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しおりを挟む「...鏡夜が連絡さえ返してくれれば相談とか出来るのに...お前全部未読無視じゃん...。俺のこと嫌いなのかよ...」
寧ろ逆だ。
好き過ぎて、連絡することもメッセージの内容を見ることも恥ずかしい。
今となっては、その好きも友人としての好きに落ち着いたわけだが。
「これからはちゃんと連絡返すから...」
運ばれてきたアイスコーヒーを1口飲んだ彼は、またもや「うっ」と声を漏らして涙を流した。
「......30の大人が泣いてる」
「こら吉野!そんな可哀想な物を見る目はやめなさい!」
小声で吉野を叱りつけると、響は眉を下げる。
「いや...いいんだ、情けないよな...。自分が駄目なことは自分が1番分かってる。俺ってとことんダメな人間だよ...女性1人も幸せに出来ないなんて...」
「響にダメなところなんて1つもないよ...!」
「......鏡夜」
こんなに可愛いくてかっこいいんだ。
多少だらしないところぐらい許してやって欲しい。
前の自分なら、彼を傷付けた人間を1人残らず抹消していたであろうが...、こうも尽くフラれるのには理由があるのかもしれない。
兄は温厚で男女から好かれるタイプ。
嫌味を言い、常に人を嘲笑うドS野郎の弟とは違う。
ここでフラれた理由を聞いてもいいものなのか...
響の心の傷を抉るかもしれないし、うーん。
「フラれる理由って、何なんですか?」
こいつ...!!
前のめりになってまで聞く吉野は、やけに真剣な目をしていた。
先程まで彼女がどう、別れがどうとタイムリーな話をしていたからか、あまり見たことの無い表情をする彼には少し驚いた。
が、口の横にクリームがついており、雰囲気をぶち壊していることも確かだった。
「えっ、ぁ....えーと...」
困った様に頭を搔く響は、視界にクリームを入れないように視線を伏せる。
「...それは、言えない...」
「若王子先生は2年の授業入って無いけど、見た感じサイコパスっぽいすからねぇ...暴力とか?」
ペシッ、と吉野の頭を軽く叩きポケットから取り出したハンカチでクリームを乱雑に拭う。
「口の横にクリーム付いてんだよ、ガキかてめぇは...。あと、あんまり失礼なことを言うな、怒るぞ」
「......はい、母さん」
嬉しそうに笑う吉野に、思わずこちらも笑い返しそうになったが咄嗟に頭を振る。
今完全に笑顔に絆されるところだった...!
「母さん...?鏡夜、吉野くんのお母さんなの?」
「違う!これには色々あって...!」
「え...先生、俺の母さんじゃないの...?」
めんどくせぇ...。
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