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しおりを挟む「少し沁みるかもだけど我慢してね」
彼女の質問をガン無視した彼は、手際よく消毒液を垂らしたコットンで傷口を抑えてから、そっと絆創膏を巻いてやる。
「...はい、終わり」
「ありがと~。ねぇ、準備で疲れちゃったから、もう少しここに居ちゃだめ?」
「駄目。皆が働いてる時に君だけサボるのはいけないよ」
「え~、いいじゃん。私1人居なくても、どうせ変わらないよ。私ももっと先生と一緒に居たいし、先生だって暇なんでしょ?だから」
カチャッ、と大きな音をたて、自分の存在を認識させる。
俺の目の前で彼女に近付こうとするあるまじき行為や、自分だけが楽をしようとする言動に腹が立ち、眉間にシワを刻みながら口を開いた。
「桜井、と言ったか...その口調と態度は、如何なものかな。自分が子供だと言うことを露呈している様に見受けられるのだが...恥ずかしくないのか?」
こちらに視線を送る女子生徒は、可愛らしい顔を強ばらせている。
「残念だが...きっと君の存在は、黒田先生の目にも敬語が使えない、ただただ態度だけがデカい生徒、としか写っていない」
「...」
「教師を友達だと勘違いしているのか知らないが、舐め腐った態度で接して、君のくだらない考えで保健室を休憩場とするのは...黒田先生だけじゃなく、今の時期のクラスメイトにも迷惑をかけると言うことを理解出来るようになった方がいい」
脚を組みながら、眼鏡を中指で押し上げる。
「分かったなら、早く教室に戻りなさい」
保健室に流れる重たい空気には、流石の女子生徒も頭を下げた。
「すみません...」
まあ...、空気を重くしたのは俺なのだけれど。
「こちらの言い方もキツくてすまない。今後、言動には気を付けるように」
黒田の前で叱られて、顔を赤くした女子生徒はもう一度謝罪をしてから保健室を後にした。
入室表に退室時間を記入した黒田は、戸締りを行い部屋中のカーテンを閉める。
薄暗くなった室内で白衣を脱げば、黒い半袖Tシャツから伸びた男らしい腕が露になった。
「...」
「君は本当に堪らないな...」
「あ...?」
ティーカップをシンクに置き、水洗いをする俺の身体に手を伸ばした黒田は、胸元に引き寄せてから優しく頭を撫でた。
「冷徹で、突き放すような言い方をする割には、他の生徒のことを考える思いやりがあって...。嫉妬してるところも可愛い」
「......嫉妬じゃねぇ...、女を武器にする様なアピールの仕方が癪に障るんだよ...」
「ふふ...」
彼の心臓の音が、自分の背中から伝わってくる。
息遣いも、体温も全てが俺をおかしくさせるのに
「話がかなり脱線したね、さっきの続きだけど...」
「...」
特にこの人の匂いは
「鏡夜は、なんでオレのこと知りたいって思うの...?」
記憶に根深く刻み込まれるような、甘美な匂いは
「...、...」
「教えて...?」
頭を痺れさせて、どうしようもなく愛しい気持ちにさせる。
「...うっせぇな...すき、だからに決まってんだろ...」
火照る身体に指を滑らせ、目を細めて笑った黒田は俺の項に口付けた。
「もう仕事終わってる...?」
「...」
小さく頷いた俺の耳や首は赤く染まっている。
そんな姿を見られているのだと思えば、恥ずかしくて振り向くことさえ出来ない。
「良かった...」
背後から囁かれた声にゾクゾクしながら、自分の拳をギュッと握る。
少しでも油断すれば、匂いや声に魅せられて身体が反応してしまいそうだ...。
「今すぐにでも君の身体に痕を残したい...」
熱を含んだ声で囁きながら、彼の自身が双丘に押し当てられれば、ヒュッ、と小さく喉が鳴った。
「オレのことも教えてあげる。だから、もう帰ろうね...?」
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