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しおりを挟む彼がシャワーを浴びている間、ソワソワして落ち着かなかった。
嗅ぎなれない匂いや、見慣れない景色に辺りを幾度となく見渡す。
何をしていいのか分からず、冷蔵庫を開けて飲み物を取り出そうとしたが、その中にはミネラルウォーターのペットボトルが数本と、ジュースが入っているだけだった。
確かに生活感が無いとはいえ、流石にこの冷蔵庫の中身は何なんだ...。
吉野は、一体何を食べて生活しているのだろう。
高校生の一人暮らし。
育ち盛りなのに、偏った食生活ばかりしているのではないかと心配になるが、どうやらドンピシャだったらしい。
ゴミ箱の中に突っ込まれたコンビニ弁当の容器に眉を顰めた。
「...身体壊すだろ...」
ソファーから立ち上がり勉強机に触れる。
碌な飯も食わず、ここで勉強をしているのだと思えば何だか無性に悲しくなる。
きっと吉野は、孤独を感じているのだ。
「先生の服、乾燥機にかけといたから」
「ああ、ありが...って、服を着ろ服を...!」
「下着は履いてますよ」
「そ...言う問題じゃない...」
早々にシャワーを浴び、クローゼットから部屋着を取り出す彼は、素早く着替えてソファーに座った。
「服、乾いたら帰る...」
頭にタオルを被せたまま、静かにスマホを弄る姿を見れば、体調も完全に治ったんじゃないかと思うのだが...。
「え?泊まっていきなよ」
「何故だ...!キスしてきた男の、しかも生徒の家に泊まるなんて言語道断」
ある程度の距離を保って隣に座り、膝を抱える。
つーか、マジでなんだよこの状況...。
「だって、俺の服着てる先生かわいいから帰したくないです」
「ふざけたことを言ってんじゃねぇ」
基本無表情なせいもあって、吉野がこう言うことを冗談で言ってるのか本気で言ってるのかも分からない。
「つーか、さっさと寝ろよ」
「でも、せっかく先生と一緒に居れるのに、寝たら勿体ないじゃないですか」
「だってとかでもとかいいから、ベッドに行け」
頭に乗っていたタオルを剥ぎ取り、吉野の身体を無理矢理移動させると、彼は渋々といった様子でベッドに潜り込んだ。
「寒かったらクーラーの温度上げるし、痛み止めが必要であれば持って来る。俺に出来ることがあれば遠慮なく言ってくれ」
「...先生」
「何だ」
ベッドに腰を掛けて振り向くと、彼の腕が腰に巻きついた。
「一緒に寝てください」
「.........あ゛?」
「遠慮なく言えって言ったのは先生ですよ」
こいつ...。
「本当は頭なんて痛くないんだろ」
「痛いです。雨の日は色んなことを思い出してしまって正直結構キツいんすけど...」
目を閉じる彼が、腰に顔を寄せながら小さく呟いた。
「先生が一緒に居てくれるの、正直テンション上がります」
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