252 / 312
252
しおりを挟む「はー...最高...」
「ここが極楽浄土への入口かー...」
色んな種類の風呂があるにも関わらず、早速露天に直行しては完全に極楽気分。
「めちゃくちゃ広いのに人一人いないって、何だか変な感じ」
「泳いでも怒られないね。オレの泳ぎ見せてあげよっか」
「今ここで?椿さん、顔の色変わらないから冗談なのか本気なのか分かんねぇよ」
「ふふ...流石に冗談。32の男が、突然公共施設で泳ぎ始めたら引くでしょ」
「う、うん」
水が流れる音と、虫の声、夏の夜風が気持ちいい。
温泉なんていつぶりだろう。
昔実家の風呂が壊れた時に、父親と行ったっけ...。
あん時はまだ小さかったし、こんな綺麗なところじゃなかったって記憶しか残ってないな...懐かしい...。
「露天風呂って、外の空気が気持ちいいんだな......って、椿さん...見て!星が綺麗...!」
背後の岩にもたれ掛かり、天を見上げると思わず目を輝かせた。
「ん?あ、ほんと...星降る夜だ...」
空一面に星が輝き、やわらかな三日月の光が淡く雲に色を付ける。
綺麗だね、と空を眺める彼の瞳に無数の星が写っているのを見て、プラネタリウムに行った時のことを思い出した。
「...」
湯の中で彼の手を探し、そっと握る。
「椿さん、プラネタリウムに連れてってくれた時、手握ってくれたの覚えてる...?」
やんわりと握っていた手を強く握り返した彼が、俺を見るなり笑って見せた。
「もちろん、覚えてるよ」
「...。
俺...今まで人目ばっか気にして、自分が男だから例え恋人が出来ても、人前で手を繋いだり腕を組んだりすることは出来ないんだろうなって思ってた...。
だからこそ、椿さんが手を繋いでくれた時...今までの自分を否定されたみたいで...、凄く...その...」
水面に視線を落とすと、自分の顔が少し赤いことに気付き、繋がれていない片方の手を強く握る。
「ぅ...ぅれしかった...。誕生日に家族以外の人と過ごせて幸せだったことも...今日、手を繋いでくれたことも全部...俺の心に大事な思い出としてしまっておくね...」
「...鏡夜」
突然口を開いた彼は、片方の手を伸ばし俺の頬を優しく撫でた。
「最初も言っただろ、性別なんてどうでもいいって。
オレが鏡夜の喜ぶ顔を見たいと思うのも、手を繋ぎたいって思うのも...全部当たり前のことなんだよ」
月明かりを帯びる彼の頭髪は、1本1本が生糸のようだった。
「鏡夜に出会えてよかった...」
水面に映る月の明かりがゆらゆらと揺れる度、彼の身体や顔を明るく照らす
その光景があまりにも幻想的で...ーーー。
「...俺も...。椿さん.........すき...」
辺り一面を彩る光が、2人を包み込む中、黒田は笑った。
「...かわい...」
ちゅ、と触れる程度のキスをした後、唇を割開いて彼の舌が強引に挿入された。
舌同士が触れ合うと、腰の奥から甘い快感が呼び起こされる。
お互いの口から溢れ出る音は水の流れる音で掻き消されてしまうが、自分の頭の中には煩いくらいよく響いた。
くちゅ、くちゅっ...ちゅっ
こんなえっちなキスされたら、すぐイきそうになってしまう。
「んっ、ぷは...♡ぁ、椿さ...苦し...♡」
「まだ...、もっとキスしよ...?」
唇が離れても尚求める姿に、胸がきゅううっと締め付けられる。
湯の中で反応する自身を隠すように脚を動かし、彼を招き入れるためにおずおずと口を開けた。
ずっとこの時間が続けばいいのに......。
「シンくん、こっちこっちー」
「...頭、滑りやすいのでお気を付け下さい」
「「...!」」
慌てて唇を離し、お互いがそっぽを向く。
「あれ、よそよそしいけど2人ともなんかあった?」
「別に、何もないよ...」
20
お気に入りに追加
853
あなたにおすすめの小説



身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる