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しおりを挟む金曜日
「ここの答えって分数になります?」
「ああ」
「先生、古典って得意ですか?俺、石井先生が可愛すぎて授業集中出来ないんすよ」
「...」
週初め以降、彼らは放課後、俺の元へ勉強を教えて欲しいと頼み込んできた。
3人が目を輝かせる中、吉野だけは1歩後ろで呆れたように頭を搔く。
最初は図書室で教えていたが、人数が人数なだけあって声のボリュームを抑えることも難しい。
迷惑がかかることを考えて、生徒指導室を取ってからの彼らは、カラオケやボーリングのような遊びよりも楽しそうにしていると吉野が言っていた。
教師冥利に尽きるが
「てか、先生って彼女いるんですか?」
「もう1回だけ眼鏡外したところが見たいっす」
「先生暑そう、ワイシャツの袖捲った方がいいですよ!」
こいつら...!!!!
「雑談しに来てんのか?...帰る」
「「「すみません」」」
クーラーのない室内に男5人が密集すれば、当たり前だが暑い。
開け放たれた窓から蝉の声が聞こえる。
涼しくもない温風が部屋に流れ込む中、窓際で脚を組みながら本を読む教師に吉野以外の生徒は見惚れていた。
少し前までは怖くて冷たい、人間味のない先生だと思っていたのに、夏祭りでは浴衣を着て眼鏡を外し、ねこのキーホルダーを大切そうに持っていたのだ。
彼らの中で怖い先生と言う印象は180度変わった。
細身のネイビーのスラックスに眩しいくらい真っ白なワイシャツ。
ストライプ柄のネクタイを上まできっちりと締めており、露出されているところは顔と手ぐらいしかないのに
何故こうも男の教師がえっちに見えるんだ...、と3人は頭を抱える。
「あれ、碓氷先生何してんの」
「ひにゃっ...!?」
「「「「ひにゃっ?」」」」
突然網戸越しに声を掛けてきたのは神崎だった。
あまりにも驚き過ぎて椅子から飛び上がる。
「っ、突然後ろから声をかけるな!」
「あ...もしかして補習?可哀想に、こんなあちー部屋に閉じ込められて、碓氷先生と一緒にお勉強なんてさ...お疲れ」
淡々と話す神崎を睨み、網戸を開け放った。
「貴様...またそんなだらしない格好をして...開けすぎだ。胸が見えるぞ...」
第3ボタンまで開けられているのを渋々直しながら「校則では、夏場のボタンは第2ボタンまで外していいことになってんだよ」とぶっきらぼうに伝える。
「...碓氷先生はなんでクールビズじゃないわけ?」
「あ?」
「姫神先生だって若王子だって、ノーネクタイだし第1ボタン外して仕事してるよ」
「若王子先生って言え」
なんでクールビズじゃないかって?
身体の至る所にキスマークやら噛み痕やらが残ってるからだよ...!
教員のクールビズ(男)は、半袖ワイシャツ、ポロシャツが認められておりノーネクタイ、ボタンも開けていいことになっている。
しかしながら、腋、二の腕にキスマークがあるから半袖のワイシャツをはじめポロシャツも着れない。
首に関しては言うまでもないだろう。
俺は、黒田の独占欲を甘く見ていたようだ。
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