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しおりを挟む「く、黒田先生...流石にそれ以上は...」
「まさか全部黒田先生が飲むなんて...」
テーブルの上に置かれた中身のないグラスの数々。
全てアルコール度数の高いお酒を俺に代わって飲んでくれた黒田の顔色は一切変わっていない。
「酒でお腹いっぱいになっちゃったな...」
「「ご、ごめんなさい...」」
お酒に強いとは言え、俺の代わりに飲んでくれた訳だし、水分だけで腹を満たさせてしまった罪悪感は大きい。
彼が残りの酒を煽ろうとしたため、思わずギュッと腕を掴んだ。
「先生、もう飲まなくていい...」
「ん...?」
俺の顔を覗き込む目は、少しだけ熱を帯びてとろん、としている。
わ~...やっぱりこんだけ飲めば強くても酔っ払うよな...。
つーか、可愛い~...身体も熱いし、何だかえっちしてる時みたい...
って、違う!そうじゃない...!
「お楽しみのところすみません、黒田先生をお借りしても良いでしょうか」
「あ、若王子先生~!」
「若王子先生もこっちで飲みませんか♡?」
「いえ、結構」
即答。
にこにこと胡散臭い笑顔を撒き散らしながらこちらの卓に足を運んだ若王子は、片手で煙草の箱を弄んでいる。
「オレも、そろそろ吸いたいと思ってたんだ」
「それは良かった。では、行きましょうか」
!?
まて、そうなると俺とこの女共は...っ
「少し待ってて、すぐに戻る」
小さく耳打ちをして煙草をスラックスのポケットにしまう黒田は、若王子と共に颯爽と外へ出てしまった。
「「「......」」」
3人の間には微妙な空気が流れている。
黒田がいないだけで、ここまで空気が悪くなるものか...。
気まずいが、こいつらに聞きたいこともなければ話したいことも無い。
どうしよ。
「あの...碓氷先生って、彼女とか居るんですか~?」
......頑張って質問を繰り出した女1。
俺のことにさして興味は無いだろうが、今では会話を繋ぎ止めることに必死なのだろう。
折角話題を持ち出してくれたのだ。
無視する筋合いもないし、彼女も出来たばかりだ...ここは正直に話そう。
「はい」
「「えっ...!?」」
は?なんだその反応。
めっちゃ意外です、みたいな顔やめろ。
「碓氷先生とお付き合いできるって強者...っ、じゃなくて...心が広...でもなくて...!」
喧嘩売ってんのか?
「ど、どんな人...!?」
「......素敵な人です」
まさかこいつに彼女が...、と言いた気な表情を浮かべられると、余計に落ち着かない。
恋人が出来たことに、自分自身が1番驚いているんだ。
「ど、どこで知り合ったんですか...!?」
「どちらから告白を...!?」
そんな興味津々で詰め寄られても...。
気まずさで窓の外に目を向けながら手探りでグラスを探し、そのまま口に烏龍茶を流し込んだ。
「「あ」」
「ん?...あれ、これって...」
「黒田先生が飲みかけだったサワー...ですね」
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