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しおりを挟む「はい、碓氷先生!どーぞ!!」
「沢山飲んでくださいね!」
ウィスキーボンボンで酔っ払う俺に、カクテルが飲めるのか?
でも折角頼んでくれたし、見た目もお酒って感じがしない。
むしろジュースみたいに見えるし。
中でもカルーアミルクは甘いお酒だと言っていた。
辛口じゃなくて、甘い酒ならワンチャン...俺が飲んでも酔わないかも。
丸いグラスで運ばれてきたカルーアミルクに手を伸ばした瞬間、男らしい手がひょいとそれを掴んだ。
「あっ、黒田先生...!?」
黒田はジュースのようなカクテルを一気に飲み干し、運ばれてきたばかりのスクリュードライバーにまで手をつける。
その姿を3人でポカンと見つめ、空になったグラスに視線を注いだ。
「く、黒田先生ったら...何か飲みたいなら私が頼んであげるのに~」
「ああ...ごめんね、凄く喉が乾いててさ」
も、もしかして俺の代わりに...飲んでくれたのか...!?!?
「黒田先生ってお酒強いんですね...♡」
「男らしくてカッコイイ~♡」
その点碓氷は...って視線送ってくんの止めろ、女1、女2。
黙って自分の手元にあった烏龍茶をちびちび飲むが、流石に他の卓でも沢山のアルコールが消費されていくと、ここ一帯の空気が重くなる。
それに、目の前の女がつけてる香水の香りがまたキツくて、右側の窓に手を伸ばし鍵を開けた。
換気したい。
このままではアルコールの匂いと香水の匂いが混じって、変な風に酔っ払ってしまいそうだ。
「んっ...、ん?固いな...」
窓が開かず、手こずっていると背後から彼の身体が覆い被さった。
「大丈夫?」
「わ...、!」
背中にあたる厚い胸板と、柔らかで心地のいい声、顔の横に通された太い腕から伸びる手が俺の指を優しく退けた。
「こう言うことはオレがするから...遠慮なく言ってね」
「んっ...」
耳に吐息あたる... 。
ふわりと漂う黒田の匂いに、微かに混じるアルコールの香りが胸をぎゅう、と締め付ける。
不思議と、この匂いは嫌いじゃない。
むしろ官能的で...ーーー。
「開いたよ。外の空気でも吸いに行く?」
「いや...大丈夫、です...」
「そう?無理しないでね」
「...」
こんなに身体を密着させられて、黒田の匂いが鼻腔を擽って、優しい声で囁かれたら抱かれている時のことを思い出してしまう。
飲み会も仕事のうちなのに、えろいことばかりが脳内を過ぎれば頭を軽く振った。
だめだめ、しっかりしろ。
一社会人として仕事とプライベートの区別はつけなければ...!
と、思ったのも束の間
「...かわい...」
彼女らに聞こえないような声で囁かれた言葉に、一瞬にして理性が崩れ落ちそうになる。
こんな意識させられたら、正直勃起しちまう...いい子だから鎮まってくれ...。
「な、なんだか...お2人って凄く仲良しですよね」
「黒田先生も、碓氷先生にだけ特別に優しいって言うか...」
怪しまれている!!
「ふふ...、碓氷先生はオレに比べたら細くてか弱いから、守ってあげたくなるんだ」
俺より細くてか弱い女の前で平然と口を開いた黒田には、流石の2人も引き攣った笑顔を浮かべた。
碓氷じゃなくて私を守れ、と言いたいのだろうが、残念だ。
「......そう言うなら、自分の身を犠牲にしてでも俺のこと守ってくださいね」
生涯この人に守ってもらえるのは、この俺だけ。
「勿論、我が身を犠牲にしても君を守ると約束するよ」
「「!?」」
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「店員さん!」
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