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ウェディングパーティ編
SS:短冊に願い事 (7/7追加)
しおりを挟む「そっか、もうすぐ七夕か。」
大型ショッピングモールにあった短冊が結びつけられた笹が並んでいるのを見てボソっとつぶやく。
一緒に買物に来た水瀬のおじさまが「ウチも七夕やりますか?笹どっかから取ってきて」と冗談っぽく言った。
本多の家では行事モノはほとんどしない。恵方巻やクリスマスケーキなどの食べ物系ならちょっとは乗るが、飾り物は酒田の爺やが玄関のインテリアを時々変えるだけで終わっている。
笹にはすでにたくさんの短冊が結ばれていて、下の方は子どもが拙いながらも書いた純粋なお願い事があり、上に行くに連れて定型文の願い事から、漫画のセリフやふざけた願い事が増えていき、つい笑ってしまうような願い事を探したくなる。
警護に同行中の悪友3人組が面白がって、願い事を書き始めたので、慶介も3人のノリに便乗するか。と『自由にお書きください』と長机に置かれた短冊をとってペンのキャップを取ったところで固まった。
「どうした?書かないのか?」
「いや、真面目に書くか、笑いをとるかで迷ってる。」
真面目に書くなら『皆、健康でありますように』しか出てこないし、笑いをとるといってもありきたりな『世界征服』とかしか出てこかったので貧相な発想力に自分でがっかりする。
(こういうのは、ある程度、本心でなければ面白くないと言うか、ウケないというか・・・)
なかなか出てこないので、ペンのキャップをカチッと戻した瞬間にパッと浮かんだ言葉にニヤリとした。
酒田が周りを警戒して意識をよそに向けている間に、慶介は中腰になって素早く願い事を書き、短冊を酒田に見られないよう、笹の先端付近に結びつけた。
慶介が警護される定位置の酒田の左斜前に戻り、酒田は安心した顔で慶介の腰を抱く。そして、慶介が書いた短冊を見た瞬間、酒田が固まった。
『 彼氏も全身脱毛してくれますように 』
我ながらウケそうなワードと本心を偽ったわけではない加減がうまく融合した願い事が書けたと思う。
また、180cm超えの慶介が腕を伸ばして短冊を結んだ笹は目測3m弱。そんな高い位置にある彼氏へのお願いを誰がつけたか?までを考えると更に面白がってもらえるのではないか、と思う。
それでいて、普通の人が容易に見れる高さでないところが、慶介の「実を言うと見られのは恥ずかしい」という気持ちをカバーしている。
「え、あの、慶介・・・、ホントに思ってるのか?」
「さぁ~?どうだと思う~?」
ケラケラと笑いながら、羞恥心も薄れた手繋ぎで酒田を引っ張るようにして水瀬の伯父夫夫の後を追いかけた。
鳩が豆鉄砲くらったような顔をした酒田はしばしの間、鳥のように首を捻って、その動揺はそのあと3日間も引きずり、4日目の夜に寝入りばなベッドの上で正座をしながら
「慶介が望むなら、全身脱毛してもいい。ただ・・・・・・ハイジニーナは、ちょっと・・・少しは残してもいいですか?」
と、苦悩の選択と言う顔をしながら聞いてきた。
3日間もずっとそのことで悩み続けていたのかと、酒田の献身が愛おしくなり、その悩みが「全剃り」か「デザインカット」かで悩んでいるあたりが酒田らしい。自分の好きな方を選べばいいというのに。
慶介は腹を抱えて大笑いしたあと、枕カバーで笑い涙を拭いて酒田の迷いを終わらせてやる。
「あんな冗談、真に受けるなよ。短く処理してる今のままでいい。」
「でも、慶介にはハイジにしてもらったのに・・・」
「俺は良いんだよ。残したいとも思わなかったし、今は無い方が快適だ。だから、勇也は脱毛なんてしなくていいからな?わかったな?」
「本当にいいのか?」
「わかったか?」
「ああ、分かった。すまない。」
よほど申し訳ないと思っているのか、酒田は慶介の胸に額を押し付けて抱きついてきた。
正直、眉毛以外を全身脱毛した慶介からすれば、ひげ剃りから解放されるし、毛がない陰部もスネもツルツルな方が蒸れもないし、触り心地も良い。そういう理由からオススメしたいところではあるが、そんなに悩むなら取り返しがつかないようなは決断は先送りにした方がいい。
アンダーヘアの処理を怠るようなことがあれば、また短冊に書いてやろうと思った。
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