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しおりを挟むどうやらあの後、夏休みを満喫していた吉野は怪しい男に捕まったらしい。
男は大柄で終始穏やかな表情をしており、怖い顔をした人間を周囲に4人ほど従えていた。
『驚かせてごめんね。
僕は月城組と言う組織に所属している姫神光悦と申します。君がヘヴンの製作者である吉野くんで間違いないかな?』
黒い高級車に乗せられ、笑顔で話すその男に吉野は冷や汗が止まらなかったと言う。
吉野曰く、その怪しい男はヘヴンのレシピを求めており、それさえあれば僕の未来は明るいと豪語していたのだとか。
『レシピさえ譲渡してくれれば、高校の学費及び大学費用の立て替えまでさせていただきますし、欲しいものは何でもプレゼントします』
男にそう提案されたが、物欲のない吉野からすればなんの魅力も感じなかった。
既に自分の学費と妹の学費は貯まっていたからだ。
首を縦に振らない吉野を見た男は、一瞬悩んだ後に再び口を開く。
『今後君が困った時、どんな些細なことでも力になってあげる。そうだな...僕のことはお兄さんみたいな存在だと思ってくれればいいですよ』
吉野、黒田、俺のグループメッセージには『俺に兄ちゃんが出来ました』との書き込み。
それに加え、目を輝かせた吉野と、見たことのある男が満面の笑みでピースしているツーショットが送られてきた。
結局吉野の学費も男が持つことになったらしく、それでも尚利益が出るのかは甚だ疑問だが...、吉野は光悦にレシピを譲渡し契約書にサインをしたようだ。
「着いたよ、鏡夜」
「ん...」
新幹線に揺られること数時間。
ついに京都へ降り立つ。
前回の修学旅行の時に来て以来だが、相変わらず観光客が多い。
照り付ける太陽の中、取り敢えず腹も空いたし、何処かに入って昼食にしようと口を開いたその時。
「ねえねえ椿、どこ行くの?」
聞き慣れた声の方に視線を送れば、本来居るはずのない男の姿があった。
「......なんでお前が居るんだ、光悦」
「やあ、鏡夜。ご機嫌いかがかな、抱っこしていい?」
「あっ、おい...!オレの鏡夜にベタベタ触るな!」
「いいじゃん、先っちょだけ」
「何だ先っちょって。兎に角、ダメに決まってんだろ」
無理矢理俺の身体を抱こうとする光悦を制す黒田に苦笑を浮かべていると、どこからともなく冷えきった視線が送られてくるのを感じる。
?
嫌な予感がして、恐る恐る顔を動かしてみると
「...」
進までいるじゃねぇか...!
「頭...、宿のチェックインに間に合わなくなります」
しかも光悦の奴、ヘヴンのお陰で若頭から頭に昇格してやがる...!
「チェックインって、16時じゃなかった?そんなに急がなくても大丈夫だよ、シンくん」
「...早いに越したことはありませんので」
相変わらずクールな奴...。
俺のことめちゃくちゃ睨み付けてくるし、声小さいし声低いから何を喋ってんのか全く分からん...。
「シン...?ああ、どこかで見たことがあると思ったら君か、元気そうだね」
?...椿さんは進と顔見知り...なのか?
「っす...」
軽く会釈をした進は居心地悪そうに背を向けた。
「ごめんね、シンくんはああ見えて人見知りなんだ」
ああもこうも、人見知りな気しかしないが。
働き詰めで、月2、3日しかない休みがなかった光悦は、昇格してから1番に長期休みをとったようだ。
そして、わざわざ俺たちが下見に行く日とかぶせて仲良く楽しく旅行をするつもりだったらしい。
百歩譲ってそれはいいよ。
ただな
「お前...未だに光悦様に色目使ってるなんて、いい度胸してんなァ...?二度と朝日が拝めないように地中海に沈めんぞ...」
こんな状況下で楽しめるか...っ!
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