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しおりを挟む「うわ~ん、光ちゃん~」
「政宗くん...!!」
..........やっぱりこの2人は兄弟だったのか。
光悦の初恋の相手は兄の姫神政宗と言うことになるが...中々に複雑そうだ。
「会いたかった...!」
「僕もだよ」
互いに強く抱き締め合う2人をぼんやりと眺める。
並んでみれば結構顔も似てるな...。
線の細さや体格は大違いだが、余程仲の良い兄弟なのだろう。
離れる素振りすら見せない。
「そうだ政宗くん、連絡先教えて。あと住所と...スリーサイズも」
「うん!いいよ!えっとね...まずこれが連絡先で...」
......スリーサイズ?
姫神の腰や尻をどさくさに紛れて撫でまわし、実の兄にセクハラをする光悦は熱っぽい視線で見つめている。
絶対に実兄に注ぐ視線の類ではない。
「はいっ、送ったよ!何時でも連絡してね...?」
「......」
「...光ちゃん?」
「あっ、ごめんごめん。政宗くんが可愛すぎて見惚れてた」
「あはは、何それ」
激甘カップルか何かかな?
自分の膝に肘をつき、下から彼らを見上げていると、俺の視線に気付いた光悦がハッ、と息を漏らした。
「鏡夜、どうしたんだ...そんなに愛らしい瞳で僕を見つめて。放置されて寂しかったのか?うんうん、仕方ない子だ。さあ、おいで」
「あ゛?」
わけも分からず無理矢理立たされ、光悦に腰を抱かれると、嬉しさで涙ぐむ姫神と目があった。
「ぁ...碓氷せんせ、おはようございます...」
「あ...ども...」
.........なんだ、この状況。
「これぞ正に両手に花...、さてこれから僕と一緒に食事でも」
「光悦、悪いが俺は1時間目から授業が入ってる。食事は別の機会にしてくれ」
「わ、私も...。また今度行こうね?」
「え...?」
光悦の拘束を剥ぎ取り、床に転がった如雨露を拾い上げる。
9時5分
そろそろ裏門を閉めて中に入らなくては。
「じゃあ光悦、気を付けて帰れよ」
「え?待って、ここ閉めちゃうの?鏡夜...!?政宗くん...!?」
ガラガラと無慈悲に閉められる柵越しに手を伸ばす光悦。
「ああっ...光ちゃん...!やだよ!何処にも行かないで...!光ちゃん!!」
柵にしがみつく姫神。
32と35のいい大人が一体何をしてるんだろう。
異様な光景に、若干引きつつ姫神の肩を掴み、別れを惜しむ2人を引き離す。
最後の最後までお互いの名前を呼び合う姿を見て、何だか自分が酷いことをしているような気分になってしまった訳だが。
「光ちゃんと碓氷先生ってお友達だったんですね!ビックリしちゃいました!」
「ええ、まあ」
「光ちゃんって、本当にいい子じゃないですか!?心が綺麗で優しくて、絶対に酷いことをしたり汚い言葉を遣う子じゃないので兄の私も鼻高々です...!」
......この2人に17年の月日が空いている理由は謎だが、その間彼は多少なりとも汚い世界を見ているワケで...
「勉強も出来る子だったし、今頃いい企業で働いてるんだろうなぁ。ふふ、きっと光ちゃんのことだから先輩にも後輩にも信頼されてて、人を褒めて伸ばしてあげるんだろうな...」
「あの...」
「うん?」
貴方の弟は、貴方が思っている以上に大きな組織に身を置き、部下に対して駄犬、人間以下、四足歩行やめろって言う人間ですよ
と、言おうとしたが
「あっ!私、光ちゃんのこと話し過ぎました!?興味ないことをベラベラと...、碓氷先生相手だと話しやすいからつい...すみませんっ...!」
「......いえ大丈夫です...」
言えるわけがねぇ...。
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