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しおりを挟む「違うよ...」
「...なんだ、申し開きか?」
「オレ、困るくらいモテるし...」
自分で認めてる辺り、ムカつく。
「頼りない男を演じれば、恋愛対象から外れるかなって思って」
......いやいやいや、こいつはモテるくせに何も分かっていない。
どの女にも母性本能と言う機能が備わっている。
確かに、容姿も仕事もプライベートも完璧な黒田を前にしてしまえば、女性教員は今以上に必死に、醜く争いながらも彼を我が物にしようとするだろう。
しかし、だ。
『黒田先生って、少し抜けてるところが可愛いんだよね~』
『一人暮らしって言ってたけど、あんな調子でお家のこと出来るのかしら...料理とか出来なそう...守りたい』
『私も~♡お世話してあげた~い♡』
『完璧過ぎると逆に引いちゃうもんね~♡』
って...、女性教員が口を揃えて言っていたのを通りすがりに小耳に挟んでいる。
言わば彼の努力は無駄であり、逆効果だった。
「駄目だ」
「え?」
「あいつらは母性本能が溢れて、あんたのことを余計にお世話したい♡甘やかしたい♡ってなってんだから、可愛こぶるのはやめた方がいい」
「......だから可愛こぶってる訳じゃないんだよ。それに、普段通りになんでもソツなくこなしたら、もっとモテてしまう...」
「罪な男」
紅茶を飲んだ後に天井を見つめる黒田は、長い指を交互に絡めて腹の上に置いた。
...黒田に恋人がいるって分かれば、女性教員はすんなり諦めてくれるだろうか。
「あ、そうだ。またオレの身体にキスマークでもつける...?」
Tシャツの中に指を滑らせた彼が、俺の顔を見てニヤリと笑う。
「女性避けになるんじゃないかな」
滑らかな肌を覆う筋肉がチラリと覗き、思わず生唾を飲んだが、咄嗟に頭を横に振った。
「...ぅ、...家に、帰ったら...な...」
ここはあくまで職場で、淫らな行為は許されない。
「OK、オレも鏡夜の身体に痕つけていい...?」
俺の身体に痕をつけると言うことは、彼もまた男避けを目的としている。
「.........ん」
分かっていて頷くことに羞恥を覚えつつ、覚束無い指先で白衣の裾をそっと摘んだ。
クーラーのきいた室内に暫しの沈黙が流れる。
外や校舎ではしゃぐ生徒の声に耳を傾けながら、グラウンドを発光させる太陽が早く沈んでくれることを静かに願った。
やはり、明るいうちはどうしても恥ずかしい。
そう思う反面、彼の綺麗な表情がよく見えることから、夜になるのも惜しいと感じてしまう。
ジレンマーーーーー。
長い睫毛の影をつくりながら、赤みがかった彼の瞳が揺れる。
...本当に綺麗な顔。
確かに少しばかり駄目な男だったとしても、この容姿を持ち合わせてさえいれば、何でも許されてしまうんだろうな...って
「......あれ」
「ん?」
「先生...これってピアスの穴...?」
今までよく見ていなかったが、彼の耳朶には小さなピアス痕があった。
耳朶をむに、と掴めば黒田は苦笑を零す。
「えっ、そうだけど...かなり今更だね」
数ヶ月一緒にいて、何回も身体を重ねて、キスもして、お互いに愛だって伝えあっているのに。
「若気の至りってやつ...」
彼にピアスが開いていることを知らず、こんな目につく部分ですら見落としていただなんて...なんだか無性に悔しかった。
「いつ開けたの?」
「大学生の頃かな、友達と飲んだ後にふざけて購入したピアッサーでお互いに開け合ったんだよ」
友達?
その友達が
この身体に、ほぼほぼ一生残る痕を
つけた。
「そうなんだ...」
知りたいけど、自分の知らない時代の黒田のことを考えれば、どうしようもなく複雑な気持ちになる。
ヤケになって自ら黒田に強く抱き着き、胸板に頬を押し付けた。
「もっと...、もっと前から出会ってたら...俺がその友達の代わりに消えない痕をつけれたのかな...」
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