秘めやかな色欲

おもち

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問題は、このシャンパンをどのようにして飲むか、だ。

黒田が俺にアルコール勧めることは無いだろうから、彼の目を盗んで飲む必要がある。

「注いでやる」

「ありがとう」

煙草を咥えながら俺の腰紐に手を伸ばした黒田が、きゅっとリボン結びを施した。

チラチラ見えていた胸や下着が気になったのか、彼は素っ気なく俺から視線を外してしまう。

「ん...なんだよ...」

「目のやり場に困るからね...。君も今朝方あんなことがあったばかりで、オレにイタズラされたくないだろ?」



..........イタズラされたくない...?

いやいやいや、イタズラされたくない奴がこんなスケベな下着を穿くと思ってんのか。

とは流石に言えず、グラスにシャンパンを注ぎ彼にそっと差し出した。

「いただきます」

煙草を灰皿に押し付けてから、グラスに口付けて静かに飲み干す。

その姿は上品で、華麗な貴族のようにも見える。

「美味いか?」

「シャンパン自体は安物で大した味じゃないけど、鏡夜が注いでくれたから世界一美味しいよ」

何だこの激甘対応は、好きと言わざるを得ない。

「ふーん...お、俺も1口...」

彼の手に指を重ねグラスを取ろうとすれば、黒田の大きな手が俺の腰を抱き寄せる。

「だーめ」

彼から仄かに香るシャンパンの匂い。

筋肉質な身体が肌に触れるだけでドキドキする。

ああ、このままキスを落とし、抱いてくれさえすればこの緊張感も消えるだろうに...。

「...目が潤んでるね...、やらしい顔してる...」

「っ、お...俺...」

椿さんとキスしたい。

唇が触れ合ってしまいそうな距離に、彼の顔がある。

その言葉が口から出ることは無かったが、目を瞑り、軽く唇を開けて彼の舌を受け入れる体勢を取った。

「...鏡夜」

「っ...ぁ、」

彼の吐息が唇に触れる。

あと、少し。

あと少しで、椿さんとキスが...


~♪

「あ、また菫から連絡が着たみたい。ちょっと待ってて」

「..........」

部屋を出ていく黒田を横目に、だめ、と言われたシャンパンを飲むことを決意。

「んむっ...、んっ、ん...」

グラスに注いでから、息を止めて一気に飲み干す。

苦い。
人類は何が楽しくてアルコールを飲んでいるのか、全く理解が出来ない。

美味さが分からないと言うことは、自分がまだ子供だと言うことだろうか。

「...あちぃ...」

徐々に身体が火照っていくのを感じる。

皮膚が赤くなり、呼吸が乱れて視界が霞む。

「はぁ...」

バスローブを脱ぎ捨ててからベッドに倒れ込むと、研ぎ澄まされた肌がシーツに擦れただけでゾワリとした。
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