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新婚旅行編

新婚旅行編:二日目の昼・R18

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 サウナを諦めてそそくさと部屋に帰る二人に会話はないが、言葉がなくともお互いの状態は繋いだ手の熱量から図り知れる。


 カードキーを差し込み、ロックが解錠される僅かな時間さえも焦れったい。
 ランプが赤から緑に変わった瞬間にドアノブを引いて扉の内側に飛び込むように入り、勢いよくドアを締め、二人は抱き合った。
 お互いがお互いの羽織を脱がせ、浴衣をはだけさせてしっとりと汗ばむ肌を揉みしだき、舌を絡める。

 理性が布団に早く行けと命令しているのに、興奮はどんどん高まって熱をこすりつけ合う事しか出来ない。
 あまりの興奮に慶介は酒田の太ももに押し付けるだけでも達しそうになったので、酒田の肩に歯を立て、内ももに力を込め射精感に耐えて震えた。

「はぁはぁ、勇也ぁ。ベッド・・・」

 脱力した慶介を抱きとめた酒田は頼まれたことを無視して、裾を捲りあげて臀部を揉み、後ろの穴に指を掛けた。

「やっ、まって、部屋入ろって・・・」
「待てない。ここでする。」
「ここ、玄関だぞ!?」
「いいじゃないか。家じゃ絶対に出来ないシチュエーションだろ?」

 そう言われて、慶介は抵抗を止めた。

 玄関で即挿入というシチュエーションは、無理矢理押し入るパターンにしろ、盛り上がった二人が行為に及ぶシーンにしろ漫画でよく見た。ただ『マンションの住人に声、聞かれてもいいのか?』なんてセリフが入ったりするのでその点だけは嫌だと思っていたが、ここなら他の客がこのフロアに入ってくることはない。

「どうする? ベッドがいいか?」
「・・・ここでする・・・」

 ニヤリと笑った酒田は慶介を玄関のドアに手をつかせて、後ろから慶介の布を押し上げる男の徴を擦り上げた。

「前触んないで・・・すぐイっちまう・・・」
「そうか。ならもう触らないでおく。」

 酒田は中指を口に含んで唾液にまみれさせ尻の間に差し込むが、そこはまだ潤んでおらずアルファの長物を受け入れるには難がある。
 すると、酒田はネックガードのきわをベロリと舐め、音を鳴らして吸い付いたと同時に、誘引フェロモンを放った。
 項からの痺れるような快感とフェロモンに脳が蕩けて体の中の生殖器官がキュゥっと反応する。
 つぷつぷと出し入れされていた指が溢れてきた潤滑剤に乗って滑るように中に入り、前立腺を探り当てられ声を上げる。

 酒田は誘引フェロモンを出し続け、慶介の後ろは3本の指でかき回されて、溢れた分泌物は酒田の手から滴り落ちるほどにあふれて止まらない。

「すごいグチュグチュいってる・・・」
「もう十分か。慶介、お尻突き出して。」

 捲り上げた浴衣が落ちないように手で押さえ、酒田が自身の反り上がった長物をクチュクチュと濡らすのすら待てずに、更に尻を突き出してねだる。

「勇也、早く──っん、アアァッ!!」

 あてがわれたと思った時には中を突かれていた。
 パンと音を立てて肉同士がぶつかり、酒田は慶介の尻の肉を鷲掴みにして欲情を何度も打ち付けた。

 激しい抜き差しで擦れあう滑る粘膜は熱く、爪を立てられた尻はちょっと痛い。
 だが、それは酒田がこの身で興奮している証拠だと思うと気分がいい。「フフフッ」と慶介が笑ったことから余裕を読み取った酒田が意地悪な顔になり、慶介が一番弱い中の入り口をグリグリと責めた。
 唐突に与えられた刺激は強く、閉じた入り口を抉じ開けられる感覚に「ひぐぅ!」と背を反らせ、ガクガクと足を震わせた。

「あ、あ、入るっ、入ってくるぅ・・・!」
「クッ・・・ふっ、・・・!」
「んああぁ、あぁっ!! 勇也っ、勇也ぁ!」
「はぁ、慶介・・・っ」

 酒田はドアについた慶介の手を後ろから覆いかぶさるように押さえつけて、抉るような腰つきでガツガツと堀り、慶介も自分の意思では止められない揺れる腰を振って、欲情をぶつけ合った。


 気持ちよさに声をあげていた慶介に、ふいに酒田が耳元で囁やいた。

「慶介、あんまり声出さないほうが良いかもしれない。客は来ないが従業員はいるかもしれないから。」
「そんなっ──、あっ、ああっ、ちょ、止まって、ぁんッ、んぅッッ!!」

 まさか、人がいないと思っていたのに。さっきまでの声を聞かれているかもしれないことに慶介は白肌を赤らめて恥じた。


 酒田は一生懸命に声を耐えようとする慶介の姿に興奮して、慶介の中を貫く杭に更に血が集まりグンと固さを増したのを感じた。

 そこからは欲望のままに激しく抽挿を繰り返す。

「んっ、んんっ、ぃくっ、いぐぅ・・・」
「ああ、俺も、もう・・・ッ」
「──ぅ、くッ~~!!」

 一段と強く押し上げられて慶介は中で達した。

 締め上げられた肉棒も欲望を放ち、酒田がブルッと震える。重ねていた手が離れ、腹と胸に回されてキツく抱きしめられ、息が苦しい。
 この息ができなくなりそうなくらいのハグが今日は殊更たまらない幸福感を感じさせられて、もっと強く抱きしめて欲しいと思い、首をひねって唇をついばみ「キスして」と言った。

 酒田の手が緩んだ隙に慶介は体を反転させ、酒田を壁に押し付けて唾液を与え合うようなキスを仕掛け、攻め手は逆転する。
 慶介のキスの激しさに比例するように酒田の腕はより強く抱きしめてきて、慶介の脳は空気が足りなくなり酸欠で頭がフワフワしてきた。

 少しずつ勢いを失う慶介と反対に、精を放ったばかり酒田の欲棒は再び固く鎌首をもたげ始め、攻守は再び入れ替わった。


 酒田は慶介の腕を自分の首に回させ、自身の帯を解き横に放り、慶介の帯も片手で器用に解いてズルズルと腰を落としていったところで動きが止まり、酒田が眉を潜めた。
 壁に押し付けたまま対面で挿入しようとしたのを慶介のパンツが邪魔をしたのだ。
 不満げな顔をする酒田が可愛くて慶介はフッと小さく笑った。
 すると、酒田はムッとした顔になって慶介を玄関の狭い廊下に転がし下着を乱暴に脱がした。

「ははっ、靴下だけの何が良いのかって思ってたけど、確かにエロいな。」

 慶介が身につけているのは乱れた浴衣と靴下だけ。いつもならそれが何だと言い切れるけど、改めて指摘されると無性に恥ずかしい。
 脱いでしまおうとする手を止められ、落ちていたバスタオルが適当に丸められて腰の下に差し込まれた。

 冷えた床にあたる背中と肩は冷たいが、太ももを掴む酒田の手は熱く、持ち上がった尻にあてがわれ慶介を貫く杭はもっと熱い。
 慶介の反応を見るように今度はゆっくりと挿入されて「はぁあ、んぅ・・・」と声が出てしまったことに焦り、口を手で覆った。


 そこからの酒田は意地悪だった。

「唇噛むな。」
「だったら手ぇ離し──はぅうっ、アアッ、ぁ、ンンッッ!!」

 入り口から前立腺あたりの浅いところばかりを責められて、口を塞いでいた手は恋人繋ぎで床に縫い付けられ、もう、気持ちよさに声が抑えられない。
 
「もぉ、やだ・・・一回止まってぇ・・・」

 慶介はちょっと本気で泣きが入った声でギブアップを宣言した。そうすると酒田は動きを止めて手も解放してくれた。
 軽い感じで「ごめん」と言いながら頭を撫でる酒田に、唇を尖らせキスを望む。言葉にせずとも伝わる希望はリップ音を鳴らすキスで叶えられ、波立った感情を落ち着かせたところで酒田に言われた。

「ごめん、慶介。さっきのは嘘だ。従業員はコールした時にしか来ないから、誰かに声を聞かれることはない。」
「は? ・・・はぁッ?! こん馬鹿ッ、めっちゃ気にしたのにッ! クソッ!!」

 ボカスカ叩く慶介。「いででで」と言いつつも笑う酒田がまた意地悪な笑みを浮かべ、ヌルっと腰を引いた。

「んぅ・・・」
「我慢した分、声、出していいぞ。」
「ふざけ──あっ、んくぅ・・・っ、あぁ、・・・んもぉッ!」

 弱いところを把握しきっている酒田はちょっとした腰の動きで慶介を翻弄する。
 それが何とも楽しそうにするものだから慶介は怒っていた気持ちが萎えて許してしまった。

「こんバカっ、詫びに気持ち良くしろ・・・っ」
「喜んで。」

 浅いところを出入りしていた固い肉棒が奥に進み、中の入り口をヌルヌルとこすった。
 慶介は求めていた刺激に喜び震える。そこから焦らされることなくヌプッと膣部に亀頭が入ってきて、満たされた中の感覚に浸ろうとしたら、乳首をピンっと弾かれた。

「ああぁッ、それ、すぐイクから、ダメェ・・・」

 慶介が制止を求めても酒田は聞かず、片方を口に含みチュウチュウと吸ったり舐めたりして、もう片方は爪の先でカリカリと引っ掛けられる。
 絶え間なく与えられる胸への刺激で中は締まりっぱなし。

「ああ~、きもぢぃ、いっちゃうー・・・やだぁ、もっとしたいぃー・・・。あ、あ、気持ちぃのくる、来ちゃう、止めてぇ・・・」
「中イキなら何回でもして。入れっぱなしがいいなら出すの我慢するから。」
「あ、うぅ・・・、なら、いく、イきたい・・・っ」

 胸を舌と指で責められ、ユサユサと揺すられ、じわじわと上がっていく熱で慶介の腰が揺れ、杭が動きに合わせて突き上げられて、中のものが徐々に太く固くなっていくのがわかった。

「勇也、も、イク、イクっ! ・・・キスっ、キスして!」

 自ら酒田にしがみつき、舌を絡める。それに応える酒田は胸の愛撫をやめて慶介をキツく抱きしめ、息もできないくらい強く吸い上げられる。

「んんッ、んぅッーーー!!」

 3度、4度と奥の壁を押し上げられて揺さぶられる中と体の衝撃に慶介は達した。

 息ができない苦しさと、高められた興奮と、トドメの刺激で慶介の頭は真っ白。
 収縮する中が何度も固い肉棒を喰い締め、そのたびに酒田がビクッと震えて耐えているのがわかり、たまらない気持ちになる。


 慶介は達したあとの虚脱にパタリと腕を落とすが、酒田は眉を寄せた切なげな表情で中イキの収縮が与えてくる誘惑に耐えていた。

(健気というか従順というか、このクソ真面目め・・・)

 慶介はまだ力の入らない腕を伸ばし、指で酒田の顎をすくい上げるように撫でた。

「勇也、イきたいか?」
「・・・っもう・・・怒ってないか?」
「フフフフ、なに? 気にしてんの?」
「意地悪にしては、質が悪かったと思って・・・」
「まぁ、ちょっと、な。」

 落ち込む酒田は犬耳がしょぼんと下がるのが見えるようだ。

「挽回のチャンス、やろうか?」
「何でもする。」

 キリッと気持ちを盛り直した酒田の首に腕をまわし、耳元で囁いた。


「次はベッドで、一緒にイこうぜ・・・」


 酒田はギッと固まった。
 そして、いくらかの逡巡の後、膝の下に腕を入れてお姫様抱っこで立ち上がる。

「お望みのままに。」
「頼むぜ、ダーリン? 頭、溶かしてくれよ?」
「・・・慶介こそ、覚悟しろよ。」







***







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