。ランキング上位には特典がございます。ふるってご参加ください。期間中はイベント参加者以外はプルミエとプルミエ冥界門入場不可となります。不参加のプルミエのセーブポイント利用者は強制的にファンシー噴水前がセーブポイントとなります》

アナウンス後、眼前に選択肢が現れた。

『"プルミエ冥界門からのスタンピードを阻止せよ!"に参加しますか?』

――はいっと。

『開始地点を選んでください。 プルミエの壁内(生産職向け)/プルミエ冥界門前(戦闘職向け)』

この選択肢は想定しておらず、クロとサーシャの顔を見る。
二人ともコクリと頷く。
今回、二人とパーティー組むことにしたのは、全員ダシノモト目当てだ。なので行先は決まっている。

私は"プルミエ冥界門前(戦闘職向け)"を選んでタップした。




一瞬の視界の瞬き。



眼前に、あの天国門そっくりの造形の――けれど鈍く黒い装飾の――プルミエ冥界門が現れた。

「うわ、結構大きな門ですね」

真横からサーシャの声が聞こえた。

「うわ! サーシャ、いた! 良かった、プルミエ壁内選ぶかと思った」
「なんで驚くんですか!? パーティー組んでいるんだから当然でしょ?」
「一人だけプルミエ壁内選んでいたらちょっと笑ったかも」

クロも言うのでサーシャが私にどういうイメージを~と力説している。
過去のあなたの行動で意外な選択すること知っているからですよ。

「まあそれより見てよ。すごい人だね」

冥界門前には参加プレーヤーが所狭しと並んでいる。なんかアレ、マラソンのスタート地点みたい。

それでも知人の顔は見つけられるもので、先頭の、冥界門近くには姉やペケポンさん、マーヤさんたちパーティーがいるのが見えた。その近くに結構迫力な黒い騎士姿の人たちがいる。マーヤさんが親し気に言葉を交わしているところを見ると、ベータ勢かな?

「あの人たち、有名クランですよ。【深淵に連なる騎士団】って言うんです。さすが、マーヤ。あそこのクランマスターと顔見知りなんですね」

私が珍し気に見ているせいか、マーヤさんのファンのサーシャが好奇心隠さず解説してくれた。
クロはへーと今知った、みたいな顔している。

(そういやクロ、サーシャにマーヤ…文月麻耶の弟だって事、話していないのかな?)

チラとクロを覗き見ると軽く口元に人差し指を当てたのでこれは内緒なのだと悟った。

「へ、へー、他にも有名な人いる?」
「そうですねぇ…、あ、あの人、王都では有名なテイマーです」

サーシャは色鮮やかなオウムを肩に乗せた剣士を指さす。おお、あのオウム賢そう。テイマーは人気職なのでファンシーでもよく見るが、あんな大きなオウムは初めて見た。

「サーカス団のクエやっていて、すごい集客なんですよ。ちなみにそれこそクラン名が"単機能サーカス"って言うんです。ソロクランなんですよね。プレーヤー名はシングルさん」
「単機能…。余分な機能は捨て去ったのか…。プレーヤー名含めて潔い」

なんか感心。極振りでもしてんのかな?

「テイマーはテイムモンスターがパーティー枠ひっ迫しますからねえ」
「割とドール種連れ多いね」

クロも周囲を見て言う。クロもファンシー中心なのでドゥジエムや王都側で活動しているプレーヤーは珍しいらしい。

「1/3の剣士のドール種はプルミエとの街道付近でも最近よく見かけるよ。私もクラウスさんから剣士タイプ育てろ言われているんだよねー…」
「あ、あの人、狩人ですよ。ドゥジエムでたんま~に見ます。極レア!」
「一桁だもんね…」

言いながら、親近感。私、自分以外の狩人初めて見た。かの人は複数の小型のわんこを連れている。猟犬なんだろうけれど。

「あれ、みんな小型犬…?」
「狩人のペットって、サイズに制限でもあるんでしょうかねぇ?」

思えば私のペット枠も小さい子ばかり。

「あと、有名なのは…」

キョロとサーシャが周囲を見渡し、そしてクロが後ろを見て呟いた。

「あそこ、アリアドネがいる」

その呟きと ほぼ同時に現実時間の時計の針が0時を指し、厳かなる音楽と伴にプルミエ冥界門が開いた。


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