秘めやかな色欲

おもち

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「やだ、僕も一緒にご飯食べる。椿と鏡夜と一緒に寝る」

「きなちゃん、あずちゃんご飯だよ」

「「ニャー」」

完全無視。

キャットフードが皿へ滑り落ちる音を聞いたきなことあずきが元気よく駆け出し、黒田の足に擦り寄る。

行儀よく座り、もりもりご飯を食べる姿は何とも愛らしい。

バックハグして後頭部に顔を埋めたい。

「椿...昔はあんなに僕のことを大事にしてくれたのに...、酷いよ...。僕はこんなに椿のこと愛しているのに」

白々しい泣き真似に、黒田は大きなため息を吐いた。

「......オレはいち早く食事を済ませてランニングに行きたいんだ。光悦の分を作る時間が勿体ない」

「筋肉痛なのによくやるわ...」

ランニング...。
そう言えば...毎週日曜日の午前中はランニングに行っていたが、今日はまだだったな。

「黒田先生、俺が夕飯を作るから走ってきていいぞ」

「え?...うーん」

俺の身体を心配しているのだろう。
困ったように眉を下げる彼の背中を玄関に向かって押す。


「気にするな、1時間くらいだろ?...夕食食べてから走りに行くとなると、夜も遅いし...」

背中を押していた手で彼のシャツをキュッと掴み、小さな声で口にした。

「.....しんぱい、になる...から...」

「うわ...かわいい...。でも光悦と2人きりにさせるのは...いや、ランニングも...でも光悦...」

「俺なら問題ない」

「ほんと...?...心配...、今日だけお休みしようかな...」

「あー、もう。いいから、さっさと行ってこい!」

内蔵が飛び出るんじゃないかと思う程に強く俺を抱き締め、額に口付けを落とした黒田はランニングウェアに着替えて渋々家を出る。

よし...、黒田が帰宅するまでの1時間で美味しいもの作るぞ。

「光悦、何か食べたいものはないか?肉料理で」

「え、僕の分も作ってくれるの♡?僕ハンバーグがいいな♡」

ハンバーグか...、うん...材料は全部揃ってるし、多めにタネを作っておけば明日のお弁当にも入れられる。

「わかった」

黒田が取り出した材料を全部しまい、新たに取り出した材料を見て光悦はキッチンまで足を運んだ。

「ん~、鏡夜大好き♡ところで、なんで肉料理?」

背後から俺を抱き締める光悦を肘で押し返す。

「...別に。黒田先生が肉好きだから...」

「へぇ...」

キッチンに来たついでに手伝って貰おうと思い、玉ねぎをみじん切りにして欲しいと伝えた。

が、何やら様子がおかしい。

まるで初めて包丁を握る様ではないか。

「光悦、その持ち方だと指を...」

サクッ

「あっ、玉ねぎじゃなくて僕の指が切れた」

てめぇ言ったそばから過ちを犯してんじゃねぇぞ。

彼の腕を掴み、リビングのソファーに座らせれば出血しているところに絆創膏を貼ってやった。

大きな身体を見上げ、大人しい彼に向かって笑みを零す。

「もう...馬鹿だな...、あんな持ち方したら危ないだろ。普段料理は?」

「ほとんどしたことない。部下が作ってくれてるから」

なるほど...、今はイクメンがモテる時代なのに、これではまともに洗濯すらしたこと無さそうだ。

こいつはこの先、色々と苦労しそうだな...。

「じゃあ座って待ってろ。直ぐに作る」

「近くで見ててもいい?」

「?まあ、別にいいけど」


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