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結婚式編
結婚式編:SS:兄の松吾
しおりを挟む年寄りたちの話は長く、宴会は夜の9時ごろまで続いた。
「だぁ~~~!やっとおわったぁッ!!」
着崩れを気にする必要もなくなった控えの間で両腕上げたバンザイしながら開放感に叫ぶ慶介。の、横で苦しげな顔をする酒田。
「腹苦しい、吐きたい・・・。」
「えっ!?だ、大丈夫かっ?無理して飲んでたのか?ど、ど、どうしよう?きゅ、救急車?!急性アルコール中毒なら救急車だよな?!」
「慶介、おちつけ。大丈夫だ。酒田の酒は途中からただの水に変えてある。ただの水っ腹だ。」
慌てる慶介を永井がなだめ、酒田は兄の松吾に羽織を手早く脱がされ、たすきを掛けられ、極めつけにビニール袋で作ったっぽいエプロンを被せられて、
「そうそう。ったく、律儀に全部飲まなくて良いって言ってただろー・・・これで良し、着物汚すなよ。すぐそこのトイレに行ってこい。バケツ用意してあるから便器の方に吐くなよー。」
**
ただの水っ腹は吐き出してしまえばスッキリするが、やはり、アルコールが入った体は少しフラつく。
控えの間に戻ると、兄の松吾が正座して水瀬に怒られているという身内の恥とも言える光景があった。
何事かと永井に聞けば、今日の内に大阪に帰る予定だった水瀬の伯父夫夫がもう一泊すると言ったからと、松吾が酒を飲んでしまったのだという。
一泊するとは言っても宿泊するのはこの本多本家の屋敷ではなくホテル。ここからホテルまでは車で移動しなければならないのに、運転出来る人間が水瀬だけになってしまった。
「お前は補佐としての自覚がなさすぎる!縁切りされたいのか!?」
「いいえ!すみませんでしたッ!!」
「反省文の提出とスノボの特別休暇は取り消しだ。」
「えええぇー!そんなぁ!!それ以外でお願いします!」
「お前が意見出来る立場だとおもってるのか!?」
「でもでも、勇也たちがもう一泊すれば、伯父夫夫と本多さん達、俺と水瀬さんで6人乗りで行けますよ!」
「お前が一番優先すべき補佐対象は慶介くんだ!その慶介くんに負担を求めるような事をするな、バカ野郎!!」
酒田は申し訳無さを感じながら、普段着に着替え終えている慶介の近くに寄る。
永井が酒田の着替えを取りに動き、慶介は酒田が着物を脱ぐのを手伝う。
「なぁ、酒田・・・じゃなかった、勇也。」
「ん?」
「俺さ、松吾兄さん見てるとちょっと安心するんだよ。」
「あれのどこに安心材料が・・・?」
「学校のアルファを見てるとさ、皆、理性的で規律正しくて、アルファってやつは本当に生まれながらに優秀な人間しかいないのか?って思ってたけど、松吾兄さんみたいなダメ人間もいるんだなぁ。って。」
「あぁ、うん・・・。ウチの兄が、ほんと、申し訳ない。」
怒りの水瀬、冬の車中泊かホテルでの寝ずの番を命じようとしたが、凍死されるのも困るし寝不足で運転されるのも怖いので、罰は特別休暇の取り消しのみになり、ホテルへの送迎は水瀬が2回往復することになった。
***
次回、R18で9000字あるので、お時間があるときにどうぞ。
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