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8 聖紋
しおりを挟むアレクレットが逃げないと約束し、クラウディオは中出しすると約束しあって、抑え込みの体勢は解除された。
男同士がセックスをするには腹の中を綺麗にする洗浄という工程を外すことは出来ないし、アレクレットはその準備もしてきた。
道具と下剤が入っているカバンを探しに行こうとしたら、クラウディオに再びベッドに押し倒された。
「どこに行く? 聖紋を見せろ」
ベルトのないズボンがパンツと一緒にずり降ろされて男の急所がさらされた。慌てて手で隠したら『これからセックスするってのに何を恥ずかしがる必要がある』と手を叩かれた。
クラウディオの視線はへそから下の聖紋しか見ていないとわかっているが、それでも恥ずかしい。胸の前で手を握り隠したくなる衝動を押さえた。
「これが、『聖紋』なのか?」
「・・・ガッカリした?」
アレクレットの腹にある聖紋は、数本の線がハートっぽいフレームを作り、その周りに申し訳程度の飾りがついているだけのシンプルというよりスカスカの寂しい模様をしているのだ。
父のオリエンタル模様のような派手な聖紋を知っているアレクレットは簡素すぎる自分のものを恥ずかしく思うが、それを知らないクラウディオは始めてみる聖紋に興味津々。模様を指で撫でたり押したり、皮膚を伸ばしてみたりと真剣な表情をしている。
「これは・・・入れ墨とは違う。このデコボコとした感触は真皮層が裂けて出来る肉割れに近い。でも、肉割れと違って、肉を寄せれば溝が埋まると言う感じではない。なんというか、真皮層を薄く削り取ったような・・・」
ブツブツと喋るクラウディオは完全に自分の世界に入っている。あまりに真剣なクラウディオを前に、秘部をさらす恥ずかしさも薄れて緊張がなくなったアレクレットは肘を支えに自分の腹を覗くクラウディオを眺めていた。
何かに気がついたらしいクラウディオがブレスレットを外して模様に手をかざした。はっきりとは解らないが、ほんのり模様が発光しているような気がする。
「ああ、やっぱり。すごい。この模様に魔法が詰まってるんだ。これが妖精王の魔術式なのか・・・文字として認識出来ないけど、魔法の属性くらいはわかるな。・・・んー、水関係、治癒系もあるな。それからもっと高度な・・・これは、空間魔法か? なんでそんな魔法があるんだ? 男にはない子宮を作るためか?」
「祝福持ちが妊娠しても腹は大きくならないよ」
きっと、妖精王の祝福に興味がある人間なら知りたがることだろうと、アレクレットは父が妊娠中だった頃の聖紋の写真と父の現在の聖紋の写真をスマホに入れておいたのだ。
クラウディオに見せれば、予想通りの反応が返ってきた。
「君の父親の聖紋、赤いぞ? 聖紋は色が変わるのか?」
「色だけじゃない。聖紋は成長とともに模様が変わるんだ」
アレクレットは自分の腹を指さしながら成長とともに変化した模様の経緯を説明した。
アレクレットの模様は、子どもの頃は白い線が二本斜めにあるだけだったものが少しづつ長さが伸びて、曲線を描き始めちょっとした葉っぱや蔓の渦巻き模様ができ始めたのは大学に入ってからだった。
一方、父の模様は、子どもの頃は白い線が二本あるだけだったが、アレクレットと違うのは、父の聖紋は思春期に入った頃からどんどん複雑な模様に変化し、現在と同じギザギザの葉っぱが生い茂るオリエンタルっぽい聖紋が完成したのは18歳の時だったと言う。しかも、ほんのりピンク色をしていたので『エロマンガの淫紋みたいだ』と同級生たちにからかわれて悔しい思いをしたと語っていた。
「この写真の中央に小さい花の蕾みたいなのがあるだろ? この模様が妊娠してから出来て、模様が大きくなるだけで腹が膨らむってことはなかったって。それで、花が開くと子どもが産まれるんだってさ」
「どうやって産まれてくるんだ?」
「知らない。『お前が妊娠したら教えてやる』って言われた」
「そうか。それで、これが妊娠中の聖紋、こっちは今現在の聖紋だったよな? 妊娠中ほどではないが、君の父の聖紋は今も赤いままだ。あんたの見落としそうなくらいに薄い白とはまるで違う。何の差なんだ?」
「さぁ? わかんない」
クラウディオは再びブツブツと喋りながら模様を触りだしたので、アレクレットは腕を広げてベッドに寝転がった。
すると酒を飲んだせいもあって眠くなってきた。
「あのー、そろそろ始めない? 僕、寝ちゃいそうだよ」
「寝てくれていいぞ。その間に聖紋のことを調べておくから」
「・・・ちゃんと、起こしてくれる? うっかり研究に没頭してたら朝になってたとかダメだよ?」
「わかってる。さっさと寝ろ」
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