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「響は仕事が多忙なせいもあって部屋も散らかってるし、どうせなら吉野に片付け手伝って貰えよ」
「え?...本気すか...?」
「俺にゴミって言ってくるような子と過ごせって?」
まだ根に持っている。
黒田は絶対に響とは分かり合えないタイプだ。
吉野が俺に対して抱いている感情が別の物であったからこそ、今日も黒田は笑顔で俺を見送ってくれたわけたが
彼が響に心を開くはずが無い...!!
吉野だけならまだしも、響もとなれば話は別だ。
「元いた場所に返してきなさい」と言われるに決まっている。
「と、言うか...今日初めて出会った高校生の子供を家に泊めるって...どう言う状況なの?」
確かに。
「...ちょっと、子供扱いしねぇでくれます?」
おい、日本語がおかしくなってるぞ。
「あ!そうだ吉野!響に彼女の作り方を教わるのはどうだろう、こいつはモテるから頑張れば今日中に彼女が出来ると思うんだが!」
「えぇ...まだその話続いてたんすか。モテるっつっても」
真っ直ぐ響を見つめた吉野は、スプーンを皿の上に置いてから可愛らしい小さな口を開いた。
「響さんが毎回フラれてるなら、なんか...」
「ゔっっっ...」
苦しそうな声を漏らしながら心臓を抑える響がテーブルの上に項垂れると、彼の心の傷を抉ったことが分かる。
「あ、あのー...響?この子は少し失礼なところがあるんだが...決して悪い子では...」
「はぁ...どうせ俺は、どんな子と付き合ってもフラれる人生なんだ...。きっと俺と結婚してくれる子なんていない...家からも出ないし出会いもないし...特段趣味も特技も全然...」
「吉野!謝りなさい!」
豆腐メンタルの異名を持つ響は、外見の美しさと引き換えにマイナス思考と言う特性を神から与えられている。
このままでは面倒なことになると思い、吉野の背中をバシッ、と叩いた。
「響さん、ごめんなさい」
わ...上手に謝れて偉い...いい子...。
ぺこりと頭を下げた吉野に感心して、思わず満面の笑み。
「ま、兎に角...だ。俺の家はだめ、1人で過ごしたくないのは分かるが俺にはどうすることも出来ない。諦めろ」
「「......仕方ない」」
がっくしと肩を落とした双方は、ため息を吐いた。
「吉野くんに泊まりに来てもらおう」
「響さん家に泊まりに行こう...」
こいつらどれだけ1人になりたくないんだ...。
確かに提案したのは自分だが、まさかお互いが了承するとは思ってもみなかった。
「吉野くん、車にエンジンを掛けてくるから少し待っててくれるかな」
「はい」
もう吉野のことを連れていこうとしてるし。
パタパタと外へ駆け出した響は遠くのコインパーキングに直行する。
「はぁ...響...、相変わらずめちゃくちゃ可愛いな...♡」
「俺は先生の方が可愛いと思います」
「あ゛ぁ!?響がこの世の男の中で1番可愛いんだよ!!」
「そこは素直に喜んで欲しかったすけど。ところで、先生...」
!?ち、近い...
口端にクリームをつけた彼が、身体をグッと寄せれば、自然と警戒してしまう。
彼の指が俺の頬を滑り、ふに、と唇に触れた。
「まだエロい下着、穿いてんの...?」
「えっ!?ゃ...違...」
穿いてる。
「今日お休みだからって油断したんだろ。可愛い顔してるって理由で帰りに襲われたらどうすんの?」
な、何故この男は俺が今日セクシーランジェリーを穿いていることを知っているのだろうか。
「な、んで...っ」
「外に走ってった時、腰に細い紐あるの見えてたよ...、駄目でしょ。ただでさえ人の目を惹くんだから、もっと気を付けて」
えっ、なにこの発言...なんか、彼氏みたいじゃね...?
やっぱりこいつ、俺のこと...
「自分の母親が性的な目で見られるのは、いい気しないすから」
ま、そうですよね。
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