秘めやかな色欲

おもち

文字の大きさ
上 下
207 / 312

207

しおりを挟む

いや、違う。
これはサワーじゃない。

俺の代わりに沢山お酒飲んでくれたのに、ここにきて自ら酒を飲むわけがないだろう...!

この俺ともあろう人間がそんな失態を、犯すはずない...!

黒田はあんなに沢山のお酒を飲んでいたのだ。
ここで俺が酒を飲んだら...全てが水の泡...!

「碓氷先生って...噂通りお酒弱いんですね」

「赤くなるの早...」

「弱くないし赤くない...」

氷が溶けてほぼ水みたいな味しかしなかったのに、ここまで赤くなれるのはむしろ才能だ。
幸いなことに意識は保てている。

頭がぼんやりして、ふわふわしてきてはいるが...

「碓氷先生、大丈夫ですか?」

「しーっ、もう寝かせちゃおうよ」

黒田が帰ってきた時に、酒を飲んだとバレないようにしなければならない。


「大丈夫、です。おれ、お酒つおいです...」

片手で頭を抑えながら、烏龍茶を飲む。
火照った身体に心地のいい水温は俺の脳をゆっくりと覚醒させた。


頭はふわふわしているが、呂律にさえ気を付ければきっとバレないで誤魔化せる。


「ごめんね、突然抜けちゃって」

戻ってきた黒田が隣に腰をかけ、女2人と俺に向かって爽やかな笑みを投げ掛けた。
彼女らは「「大丈夫です♡」」と口にしたかと思えば、まだ黒田に酒を勧めようとするでは無いか。

俺だけではなく黒田まで酔わせて持ち帰るつもりなのか。
もう彼のお腹は酒でたぷたぷだ、酒を勧めるのはやめてあげて欲しい。

「やめてくら...ください、黒田せんせ...もう、お酒飲まないの」

「ん?...そうだね。さっき立ちあがったらクラってきたから、少しだけ酔っちゃったのかも」

ふぅ、と息を吐きながら目を伏せる彼の色っぽさと言ったらもう、凄い。

「「「えっちだ...」」」

心の声がダダ漏れになってしまう女2人と声が被ってしまい、気が合うことの無い俺たちの間に謎の親近感さえ芽生える。

そして同時に気まずくなる。

「はは、3人してどうしたの」

あ、また笑った。

酒が入った黒田って、こんなに色気があって...艶っぽくて...、耳とか首がほんのり赤くて...美味しそうに見える。


周りの奴に見せたくないって気持ち、今なら少し分かるかも...。


「...碓氷先生、顔をよく見せてごらん」

「んむっ?」

突然頬をむに、と両手で抑えられ真正面から見つめられる。

えっ、なに!?
近い近いっ、大好きな黒田の顔がこんな近くに...!



「君...何だか顔が赤くないか?」

「!!...気のせいれす」

危ない、このままではバレる。

「心做しか滑舌も...」

「気のせいらってば...!」

あれ、何だか楽しくなってきたぞ。

さっきまでクソほどつまらなく感じていた飲み会も、酒が入れば陽気になる。

世界がふわふわして、すげぇ気持ちいい...。


怪しんでいる黒田の目の前で烏龍茶を一気に飲み干し両手でグラスを掴む俺は、違和感を感じて中を覗き込んだ。


「...碓氷先生、何やってるの?」

「きえた...」

「さっき飲んでただろ」

「ちがう...、きえたの...」

彼の身体にすりと身を寄せ、再度「きえた...」と上目遣いで見やれば、黒田は綺麗な顔を強ばらせて向かいの席に座る女2人を睨み付けた。

「どっち...?」

突然俺の肩を抱きながら冷たく、低い声を発した黒田の表情にきゅんきゅんする。

なんか怒ってる...、カッコイイ...♡

状況が分からず困った様子の女2人に、彼はさらに氷の様な冷たさで言い放った。

「この子にお酒飲ませたのはどちらかと聞いているんだが...?」

いつも穏やかな黒田のこんな一面を前にした彼女らは、流石に危機を感じたのか慌てたように声を荒らげる。

「私たち、飲ませてないです!」

「碓氷先生が勝手に飲んだんですよ...!」


何故俺が酒を飲んだとバレた??



しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...