秘めやかな色欲

おもち

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黒田との関係が若王子にバレてしまっている以上、姫神に伝わるのも時間の問題だろう。
姫神にはこう言う下着を穿いておりネコ同士であることを自らカミングアウトした訳だが...うん、悪くない。

寧ろ、自分のことを話せて嬉しいと言う感情さえ持ち合わせている...。

ひたすらに自分を隠していた人生だった。

親にも友達にも言えない。
一夜を共にする男には最低限のことしか語らず、俺という人間かどう言う人物なのかも、ただひたすらに隠し通した。

しかし、黒田に「碓氷 鏡夜」という人物を暴かれたあの日、少しだけ肩の荷が降りていたのは確かだった。

それは今まで、身の回りの、自分のことを知っている人物に「碓氷 鏡夜」を見せてはならないと思い込み、たった1人で抱え込んでいたからだ。

親友に恋をした。

恋愛対象が男だった。

周りの人間と、自分は少し違っていた。

心が女である訳では無く、自分が男であることに誇りすら持っている。

それなのに、女性を羨む気持ちは人一倍強くて、自分が女性じゃないことに何度も幻滅した。


1人で考えごとをする夜は長くて、自分の容姿や身体を隠せないから朝は嫌いだった。


悲しい時に優しい言葉や励ましの言葉をかけてくれる人物も、悩んだ時に相談できる相手もいなかったからこそ

誰かに見てもらいたかったんだ。
変態だと罵られて、ありのままの自分がそこに存在していることを、証明してもらいたかった。

そうじゃないと、自分は本当に存在しているのかすら分からなくなってしまいそうで。


「嬉しいな...、少し驚いたけど碓氷くんともっと仲良くなれそうだからね。今度食事でも行こうよ」

「......ええ、もちろん」

否定ではない、肯定に思わず口元が綻ぶ。

気持ち悪いって言われたらどうしようかと思ったけど、案外大丈夫そうだった。

向こうも何だか嬉しそうだし...。

「もう18時だし、そろそろ帰ろうか」

「はい」

姫神と職員トイレを後にして、荷物をまとめれば、彼は俺の後をひょこひょこ着いてくる。

一緒に帰りたいのだろうか。

「彼氏、いるの?」

小さな声で問い掛けた姫神を見下ろしながら頭を横に振る。

「いえ...まだ。好きな人はいますが」

「そうなんだ!君に告白されて断る人なんていないよ。ちゃんと名前を呼んで告白してみたら?」

名前...。

「姫神先生は、相手のことなんて呼んでるんですか?」

「えっ、と...亮くんと、なおくん...」

...やっぱり3Pだ。
しかもくん付けだと?あざとすぎるぞ、この35歳。

光悦も言っていたが、名前呼んであげるのはそんなに大事なことなのか?

「名前って、呼ばれると嬉しいものですかね」

「多分嬉しいんだと思うよ。名前呼んだ時の喜びようが凄かったから」

「なるほど...」

椿...?
セックスの時呼び捨てにしたとは言え、一応歳上だしな...。

椿くん...?
俺がくん付けしても可愛くねぇか。

椿さん...とか?
少しよそよそしい気もするけど...。

「...なんて呼べばいいか、分かりません。付き合うって...、どういうことかもよく分かってない...ので...」

「うっっっ、君は私の父性をくすぐる...っ!」


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