138 / 312
138
しおりを挟む「やだ、僕も一緒にご飯食べる。椿と鏡夜と一緒に寝る」
「きなちゃん、あずちゃんご飯だよ」
「「ニャー」」
完全無視。
キャットフードが皿へ滑り落ちる音を聞いたきなことあずきが元気よく駆け出し、黒田の足に擦り寄る。
行儀よく座り、もりもりご飯を食べる姿は何とも愛らしい。
バックハグして後頭部に顔を埋めたい。
「椿...昔はあんなに僕のことを大事にしてくれたのに...、酷いよ...。僕はこんなに椿のこと愛しているのに」
白々しい泣き真似に、黒田は大きなため息を吐いた。
「......オレはいち早く食事を済ませてランニングに行きたいんだ。光悦の分を作る時間が勿体ない」
「筋肉痛なのによくやるわ...」
ランニング...。
そう言えば...毎週日曜日の午前中はランニングに行っていたが、今日はまだだったな。
「黒田先生、俺が夕飯を作るから走ってきていいぞ」
「え?...うーん」
俺の身体を心配しているのだろう。
困ったように眉を下げる彼の背中を玄関に向かって押す。
「気にするな、1時間くらいだろ?...夕食食べてから走りに行くとなると、夜も遅いし...」
背中を押していた手で彼のシャツをキュッと掴み、小さな声で口にした。
「.....しんぱい、になる...から...」
「うわ...かわいい...。でも光悦と2人きりにさせるのは...いや、ランニングも...でも光悦...」
「俺なら問題ない」
「ほんと...?...心配...、今日だけお休みしようかな...」
「あー、もう。いいから、さっさと行ってこい!」
内蔵が飛び出るんじゃないかと思う程に強く俺を抱き締め、額に口付けを落とした黒田はランニングウェアに着替えて渋々家を出る。
よし...、黒田が帰宅するまでの1時間で美味しいもの作るぞ。
「光悦、何か食べたいものはないか?肉料理で」
「え、僕の分も作ってくれるの♡?僕ハンバーグがいいな♡」
ハンバーグか...、うん...材料は全部揃ってるし、多めにタネを作っておけば明日のお弁当にも入れられる。
「わかった」
黒田が取り出した材料を全部しまい、新たに取り出した材料を見て光悦はキッチンまで足を運んだ。
「ん~、鏡夜大好き♡ところで、なんで肉料理?」
背後から俺を抱き締める光悦を肘で押し返す。
「...別に。黒田先生が肉好きだから...」
「へぇ...」
キッチンに来たついでに手伝って貰おうと思い、玉ねぎをみじん切りにして欲しいと伝えた。
が、何やら様子がおかしい。
まるで初めて包丁を握る様ではないか。
「光悦、その持ち方だと指を...」
サクッ
「あっ、玉ねぎじゃなくて僕の指が切れた」
てめぇ言ったそばから過ちを犯してんじゃねぇぞ。
彼の腕を掴み、リビングのソファーに座らせれば出血しているところに絆創膏を貼ってやった。
大きな身体を見上げ、大人しい彼に向かって笑みを零す。
「もう...馬鹿だな...、あんな持ち方したら危ないだろ。普段料理は?」
「ほとんどしたことない。部下が作ってくれてるから」
なるほど...、今はイクメンがモテる時代なのに、これではまともに洗濯すらしたこと無さそうだ。
こいつはこの先、色々と苦労しそうだな...。
「じゃあ座って待ってろ。直ぐに作る」
「近くで見ててもいい?」
「?まあ、別にいいけど」
11
お気に入りに追加
853
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる