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しおりを挟む「話してくれてありがとう。菫さんにとって辛い過去だったろうが、お兄さんのことを知れて嬉しかった。俺は黒田先生をちゃんと大切に思っているから...安心して欲しい」
「......ま、近くにいる以上監視はさせて貰うわよ...」
ストローを咥えながら呆れた様に目を逸らす彼女は、スマホを弄り出した。
...取っ付きにくい。
どんな話をしてもニコニコ聞いてくれる黒田とは正反対で、何を話しても無視されそうなんだが...
とは言え、これから長い付き合いになるだろうし、ある程度相手のことを知っておいたほうが良いことは確かだ。
「なにジロジロ見てんのよ」
「菫さんって、何の仕事してるのかなって...」
「はぁ...?貴方、私のことを知らないの!?呆れた、世間知らずね」
「え?有名人?」
「ふふ」
得意気にスマホの画面を俺に向けた菫は、白い歯を出して笑った。
そこに写るのは、容姿端麗な1人の男性。
「......え?なに?恋人?」
「私よ、わたし!主に海外で活動している舞台女優なの、まあ...女優と言ってもほぼ男役だけど...」
!?!?
この美女とスマホに写る美男を交互に見比べては、手で口を覆った。
SSR男子と菫が同一人物だと...?
そんな馬鹿な話があるわけない。
「サイン下さい」
「っ、べ...別に椿に免じてしてあげてもいいけど。あ、この時の私を見て?カッコイイでしょ」
「まじか...これも?菫さんって凄いんだな...、ほんとかっこいい...」
本来の男性では出すことが出来ない妖艶なオーラに女性ならではの骨格。
しかしながら、女性とは思えない程のイケメン具合に頭が混乱しそうだった。
「舞台で活躍する菫さんを見てみたい...、きっと素敵なんだろうね」
「...Blu-rayあるけど、いります?」
「えっ...欲しい、見たら感想伝える」
「OK、後で送るわ」
「「..........」」
あれ?この人、案外いい人なんじゃね?
とお互いが思っていることは口に出さず、カフェで数時間喋り通した。
「鏡夜さん、ちょっと待って?ここのメーカー、新しいボディークリームが出てる」
15時
午前中に帰るつもりが、ショッピングモールまで車を走らされ菫の買い物に付き合わされる。
まだ食材も買っていない。
「あ、ほんとだ。これのホワイトムスク使ってる」
愛用のボディークリームと同じメーカーから新作が発表されたらしい。
彼女があけたボトルから甘夏の香りがふわりと漂う。
「まあ!鏡夜さんって美意識が高いのね。ホワイトムスクは私も大好きで愛用していたのに、買えないまま生産が終了してしまったの...、私は柑橘系より甘い匂いが好きだから今回のもハズレね...」
肩を落としながら手にしたボディークリームを棚に戻す菫は、小さな声で「ホワイトムスク...」と呟いている。
「実はこの前、店頭で奇跡的な出会いをしてホワイトムスクのボディークリームを10個も買ってしまった。よくよく考えてみれば1人で使い切ることは出来そうにないから、迷惑じゃ無ければ菫さんに5個程渡してもいいかな」
「えっ...うそ、だいすき...」
「......あ、あの...」
ペタペタと俺の身体を触る菫は、目を輝かせた。
「ずっと思ってたんだけど、凄く肌が綺麗よね...?スキンケア何使ってるの...?ノーメイクなのにお肌つるっつるだし...、デコルテラインが美しい...」
ペタペタ
ペタペタ ペタペタ
「......菫さん?」
「貴方が使ってる商品全部教えて」
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