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しおりを挟む腰を抱く手をぺち、と叩き、運ばれてきた烏龍茶のグラスに手をつける。
「黒田先生って~、結構身体ガッシリしてますよね、何かされてるんですか?」
「ランニングと筋トレを少しね」
「そうなんだぁ、凄~い♡」
「学生時代も運動部?」
「うん、主に水泳部だったよ」
黒田と女2人の話を聞きながら、腕時計に視線を落とす。
今日は何時に終わるのかな...貸し切りだし、夜まで拘束されたら流石にしんどい。
早く家に帰ってきなことあずきに癒されたいな...。
「君たちは?」
「私女子バレー部!」
「私はテニスです」
「へぇ、いいね」
にこりと笑った黒田を前に、女2人は一瞬にして頬を染め両手で口元を覆う。
「今いいねって言ったんだけど!無理!超カッコイイ...」
「マジ王子じゃん...目の保養...」
聞こえてる聞こえてる。
目の中にハートを浮かべる彼女らは、彼に褒められてご満悦の様子。
ああ、ガチで帰りたい...。
「君は?」
「...何がです?」
「碓氷先生は学生時代何してたの?」
気を利かせてか、彼が俺に話を振ってくる。
別に無理して気を遣ってくれなくてもいいのに。
学生時代は、喧嘩、他校の制圧、喧嘩、喧嘩...
と、どうせ喧嘩しかしてないし、部活も入っていなかった。
なんの面白みもない。
「...帰宅部」
「え~、帰宅部ですか?勿体ないですよ~、つまんないし~」
「部活やっておけば良かったなって後悔とかしてません?男なら何かすべきだって思いますけど」
「別にしてませんが。全員で何かをするって言うの、嫌いなので」
「「...」」
空気クラッシャーこと碓氷鏡夜、今日も今日とて絶好調。
早く嫌な気分にさせてお開きにしたい。
「オレ、帰宅部の子が1番好き」
「「!?」」
「えっ...、なんで?」
敬語も忘れ、つい素が出てしまった。
「帰宅部の子って、大体可愛いから」
......なんだそれ。
「でも中学だと部活は強制だったんじゃないですか?流石になんかやってましたよね?」
帰宅部が好き、と言われただけで女1の当たりが強くなるのが辛い。
「中学の時は書道部と演劇部を兼任してました」
「兼任できるって凄いな。そう言えば、碓氷先生って字綺麗だよね。オレ、字が綺麗な子大好き」
「「!?」」
「あ...ありがと、ございます...」
黒田は帰宅部の人が好きなわけでも、字が綺麗な人が好きな訳でもない。
ただ単に隣で照れる最愛の男の反応を見ながら酒を飲みたいだけだったらしい。
「う、碓氷先生?お酒飲みません?」
「そうですよ、2杯連続で烏龍茶だし」
笑顔が引き攣っている女2人からの突然の提案は、俺にしこたま酒を飲ませて、寝かせてしまおうと言う魂胆が垣間見えている。
そんなことに気付かないはずも無く、しっかり断るべく口を開いた。
「あ、いや俺は...」
「甘いお酒なら飲めますよね?カルーアミルクとか甘くて美味しいですよ」
「スクリュードライバーなんかも飲みやすいから頼んじゃいますね!すみませ~ん!」
店員を呼ぶ2人に声を掛けようにもトントンと話が進んでいき、結局拒否することも出来ず...
「お待たせしました、カルーアミルクとスクリュードライバーです」
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