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しおりを挟む「っ...、性格悪...」
声を出して笑う光悦が「よく言われる」と声を零した。
すり、と太ももを撫でる光悦の手に反応して自分の肌がぞわりと粟立つ。
「ぁ...ちょっと...」
「他人の愛人を寝取るのは得意だけど、流石に親友の好きな子をかっ攫うのはよくないよね。だから、僕が鏡夜専用の舐め犬になるってのはどう...?」
「舐め、犬って...」
「鏡夜に服従を誓う、強くてハンサムな犬、欲しくない...?」
っ......欲しい!!!!!!!
いや、いやいやいやダメだダメだ。
黒田の他にもう1人の男を相手するなんて絶対に無理。
ただでさえ黒田は野獣なのに。
「い...いらない」
これが光悦のような顔や身体を持ち合わせてさえいなければ、スッパリと断れたものを...
「僕、女王様の言うことなら何でも聞いちゃう」
こんな顔して、こんなにいい身体してると断わり辛いじゃないか...!!
「ゃ...でも俺には、その...先生がいるし...」
「付き合ってるの?」
「それは、まだ...だけど」
「そうだよね?まだ君は椿の名前すら呼んでない。恋人なら他人行儀な呼び方なんてしないし、好きだと伝えてあげなきゃいけない...」
グサッ、グサッと容赦ない発言が胸に突き刺さる。
勉強中だとは言え、いざ相手の名前を呼ぼうとすれば緊張するし、想いを伝えることに勇気もいる。
恋愛初心者なのだから、そんな簡単に出来ることではない。
「あいつはああ見えて昔色々あったから、ちゃんと伝えてあげないと...さ」
?
「色々って...?」
「まあ、恋愛においての色々、だよ。だからもし君が椿に告白出来ないでダラダラと月日が流れて行くのであれば、僕は痺れを切らして君のことを寝取ってしまうから...その時は覚悟してね」
彼の真剣な瞳にドクン、と胸が脈打つ。
そうは言うものの、光悦はそんなことをする気なんて更々ないのだろう。
俺がいつまで経ってもこんな状態だから、背中を押してくれているのだ。
俺のためにも、黒田のためにも。
垣間見える友情の深さに、響のことを思い出しては拳を強く握り込んだ。
「ん...努力、する」
「いい子。にしても、この猫のぬいぐるみ...この前見せてくれたのと色違い?」
ソファーの横で項垂れる黒猫のぬいぐるみに手を伸ばした光悦に、よくぞ聞いてくれた!と目を輝かせる。
小走りで寝室のベッドにいる初代茶トラの猫を抱えては、早々にリビングへ戻り、彼の隣に座り直した。
「見てくれ、茶トラと黒猫だ...!」
「うん、そうだね」
「黒田先生が取ってくれた!いつでも抱っこ出来るようにリビングと寝室に置いているんだ...!そしてこれを見てくれ」
昨日取ってもらったハチワレ猫のぬいぐるみキーホルダーを並べる。
「......昨日見たやつだね」
「かわい過ぎないか...?小さいのによく出来ている...この顔とお腹...かわいい...」
「みんな顔がブサイクなんだけど」
「これが可愛いんだろうが!!」
うーん、と悩む光悦が黒猫の顔面と俺の顔面を交互に見比べた。
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「俺はこんなに不細工じゃない!」
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