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しおりを挟む「ええっ!うそ、本当ですか!?」
「ショックすぎる...マジで寝込みそう...」
「無理なんだけど...私の黒田先生が...」
「黒田先生と結婚出来る女が羨ましすぎて辛い...」
次の日、職員室内は黒田の指輪の件で持ち切りだった。
普段から表情が豊かな黒田は、いつにも増してにこにこしながら職員室に入って来た。
爽やかな笑顔、落ち着く声音で挨拶をする彼は、この室内に突如として現れた天使。
あ、今日も私の推しはカッコイイな♡
今日は一段と機嫌が良さそう♡食事に誘ってみようかな♡
そう思いながら群がった女性教員は、彼に近付いた瞬間、膝から崩れ落ちた。
それが今朝の話だったが、ようやく女性教員が現実を受け入れ始めた放課後に、掘り返すかの如く石井の声が響き渡った。
「え~っ!?黒田先生その指輪!」
「ふふ、いいでしょ。プロポーズしてもらったんだ」
話しかけに行った石井や、周りで再度病み始めた女性教員は「プロポーズされる側なのか?」と一瞬頭を悩ませたが、こんなにいい男がいたら逃げる前に自分のモノにするよな...と秒で自己解決をする。
「めでたいですねぇ!今日は久しぶりに飲みに行きませんか!?皆誘って!」
「んー...今まで何回か石井先生の愚痴を聞くためにサシ飲み行ってたけど、奥さんがヤキモチ妬くから...今後はごめんね?」
「常識的に考えればそうですね...うわ~ん、貴重な独身仲間を1人失った~...」
いい歳して泣いたフリをしながらこちらの席に戻ってきた石井は、俺を見るなり目を輝かせる。
「あ、独身仲間~!今日一緒にご飯行きません!?若王子先生も!彼女いないですよね?」
「「...」」
石井は俺と若王子と傷の舐め合いでもしようとしているのだろうか。
何をもって俺たちに彼女がいないと決め付けているのかは謎だが、呆れて物も言えないでいると若王子が隣で大きなため息を吐いた。
「貴女と一緒にしないでください」
「え!?も、もしかして彼女いるんですか!?そんなに性格悪いのに!?」
「余程消えていなくなりたいみたいですね」
笑いながらパキパキと指を鳴らす若王子は、お前もなんか言ってやれと言わんばかりの視線を送ってくる。
「う、碓氷先生...碓氷先生はまだ...」
「...」
ネクタイをずらし、首からぶら下げた指輪をチラつかせると彼女は顔を真っ青にした後、デスクに突っ伏した。
「みんな独り身じゃないんだ...、え...私だけ...?え...婚期逃した...?」
「碓氷先生、トドメを刺しましたね。貴方に恋人が居るとは誰も思わないでしょう」
「失礼過ぎるだろ...」
身嗜みを整え席を立つと、石井は待ってください、と小さな声で呟く。
「碓氷先生と付き合えるってどんな人なんですか...、なんで碓氷先生に恋人がいて私にいないんですか...おかしいですよ...だってあの碓氷先生ですよ...?」
若王子といい石井と言いマジで失礼なんだが。
項垂れる石井を無視して足早に職員室を後にする。
あと数日、職員室内の空気は現状のままおかしいものとなるだろうが、黒田に恋人がいる事実を周囲に知らしめることが出来た事実に顔を手で覆った。
......ヤバい、ニヤける。
もう俺の彼女に手を出す命知らずな輩はいない。
「ふふふ...」
「わ...、碓氷先生が笑ってる...」
「やべぇだろ、おっかねぇ...早く行こうぜ...」
なんていい気分なんだ。
彼から貰った指輪は首からぶら下げることにした。
同じタイミングで指輪を着けだしたら怪しいんじゃないかと言う理由で、指に着けろと駄々をこねる黒田を無視してネックレスにしたが
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