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続編・後日談
SS:大学入って2年目の夏・R18(後)
しおりを挟む手の甲で口の周りを拭い、酒田の腹の上に跨る。その時に見上げてくる酒田の表情を伺うのは慶介の好きな瞬間の1つでもある。
待ち切れないとよだれを垂らしそうなときもあれば、思わぬサプライズを受けたという喜びの顔をしているときもある。今日の酒田は目をぎゅっと閉じて慶介の体に触れられない手を拳にして耐えている。慶介はそんな姿も健気に思えて「俺の男はカワイイ」と頬が緩む。
赤黒く張った肉を掴み、ピトッと先端を後ろの入口に当てると唾液だけではないヌメリを感じて、好都合とも思ったが、つまりそれは慶介がフェラで興奮したということでもある。あんなに「やらない」と言い張った割には、この棒が自身の性欲を満たしてくれると思えば期待してしまう。
ヌメリがあってもほぐされていない穴は侵入を防ぐべく固く閉じてしまっている。そこにワザとグッグッと押し付ける動きと入口だけに与えられる刺激は、入れる直前に感じるドキドキとする期待感と、アナルという出口に入れるといういまだに拭えない背徳感でゾグゾクし、慶介の心は激しく興奮し感度が増していく。
「はぁ、はぁ・・・、あぁ・・・あああぁ・・・、やば・・・挿れる前なのに、すでにめっちゃ気持ちいぃ・・・。挿れてもないのにイキそう・・・、あ、あ、あ、あ、・・・ぅ、入るっ、入っちゃ・・・アアッ! イクぅッ!」
押し付けるたびに緩んでいく穴がヌルンと亀頭を飲み込んだ。熱い肉棒にアナルをこじ開けられる感覚、かさを超えた瞬間に収縮する穴が感じ取る肉棒の硬さに胸までギュッとして、抵抗していたはずの出口が入口になった後に引き込もうと力強く蠕動する内壁の動きで慶介の体は達した。
予想外に感じ入ってしまった体に戸惑いながら、酒田の硬い腹筋に震える腕をついて脱力する体を支える。しかし、達した余韻のたびに支える手足が緩み、熱い塊が侵入してくる。
イッたあとも入ってくる感覚は、慶介から思考力を奪いたまらず「ぁ゙ー・・・」と声がでる。快楽に侵された慶介の体はビクビクッと震えながら酒田の熱を全て飲み込んだ。
酒田の腹の上でぺたんと座り込んでしまった慶介は乱れる息を「はぁー、はぁー」と整え、妙に高ぶっている感度がこれ以上刺激を受け取らないように、と姿勢を維持しようとするのだが、まだ続く余韻の収縮だけでもすごく気持ちよくて抜くことも出来ず、波が来るたびビクッと背を丸めて甘い息を漏らした。
やっと感度が落ち着いて、ふぅーーと深く息を吐いてクタッと酒田の体に覆い被さるように倒れ込む。酒田がその背中を撫でてきて「動かないって言ったよな?」とか言ってやろうかと思ったけどその手の平の熱さが気持ち良かったのでやめた。
(どうしよ。『一発イッて満足した』と言えるけど・・・)
なんとなーくしたい気分というのは解消されてはいるのだが、今のは中イキとは言えオメガの部分でイッたわけではない。
そのせいか、慶介の脳は「もう1回」をどんな風に言って酒田を誘おうかと妄想をはじめている。
都合よく慶介の中にはまだ硬い酒田の熱い棒が溜めた欲望を放つ時を待っている。言葉短く「シよ?」とかでも十分に乗ってきてくれるであろうと予想出来るが、それを実行できるほど慶介は素直ではない。
最初に「やだ。しない。」と言った手前、酒田に続きをせがむのが恥ずかしいような悔しいような気がして、そんな短い言葉すらが声にならず、言い淀んだ言葉が鼻から抜けていった。
誘い文句を言えない慶介は落ち着かない様子で酒田の体の上でモゾモゾと動く。
(あー、もー、こういう時こそ酒田から『シたい』って言ってくれればいいのにっ)
続きをしたがっていることに気づいて欲しいような、そうではないような。と、酒田の肩に置かれていた手をキュッと握って思考を読ませないようにしてみる。
汗ばんだ肌が心地よさと不快のギリギリのラインで行ったり来たりして、体を離してみた肌の隙間に入ってくる風は思いの外冷たい。冷えた肌は酒田と密着すればあっという間に温まるけれど、すぐに丁度よい温度を通り越して暑くなり再び不快感を感じてしまう。
そうして身動いでいると、まだ繋がったままのそこがトロトロとぬかるんで溢れてきたような気がした。
こぼさないようにキュッと締めた時、埋めて欲しかった中の入口をグッと押されて本来欲しかった場所が満足していないことを再確認させられ、胸が急速に乾いていくように切なくなった。
(あぁ、これ挿れたい・・・)
慶介の指でも届かない中の入口は、ヒートではない時は固く閉じており何度も刺激を与えなければ緩んでくれない。
これまで何度、その部分が訴えてくる疼きを満たせずに体を丸めてやり過ごす事があったか。そのたびにアダルドグッズを購入しようと検索するが、受け取り方法のところで「どうせ無理か」と諦めてきた。
だが、今は疼きを満たしてくれる硬い棒がもう中にある。これを疼く奥へ押入れれば、得られる快感はどれほどのものだろうか。と、慶介の頭はその事だけで頭がいっぱいになり、働かなくなった頭のせいで体が本能のままに動き始めたところで──
「まだ、するのか?」
慶介の体の動きを、酒田の手が止めた。
ハッと我に返って性欲に飲まれていた恥ずかしさに顔が赤くなる。
恐る恐る目を向けた酒田の顔は、欲を発散できない男の辛さを眉や噛み締めた頬に残しているが慶介を咎めるような視線ではない。声の調子も落ち着いた冷静なもので、止めた手も慶介の動きを阻害しようという意思は感じない。
あくまで確認の一言だった。だが慶介はその一言に肯定を返す事が出来ない。「あれほど『やらない』と抵抗したくせに入れればコレか」と思われたくなかった。
くだらないプライドだが、虚勢を張ると蕩けた脳がしっかりしてきて快楽を追い払う事ができる。高ぶった感度は正常に戻りつつある。ふと、酒田に目を向ける。
酒田は何も言わない。その目が何かを訴えてくることもない。きっと、中途半端のまま放置されても構わないと思ってるのだ。
本当に棒に徹するつもりだった愚直さに、慶介は自分の考えが子どもじみた独りよがりに感じて恥を覚えた。
慶介はくだらないプライドを壊すために自分に言い聞かせる。
何が素直になれないだ。悔しいなんて意地を張るなんて、酒田がをあざけるとでもいうのか。ありえない。恥ずかしがってないで、ちゃんと言葉で伝えるべきだ。なし崩し的に続きをしようとするなんて、自分の発言に責任をとれ。酒田は宣言どおり棒に徹しているというのに。
あっさりと崩れた虚勢の下にあるのは好きな相手と心を繋げられる喜び。
「する・・・。酒田、動いて・・・」
ニヤリと含みのある表情もしない。小馬鹿にするような一言もない。意地悪もしない。酒田は、ただ、甘く優しく、愛おしいと言わんばかりに微笑んだ。
酒田の手が慶介の腰を掴む。それだけでもう鎮まったはずの感度が高ぶって、期待と興奮で鼓動が早まる。
膝を立て、体勢を整えた酒田は掴んだ腰をゆっくり引き寄せ、慶介の中へと自身の熱を押し入れた。
「ん゙ーぅ・・・あ、あぁ、・・・きたぁ、ぁ・・・」
閉じていたはずの中の入口は酒田の狙い外さないたったの一押しで、ぐにゅんと亀頭を飲み込み、慶介は小刻みに痙攣し、また達した。
「慶介、どう動いたらいい? 言う通りに動くよ。」
「酒田の、好きにしていい・・・」
「俺は棒代わりだろ?」
「むぅ・・・分かってるだろ。言わせんな。」
「聞きたい。」
「酒田が良い。・・・お前が欲しい。」
慶介をギュッと抱いたまま腹筋だけで起き上がり、鎖骨にキスマークをつける酒田。「明日に響かないように1回だけにする。」なんて言ってるけど、その1回が長いことを慶介はよくよく理解している。お返しに慶介もスポーツインナーで隠れるか微妙なラインにキスマークを付け「シよ?」と焚き付けた。
左腕が腰に回され、右手は項を撫でてキスしながら軽く突かれ慶介はくぐもった甘い声を漏らす。
今日も熱い夜を過ごすことになるのだろう。
ああ、酒田が好きだ。
酒田が良い。でも──
・・・でも、やっぱりオモチャは欲しい。
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