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しおりを挟む姫神を抱き寄せる神崎を眺めていると、手でシッシ、と追い払われてしまう。
解せぬ。
「今日の晩ご飯は俺が作ってあげる」
「え~、でもなおくん包丁の使い方危ないんだもん」
「じゃあ政宗が教えてくれる?手取り足取り...」
「もう...絶対えっちなこと考えてるだろ~♡」
......こいつらの関係が周りにバレちまえばいいのに。
そう思ったことは言うまでもないが、いてもたっても居られずその場を後にした俺は、職員室に戻り荷物を抱え持ってから帰宅した。
それからはいつも通り夕食や風呂を済ませ、黒田にベッタリと引っ付く日常を送る。
彼が寝たタイミングを見計らって拇印を採取すれば、見つからないように証拠を隠滅。
「よし...これで完璧だ...。寝よう」
胸元にねこのぬいぐるみを抱き寄せ、黒田の背中にピッタリとくっ付いてから目を閉じた。
ーーーーーーー
ーーーーーーーー
「お茶、しませんか」
そう話を持ち掛けられたのは、それから5日後のことだ。
「駄目だ。俺とお前は教師と生徒...外で会うのは出来るだけ避けたい」
「でも、俺だって母さんと」
「母さんって呼ぶな」
「...ママがいいんすか?」
「呼び方の問題じゃない」
赤点間際の点数をとった吉野を生徒指導室に呼び付けた。
自分の力を発揮せず、俺と2人きりになりたいと言う理由だけでわざとこんな点数をとった吉野には、少なからず怒りを抱いている。
だからこそ、しっかり、ガツンと叱ってやろうと思ったのだが...
「だめ...?やっぱり迷惑だった...?先生は俺と一緒にいるの、いや...?」
そんな捨て犬みたいな目でこっちを見んな!!!!
小首を傾げ、眉を下げる吉野の瞳は心なしか潤んでいる。
し、叱りづらい...。
「迷惑ではないし、一緒にいるのが嫌な訳では無い。ただ、俺はお前の母親にはなれないし第1性別も男だ...こんな母親なんて吉野も嫌だろう」
しゅん...
ああ...あからさまにしゅん...て...。
彼の姿は耳を下げた犬を彷彿させる。
「...俺は、先生のこと本当の家族みたいだと思ってたのに...」
しゅん......
「っ...」
こいつ、人間が落ち込んだ動物に弱いことを知っているような面しやがって...!
今にもくぅーん、と言う鳴き声すら聞こえてきそうだ。
歯を食いしばりながら見ていても状況が変わることは無く、俺は盛大にため息を吐いた。
「わかった...、わかったよ...酷いこと言って悪かった。俺だって出来る限り吉野と一緒に居てやりたいよ...」
「じゃあ決まりですね。明日の14時、駅前の喫茶店でお茶しましょう」
「なっ...」
「では、俺はこれで」
荷物をまとめた吉野がさっさと生徒指導室を飛び出しては、再びため息を吐いてから机に突っ伏した。
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